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新会社法情報
     新会社法とは?
     新会社法Q&A
    
   
                          ※が付いたQ&Aは、2006年5月以降ご活用できません。  
  【有限会社】  
  有限会社の廃止でどうすればいいの?  
  有限会社にするメリットは?  
  有限から株式への移行手続き  
  有限会社→株式会社への変更で注意すべきことは?  
  有限から株式に移行する際の意外な注意点  
  有限会社の登記はどうなる!?  
  新会社法スタート前に有限会社をつくるメリットは?  
  【取締役・監査役】  
  取締役は1人でもいいって本当?  
  取締役や監査役はどうなるの?  
  取締役を減らすと節税にもなる?  
  自己破産しても会社の取締役になれますか?  
  古い会社が陥りやすい監査役の問題  
  1人取締役の会社にするには、いくらかかる?  
  【会計参与】  
  会計参与のメリットは?  
  会計参与への報酬は?  
  会計参与に報酬を払いたいのですが  
  会計参与が融資審査に与える影響は?  
  【設立  
  1人で会社を作れるか?  
  1円会社はどうなる?  
  安く会社を作れるか?  
  会社設立はどう簡単に?  
  新会社法で不要になる手続き  
  「類似商号の調査」は、全く必要ないですか?  
  安く簡単にできる起業なら、どの会社?  
  株式会社をつくるメリットは?  
  会社設立時の消費税は?  
  5月1日に株式会社を設立したいのですが…?  
  定款認証を電子定款で行うと4万円オトクになる?  
  定款認証を電子定款で行うと4万円オトクになる? 完結編  
  電子定款の作成は、自分でもできる?  
  【株式】  
  株式は売ってはいけないのですか?  
  相続で株式が移るのを防ぐ方法  
  黄金株ってなに?  
  種類株式とは何者?  
  【会社の基礎知識】  
  定款は変更してもいいですか?  
  定款の提出を求められましたが…  
  議決権を与えたくない!  
  株式会社の登記はどうなる!?  
  議事録の記載事項が変わった?  
  内部統制・日本版SOX法と中小企業の関係  
  利益処分案廃止で、総会議事録は? NEW!  
  【お金・会計】  
  資本金を減らすとお金が増える?  
  配当をあげたくない!  
  配当がいつでもできる!?  
  利益処分案がなくなる!?  
  1円会社で資金調達はできるか?  
  節税目的の会社設立に待ったがかかる!  
  「役員給与」の税制改正、対応策はありませんか?  
  3月決算の会社が作る決算書は?  
  オーナー会社課税を回避する方法は?  
  会計も変わると聞いたのですが…?  
  配当金を支払う場合には?  
  役員給与の増額に伴う一括支給について  
  匿名組合を利用して得た利益の分配の税金は?  
  新会社法とメインバンク制の崩壊……?  
  決算月を決めるポイントは?  
  決算公告の電子化とは?  
  保険で利益の調整をしてもいい? NEW!  
  資金調達を考えると、資本金はいくらがいい? NEW!  
  持っている株が吸収合併で消滅するので… NEW!  
  「三角合併」で税務上のメリットは? NEW!  
  取締役会のない会社の役員報酬の決め方 NEW!  
  【合同会社  
  合資会社をLLCに変更したいのですが?  
  合同会社の設立は本当に6万円?  
  合資会社を合同会社に変える場合の手続は?  
  企業連携に合同会社・・・そのワケは?  
  合同会社の定款に4万円は、いる?いらない?  
  【LLP】  
  LLPってなんですか?  
  LLPはどうやってつくるんですか?  
  LLPで「投資ファンド」は作れますか?  
  LLPとLLCはいったい何が違うんですか?  
  LLPの損失は、どこまでが必要経費?  
  LLPで利益が出る時、気をつけることは?  
  LLPで資金調達はできる?(政府系金融編)  
  LLPで資金調達はできる?(民間金融編)  
  LLPの決算日はいつがいい?  
LLPが税務署に対して行う手続きは?
LLPのお金は貯めておける?
     
  有限会社の廃止でどうすればいいの?  
       
  A 有限会社を経営しています。
「有限会社廃止へ」という記事を読みました。
私の会社はどうなるのでしょう? 
 
 
 
  A 「新会社法」施行前に設立されている有限会社は、有限会社という言葉を商号につかうことが認められます。
そのため、そのまま有限会社として存続するか、それとも株式会社へ移行するのか、のどちらかを選択することになります。

【解説】
<1.1年半後に株式会社へ組織変更>
  株式会社の「最低資本金制度(1000万円)」も撤廃される予定ですので、資本金
  300万円のままで株式会社へ移行することも可能になります。
  ただし、「取締役(監査役)の任期がない」という有限会社の特典は失われるので、
  取締役は任期が来れば、改選→登記手続が必要になります※。

  ※新会社法では、定款で最長10年と定められます。
  ※登記手続には最低1万円の費用がかかります。

<2.有限会社の存続も認められる>
  有限会社を株式会社にするといっても、商号の変更になるので名刺や看板などを
  作り直すコストが発生します。
  取締役等の任期がない、といった有限会社に認められている特典を失いたくなけ
  れば、有限会社でありつづけるのも選択の一つです。
  新会社法スタート後は、「有限会社」の設立は不可能となるので、案外、希少価値
  になったりするかもしれませんね。

【結論】
有限会社のままでもいいですが、株式会社にするつもりでしたら、
しばらく待って「新会社法」スタート後のほうが楽です。

 
      ▲(このページの先頭へ)  
  有限会社にするメリットは?   
       
  A 会社を設立したいのですが、有限会社だと消費税が免除されると聞きました。
こういうメリットがあるならば有限会社にしたいと思っていますが、いかがでしょうか?
 
 
 
  A もちろん新会社法のスタートまでは有限会社を設立できます。
そして「既存の有限会社」は新会社法スタート後も存続は認められます。
「既存の有限会社」の設立メリットは、最低資本金が300万円、
取締役は1人でもよく監査役は不要、役員の任期がない、設立費用が安い
(後で詳しく説明)ことがあげられます。
消費税の免除については、有限会社だから免除というわけではなく、
設立後1年目、2年目の会社については、
期首の資本金の額が1,000万円以上かどうかにより決まります。
有限か株式か、というのはまったく関係ありません。


【解説】
1 資本金や役員 改正後はどうなる?
  (改正後の株式会社は「株式譲渡制限」のある会社とします)

  (1)最低必要な資本金 
  <現 在>
    株式会社→1,000万円(特例株式会社は1円)
    有限会社→300万円
  <改正後>
    株式会社・「既存の有限会社」
    →最低必要な資本金という考え方自体がなくなります。

  (2)最低必要な役員の数
  <現 在>
    株式会社→取締役3名、監査役1名
    有限会社→取締役1名
  <改正後>
    株式会社・「既存の有限会社」→取締役1名

  (3)役員の任期の制限
    <現 在>
    株式会社→取締役2年、監査役4年
    有限会社→任期なし
  <改正後>
    株式会社→取締役2年、監査役4年
    ※ ただし、一定のとりきめにより取締役、監査役ともに最長10年まで
      のばすことも可能
    「既存の有限会社」→任期なし
    ※ つまり、登記変更の費用(最低1万円)がかかりません

2 有限会社のメリットは?
  資本金1円の株式会社ができるようになって、資本金の額で有限会社を選択する
  というケースは少なくなり、選択の理由は「設立費用が安い」(登録免許税は株式
  会社最低15万円、有限会社最低6万円)「取締役1人でも可能」「任期がない」
  というところにあります。

  特に「役員の任期なし」という特典は、新会社法施行前に設立した有限会社に限
  られます。

3 消費税が免税されるのは?
  会社が消費税の納付が必要かどうかは、原則、2年前(前々期)の消費税に
  かかわる売上高が1,000万円を超えるかどうかによって決まります。
  ただし、設立1年目、2年目の会社は、当然2年前の売上高自体がありません
  ので、特別に、「期首の資本金の額が1,000万円以上かどうか」で、消費税の
  「免除か納付か」が決まります。

  ですから、有限会社を設立しても、1年目、2年目の消費税の納付は、資本金
  300万円の有限会社は免除されますが、資本金1,000万円の有限会社は免除
  されずに納付が必要になります。

【結論】
設立費用や役員改選の登記費用などの経費(10万円ほど)が安くすむことを重視するなら、いまからでも有限会社を作ることはアリです。

 
      ▲(このページの先頭へ)  
  有限から株式への移行手続き  
       
  A 新会社法では、有限会社が株式会社に含まれると聞いております。今、有限会社を経営していますが、株式会社に移行するには、どうすればいいのでしょうか?  
 
 
  A 定款変更により商号を「有限会社」から「株式会社」に変え、次に、有限会社の解散登記と株式会社の設立登記を行うことにより、「株式会社」に移行することができます。

【解説】
1 既存の有限会社は、以前と変わらず業務を行えます。
  (株式会社への商号変更をしない場合)
  既存の有限会社は、新しい会社法のもとでは、有限会社ではなく、「株式会社」と
  いう会社区分に入って存続します。

  しかし商号は、「有限会社○○」と名乗ったままで構いません。
  これからも有限会社と名乗る会社のことは 「特例有限会社」といいます。
  法制度上は、株式会社と同じように分類されるので、社員総会は株主総会、社員
  は株主とみなされます。

  制度は株式会社のものを使うけれど、会社名を変えたくない場合は、従来の
  「有限会社○○」、「○○有限会社」という会社名を使うことが認められます。
  (結婚したけれど、特例で「旧姓を名乗っていてもいいよ」 という感覚です。)

  有限会社と名乗り続ける場合には、「取締役の任期がない」など、今までの有限
  会社特有の制度は、新しい会社法では特例として認められます。
  この経過措置は、期限を定められていないので、これからも、ずっと、有限会社と
  名乗れる見込みです。(期限付きで認めるという趣旨ではないようです。)

2 商号を株式会社に変更し、株式会社○○と名乗るためには?
  資本金が1,000万円なくても、株式会社○○と名乗れるようになります。
  (例)インブルーム有限会社の場合
    (1)総会を開き、定款変更決議を行い
      商号を「インブルーム株式会社」と変える。
    (2)法務局に行き、「インブルーム有限会社」の解散登記と、
      「インブルーム株式会社」の設立登記を行う。
      この2つの手順により、「インブルーム株式会社」になれます。

  今までの法律では、株式会社の資本金は最低でも1000万円以上でなければなら
  なかったので、有限会社から株式会社への組織変更は、資本金と純資産の関係
  などの要件があり、累積赤字会社では簡単にできないという取扱いでした。
  この経過措置によると、商号を変更するという取扱いなので、他の要件は気にしな
  いで大丈夫です。
  (注)新会社法では、最低資本金制度も撤廃され、いつでも1円株式会社がつくれ
    るようになります。

【結論】
総会を開き、そのあと法務局に1回行くだけで「株式会社」になれます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  有限会社→株式会社への変更で注意すべきことは?  
       
  A 有限会社を経営しています。
新会社法施行で、有限会社から株式会社への変更も、「商号の変更」という手続で、簡単になると聞いてます(今回の「編集後記」参照)。
新会社法施行後は、株式会社に変更するべきか迷っています。
既存の有限会社のままでも、法律上のメリットがあることは聞いています
(取締役・監査役の任期や決算公告義務がないこと等)。
新会社法以外のことで、有限→株式へ組織変更を行うことにより、何かデメリットや留意点はありますでしょうか?
 
 
 
  A 次のポイントにお気をつけの上、株式会社への変更をご検討ください。
1)言うまでもないことですが「名前」が変わります!
2)もしかして評価益計上を考えていませんか?
3)株式会社にすると、税務上、デメリットがあると思っていませんか?
4)最後に、有限会社を続けるメリットをふまえて今一度ご検討を!

【解説】
----------------------------------------
■1)言うまでもなく「名前」が変わります
----------------------------------------
    「有限会社○○」から「株式会社○○」に商号変更することになりますか
    ら、名刺・販促物・封筒などのリニューアルが必要になります。
    銀行の口座等の名称変更もしなくてはなりません。
    これらの作業はコストも手間もかかります!

----------------------------------------
■2)もしや評価益計上を考えていませんか?
----------------------------------------
    法人税法では、資産の評価益の計上は、原則として認められていません。
    ところが、有限会社から株式会社に組織変更するときには、含み益の計上
    が認められています。

    このことから、土地等の含み益資産をもっている有限会社が債務超過に陥
    っている場合に、劇的な財務体質改善をもくろんで組織変更することが多
    々あります。

    しかし、新会社法施行後は、
  この評価益の計上は認められなくなりそうです。
    ですから、評価益の計上が目的でしたら、手続は若干複雑ですが、
  新会社  法施行前に組織変更してしまいましょう。

----------------------------------------
■3)株式会社にすると、税務上デメリットが?
----------------------------------------
    「有限会社は税務上優遇されている」と思っていらっしゃる方も多いです
     が、そんなことはありません。
    税務では、「有限・株式の区別」ではなく、「資本金等の額の大小」で、
    税制の優遇を受けられるかどうかが決まります。

    ふつう、資本金の額は「有限会社」<「株式会社」なので、「有限会社は
    優遇されている!」と誤解しやすいです。
    ですから、新会社法施行後、増資を伴わない(=資本金額を変えない)組
    織変更であれば、株式会社になったからといって、税務上損をすることは
    ありません。
    なお、税務上の繰越欠損金がある場合は、そのまま引き継げます。

----------------------------------------
■4)有限会社のメリットをふまえて
----------------------------------------
    有限会社は、新会社法施行直後は、確かに時代の遺物のような感じがする
    かもしれません。
    しかし、10年後20年後には老舗の価値が出て、「社歴のある会社=信用
    のおける会社」というイメージになるかもしれません!
    和菓子屋さんや古物商さんなど業種によっては、有限会社であり続けるこ
    とがブランドイメージ向上につながる可能性があります。

    上で述べた有限会社特有のメリットを受けるため、新会社法施行前夜は、
    有限会社設立ラッシュがあることも予想されます。
    新会社法施行後は1円でも会社が作れることから、
  「何が何でも株式会社」という時代ではなくなり、
  取引先のチェックポイントも、その会社が有限か株式かの
  「外見」ではなく、資本金の額や財務体質などの「内面重視」に
  なるものと思われます。
    今一度、組織変更についてはご検討を!

【結論】
・「社名変更の手間」<「株式会社化のメリット」ですか?
・評価益計上をもくろんで組織変更を行うのであれば新会社法施行前に!
・税務上デメリットがあると思って株式会社化を 躊躇しているのであれば
 心配ご無用。
・これからは「株式会社、即、信用」の時代ではないですよ!
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  有限から株式に移行する際の意外な注意点  
       
  A 有限会社を経営していますが、会社法の施行後に株式会社に移行したいと思います。
何か特に注意する点はありますか?
 
 
 
  A 「株式会社」化とともに、役員の任期の問題が生じます。
設立後10年以上経つ有限会社は、特に気をつけてください。
 

【解説】
----------------------------------------
■株式会社になったら「役員の任期」の問題が!
----------------------------------------
   会社法の施行を機に、有限会社から株式会社への
  移行をお考えの方も多いでしょう。
  有限会社から株式会社への移行は、「商号の変更」という
  手続きでできるので、資本金も役員の構成も
  有限会社のときのままで大丈夫です。

    ところが、役員の任期の問題は、発生します。
    施行後も、「有限会社〜」「〜有限会社」という名称が
    付いたままの会社(特例有限会社)には、
   これまでどおり役員の任期はありません。
    これは、特例有限会社の特典です。

----------------------------------------
■「株式会社」化と同時に任期満了!?
----------------------------------------
    株式会社の役員の任期は、原則、取締役が2年、
   監査役が4年です。
   この任期の数え方は、役員に選任された日がスタートです。
   有限会社を5年前に設立し、設立と同時に取締役になった方は、
   すでに、役員に選任されてから2年を経過していますので、
   株式会社になったと同時に、「任期切れ」になってしまいます。
  「任期切れ」になったら、役員登記も必要になります。

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■定款の「任期に関する規定」は10年にのばせる!
----------------------------------------
    会社法の施行後は、公開会社でない会社※は、
   役員の任期を最長10年までのばせます。 

    株式会社への商号変更の際に、
   定款の「任期に関する規定」を10年にしておくと、
   先ほどの5年前に設立した会社の取締役の場合は、
   あと5年任期が残っていることになります。

   ※発行するすべての株式に譲渡制限規定がついている会社。
  中小企業の大部分は、このタイプ。

----------------------------------------
■10年経っている会社は要注意!
----------------------------------------
    役員登記の必要性で注意したいのは、すでに、設立後
   10年を経過している会社です。
   このような会社は、選任されてから10年が過ぎている
   役員の方もいらっしゃるでしょう。
   10年選手の役員の方は、いくら定款の「任期に関する規定」を
   10年にしても、株式会社に移行した時点で
   役員の任期が切れます。

   したがって、株式会社に移行したら、役員変更登記も必要となります。 
   なお、この場合の残りの役員任期は、
   株式会社への移行時から10年となります。

【結論】
有限会社から株式会社に移行するときは、「役員の任期」の問題にも
気をつけましょう。

 
      ▲(このページの先頭へ)  
  有限会社の登記はどうなる!?  
       
  A 現在、有限会社を経営しています。
新会社法の施行後は、有限会社と名乗り続けることができるけれども、株式会社の制度が適用されると聞きました。
これは、どういうことですか?
登記は、そのままでいいのでしょうか?
 
 
 
  A 現行の有限会社は、そのままの有限会社がついた名前で、 会社法の「株式会社」として、存在し続けることになります。
会社法施行後、有限会社の登記簿謄本は、「株式会社」の区分に なりますが、 特別な場合を除いて、有限会社が登記手続きをとる必要はありません。

【解説】
----------------------------------------
■ 「特例有限会社」は、株式会社として存続
----------------------------------------
  有限会社は、整備法(注)によって、会社法の株式会社として、存在し続け
  ます(整備法2条1項)。
  会社法の株式会社として存続する有限会社を、 「特例有限会社」といいます。
  特例有限会社は、名前は有限会社であっても、 会社法の下では、株式会社として
  取り扱われます。

  「有限会社の定款」や、「社員」、「持分」、「出資1口」とった 有限会社特有の用語
  は、それぞれ、「株式会社の定款」や 「株主」、「株式」、「1株」とみなされます。
  「社員総会」も「株主総会」として、位置づけられます。
  (注)「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」は、現行の会社の
     「経過措置」を定める法律です。

----------------------------------------
■ 「特例有限会社」の謄本はこうなる!
----------------------------------------
  これらの「みなし規定」によって、特例有限会社の登記簿謄本に記載されている
  事項も、次のように変更されます。

  ***********************************************
   【記載事項の変更】
  ・資本の総額 → 資本金の額とみなされる
  ・出資1口の金額 → 抹消される
  ・「発行可能株式総数」と「発行済株式の総数」は、「資本の総額÷出資1口の金
   額」という算式で計算されて、登記される
  ***********************************************

  この変更については、登記官が「職権」をもって、特例有限会社の登記を行うた
  め、会社は(特別の場合を除き)登記手続きをとる必要はありません。
  定款も、株式会社の定款とみなされるので、特に変更しなくてもかまいません。
  しかし、定款に記載されている事項を確認しやすくするために、できれば、これら
  の用語の変更などを反映した定款を作成しておくことをお勧めします。

----------------------------------------
■ 6ヶ月以内に登記が必要な場合も!
----------------------------------------
  では、会社が自ら登記手続きをしなければならないときは、どのような場合でしょ
  うか?
  それは、現行の有限会社の定款に、次のような「持分に関する別段の定め(注)」
  がある場合です。

  ***********************************************
  1.議決権の数又は議決権を行使することができる事項に関する別段の定め
  2.利益の配当に関する別段の定め
  3.残余財産の分配に関する別段の定め
  ***********************************************

  これらの定めがあると、「種類株式」を発行しているとみなされ、登記すべき事項と
  なります。
  会社の定款にこのような記載があることは、登記官にはわからないので、会社自
  ら登記手続きが必要となるのです。
  なお、登記手続きは、会社法・整備法の施行日から6ヶ月以内に行う必要があり、
  登記申請しなければ、100万円以下の過料が課されることになっています。
  しかし、このような特別の定めを置いている有限会社は、それほど多くはないでし
  ょう。

   ※ 社員一人に議決権を1個とするなどの、社員毎の別段の定めは、持分に関
     する定めではないので、登記手続きが不要です。
     登記手続きが必要なのは、「設立時の持分は定款変更の議決権を有しない
     ものとする」など、「持分(=株式)」について決められている事項です。
     このように、別段の定めが、持分に関する定めかどうか、判断は難しいので、
     専門家などに事前に確認しておきましょう。

----------------------------------------
■ 「特例有限会社」に特別に認められること
----------------------------------------
  特例有限会社には、既存の有限会社の制度を尊重して、 整備法により、次の事
  項などが認められています。
    役員の任期・・・なし
    決算公告・・・必要なし
    会社の機関・・・株主総会+取締役 または
              株主総会+取締役+監査役
    会計監査人・・・資本金が大きくなっても不要
    株主総会の特別決議の要件
         ・・・総株主の半数以上であって、当該株主の議決権の4分の3以上
 
【結論】
特例有限会社は、カラダは「株式会社」ですが、特例として「有限会社」と名乗れる
会社です。
ほとんどのケースは、登記官の職権により、自動的に登記簿謄本の修正が
行われるので、登記手続きは必要ありません。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  新会社法スタート前に有限会社をつくるメリットは?    
       
  A 新会社法のスタートがもうすぐとのことですが、その前に有限会社を設立しようか迷っています。
いま一度、新会社法スタート前に有限会社を設立するメリットを教えて下さい。
 
 
 
  A 有限会社を設立するメリットには、次の4つがあります。

 1、設立時の「登録免許税」が株式会社より安い
 2、毎年の「決算公告の義務」が無い(株式会社はアリ)
 3、役員の任期満了による「役員変更の手続き」が不要(株式会社はアリ)
 4、新会社法スタート後は、有限会社が設立できない


【解説】
有限会社設立のメリットは、「株式会社を設立する場合と比べてどうか」 という点に着目すると良いでしょう。

----------------------------------------
■メリット1 「登録免許税」が安い
----------------------------------------
   株式会社を設立する場合は、最低でも会社設立時の登録免許税が15万円かか
   ります。
   これに対して、有限会社の場合は最低6万円で済みます。
   9万円の差額です。
   創業時に少しでも安く費用を押さえたい方にとってはオススメです。

----------------------------------------
■メリット2 「決算公告義務」が無い
----------------------------------------
   新会社法スタート後は、株式会社は毎年の定時株主総会の後、遅滞なく貸借対
   照表を公告しなければなりません。
   つまり、株式会社は毎年自社の財務内容を世の中に公表する義務があるので
   すが、有限会社にはこの義務がないのです。

   実はこの決算公告制度は、いまの法律でも株式会社の義務として存在していま
   す。
   ただ現在は、実際に罰せられることはまずないので、守っている株式会社は少な
   いです。
   新会社法スタート後は株式会社が増えるので、今までよりも公告の義務が厳密
   にチェックされる可能性があります。

----------------------------------------
◆公告の方法は?
----------------------------------------
   さて、公告の方法には「官報等に公告を掲載する」「インターネットを活用する」と
   いったものがあります。
   ちなみに、官報による公告は1回あたりの掲載料が中小会社でも約5〜9万円と
   なります。
   毎年この費用がかかるので、結構負担です。

   インターネットを活用する場合は、上記の費用がかかりません。
   やり方ですが、自社のホームページ上で、計算書類を見られるようにしておけ
   ば十分です。
   ただし、ホームページのアドレスを法務局に登記する必要があります。

----------------------------------------------
■メリット3 任期満了による「手続き」が不要
----------------------------------------------
   有限会社の場合は、役員変更の任期がないので、
  役員変更の義務はありません。
   創業時からずっと役員変更の手続きをしないということも可能です。

    これに対して株式会社の場合は、取締役及び監査役の任期が定められてお
   り、現在は取締役2年、監査役4年になっています。
   任期が満了した場合は、役員の入れ替わりが無い場合でも、役員変更の手続き
   (役員変更登記)をする必要があります。

   ただ新会社法スタート後は、株式譲渡制限の会社であれば任期が最長で10年
   まで延長できるので、株式会社でも現在よりは役員変更の手間は省けます。

   10年ごとの役員変更で済むと考えれば、有限会社と比べてそんなに変わらなく
   なったとも言えますが、役員変更の義務があるのと無いのとでは、大きく違いま
   す。

----------------------------------------
■メリット4 もう有限会社が設立できない
----------------------------------------
   新会社法スタート後は設立したくても、有限会社を設立することができません。
   つまり今後は、新会社法スタート前から存在していることがわかる「有限会社」と
   いう名称が貴重になる可能性もあるのです。

   また、新会社法スタート後は、いつでも有限会社から株式会社に名称変更でき
   ますから、「いつでも作れる株式会社を設立するより、今しか作れない有限会社
   を設立して、必要な時期に株式会社に変更する」というのも一つの選択でしょう。

【結論】
有限会社設立には、最短でも2〜3週間はかかります。
5月上旬の新会社法スタート前にかけこみで有限会社を設立しようと考えていらっしゃる方は、余裕をもって4月初めまでには準備されると良いでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  取締役は1人でもいいって本当?  
       
  A 現在、株式会社を経営しておりまして、名目上3人の取締役を置いています。
新会社法では「取締役は1人でもいい」と聞いたのですが、本当でしょうか?
そもそも「株式譲渡制限会社」って何なのでしょうか?
 
 
 
  A はい。「株式譲渡制限会社」ならば、「取締役1人」の株式会社も認められます。
「株式譲渡制限会社」とは、株式を売る際に、定款で「会社の承認が必要である」と定めてある株式会社のことをいいます。

会社の株式を売ってはいけない会社ではなく、会社の株式を売ってもよいのですが、そのときには「会社の承認を得る」という制限がある会社です。
<参考>
既存の有限会社では、社員以外の者に対する持分の譲渡は、社員総会の決議が必要です。つまり、売る際には制限がかかります。

【解説】
  今度の大改正では、株式会社の取締役や監査役の数、任期等について、
  「株式譲渡制限会社」か「それ以外」かに区分して取扱いを決定している
  ので、「株式譲渡制限会社」は今回の大改正のキーワードです。

1 株式会社の99%は株式譲渡制限会社
  会社の定款を見てみましょう。
  株式を上場・登録していない会社は、定款の第7条あたりに「当会社の
  株式を譲渡するには当会社の取締役会の承認を得なければならない。」
  という規定をたいてい設けています。
  この規定を設けている会社は、そのことを登記しなければならないので、
  会社の謄本にも記載されています。

2 譲渡制限の規定をなぜ設けるのか?
  株式は自由に売買できるのが原則です。
  しかし、株主が株式を誰かに売った結果、会社にとって迷惑な人物が
  新たに株主となることもあり得ます。
  これを阻止するために、「株式譲渡制限」の規定を定款に定めることが
  認められているのです。
  ただし、会社は株式の売買自体を制限することはできません。
  株主が株式を誰かに売却しようとする場合には、会社にその売却について
  承認を受けなければなりません。
  会社がその売却を認めない場合には、株主は会社に新たな売却先を指定
  してもらうことになります。

3 譲渡制限会社については取締役1人でOK
  新会社法では、株式譲渡制限会社は「有限会社型の株式会社」という
  位置づけになります。
  株式譲渡制限会社は、実態として経営と所有が分離していないと考え
  られるので、定款によって柔軟な会社の機関の設計が認められます。
  具体的には、次のとおりです。
    (1)取締役3人以上で構成される取締役会の設置の規制をはずし
      て、取締役1人でもよいこととする。
      これにより名目的な取締役や監査役を設置しなくてもすむ。
    (2)取締役・監査役の任期は、定款で定めれば最大10年までの任期
      とすることができる。

【結論】
上場会社を目指すわけでなければ、取締役を1人にできます。

 
      ▲(このページの先頭へ)  
  取締役や監査役はどうなるの?  
       
  A 新会社法では、取締役1人の株式会社が認められるそうですが、取締役や監査役はどのようになるのですか?  
 
 
  A 新会社法では、株式会社の「株式譲渡制限会社」については、取締役1人の会社も認められ、監査役も置かなくてすみます。
また、中小会社の決算書の信頼性を向上させるために、「会計参与」を置くこともできます。

【解説】
1 株式譲渡制限会社は、会社の機関を自由に選べる
  現行の株式会社は、取締役会や監査役を必ず置かなければなりませんが、
  新会社法での株式会社の「株式譲渡制限会社」については、次の7タイプの中
  から会社の機関を選択します。
    (1) 株主総会+取締役
      (もっともシンプルな形、取締役は1人でもOK)
    (2) 株主総会+取締役+監査役
      (取締役は1人でもOK)
    (3) 株主総会+取締役+会計参与
      (監査役に代えて会計参与を活用)
    (4) 株主総会+取締役+監査役+会計参与
      (監査役と会計参与の並存は会社の任意)
    (5) 株主総会+取締役会+監査役
      (現行のとおり、取締役は3人以上)
    (6) 株主総会+取締役会+監査役+会計参与
      (監査役と会計参与の並存は会社の任意)
    (7) 株主総会+取締役会+会計参与
      (監査役に代えて会計参与を活用) 

    (注意)
    大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)は、取締役会を
    置く場合には、必ず、監査役(監査役会等を含む)を置かなければなり
    ません。

    (注目!)
    なお、取締役の数は、取締役会を置かない場合は1人以上いればいいのです
    が、取締役会を置く場合は3人以上になります。

2 取締役会がなくなったら?
  取締役会を置かない株式会社は、基本的にどのような事項も株主総会で決議
  することができます。
  株式の譲渡の承認についても、株主総会によって行うことになります。

3 会計参与とは?
  中小会社の決算書の信頼性を向上させるために「会計参与制度」があらたに
  つくられます。
  この制度は会社の任意の制度で、「会計参与」には税理士や公認会計士等の
  会計専門家だけがなることができます。
  この「会計参与」は取締役と共同して決算書等の作成を行います。

【結論】
コストや人手が足りないのなら、取締役1人、監査役ナシという選択もあります。
これから小規模で起業しようという方は、まずはここから始めるのがいいかもしれません。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  取締役を減らすと節税にもなる?  
       
  A 会社の株式の60%を社長の私が所有しています。
取締役1人の株式会社が認められるようになれば、妻を役員からはずそうと思います。
そうすれば、会社が黒字のときは、妻に賞与を払って節税することができますか?

なお、小さな会社ですので、妻は会社経営に関わっています。
 
 
 
 
  A 税務上の取り扱いはそんなに甘くありません!
「みなし役員」という規定があり、
たとえ登記上は役員ではなくても「法人税法上の役員」となる可能性があります。
役員とみなされる者に対する給与は、役員と同じ課税が適用されます。
奥様への賞与の支払いは、決算書上は経費でも、
税務上は経費と認められません。

そのため、有税の経費という取り扱いになります。
※(初心者の方へ!)
税務上、従業員への賞与は経費として認められますが、
役員への賞与は経費として認められていません。
経費として認められると、利益が減り税金も減りますが、
経費として認めらなければ税金は減りません。

【解説】
1 取締役1人の会社では、「みなし役員」が増加?
  法人税法上は、取締役や監査役以外の者も一定の要件に該当すれば、役員と
  みなして、役員と同じ課税が適用されます(これを「みなし役員」といいます)。
  取締役が1人でもよくなれば、この「みなし役員」が増えることが予想されます。
  会社オーナー親族に対する給与の支払いに対しては、課税上の問題がないか、
  一層、注意が必要になります。

2 みなし役員とは?
  配偶者と自分の持株割合が5%を超え、支配株主グループに属する者は、経営
  に従事している場合、役員とみなされます。
  支配株主グループとは、会社を支配するだけの持株割合を有している株主グル
  ープのことです。

  たとえば、配偶者や子どもの持分と合わせた持株比率が50%を超える場合は、
  まず、支配株主になります。
  みなし役員に対する賞与(臨時的な給与)は、支払っても税務上の経費にならな
  いので、課税の対象となる所得を減らす効果はありません。

3 役員としての給与、従業員としての給与
  役員と会社との関係は、委任関係で雇用関係ではありません。
  親族を役員からはずした場合、従来の給与の内容を再確認する必要があり
  ます。

  微妙な問題ですが、一つには、「役員だから役員としての責任料としての意味
  合いもある」ということで決められていたとされていた高い給与が、役員をはずされ
  従業員という身分になった場合にも税務上、通用するかという問題があります。

  従業員となれば、会社との関係は雇用契約であり、労務の対価として給与の額が
  妥当か否かを見るので、従来の給与の額を、今一度、検証する必要があると思わ
  れます。

【結論】
奥さんを取締役からはずしても、以前と変わらず会社経営に関わっていると、
「みなし役員」とされ、賞与を払っても節税にはなりません。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  自己破産しても会社の取締役になれますか?   
       
  A 会社が倒産(破産)し、私個人も自己破産しました。
「このままでは終われない!」という熱い思いのもとに、再起をかけて、再び起業にチャレンジしたいのですが、破産者は、会社の取締役になれるのでしょうか?
※ 破産者とは、裁判所の破産手続きの開始決定を受けた人をいいます。
 
 
 
  A 取締役になれます!
現行商法では破産した後に復権していないと無理ですが、新会社法では破産した後に復権していなくても取締役になることができます。
※ 復権とは、破産者の法律上の制限(例えば、税理士になれない、後見人になれない等)を解き、権利や資格の回復を図るための制度です。

【解説】
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■現行商法では破産者はダメ
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    現行商法では、株式会社の経営を委ねるのにふさわしくないと考えられる
    者を取締役から排除するため、取締役の欠格事由を定めています。
   (商法第254条の2)

    その中に、「破産手続開始の決定を受け、まだ復権を得ていない者」
   (商法第254条の2第2号)という規定があります。
    つまり破産者は、復権しない限り、会社の取締役にはなれないということ
    です。

    これは、「復権を受けない限り自分の財産を管理できないのだから、他人
    の財産を管理することができないのは当たり前」と考えられているからで
    す。
    ※ 欠格事由……取締役となれる資格を欠くという意味です。

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■新会社法ではこう変わる!
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    新会社法では、「破産手続開始の決定を受け、まだ復権を得ていない者」
    という規定は削除されます。(新会社法第331条)
    この改正により、破産して復権していない人でも、会社の取締役になれる
    ようになります。

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■すぐに社会復帰!
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    確かに、現行の商法でも、破産後に復権すれば、会社の取締役になること
    ができます。
    しかし、破産手続を開始してから免責復権するまでには、おおよそ3〜6ヶ
    月の期間がかかります。
    つまり、新会社法では、この3〜6ヶ月の期間をなくすことにより、「より
    早く、ただちに社会復帰できる!」ということなのです。
    ※ 免責……債権者に対する債務の全部についてその責任を逃れることで
                す。

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■まとめ
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新会社法では、“早期の社会復帰を促す”という趣旨で、復権していない自己破産者でも、会社の取締役となることができます。

【結論】
自己破産しても会社の取締役になれます!   
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  古い会社が陥りやすい監査役の問題   
       
  A わが社は古い会社なので、定款に株式の譲渡制限の定めがありません。
新会社法施行により、何か注意する点はありますか?
 
 
 
  A 小会社で株式の譲渡制限の定めがない場合には、新会社法施行後に、
監査役の任期の問題が生じます。  
役員変更登記をし忘れないよう、気をつけましょう。

【解説】
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■えっ、うちは「公開会社」だったの!?
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    新会社法では、発行するすべての株式に譲渡制限規定がある会社は、
  「公開会社でない会社(非公開会社)」といい、
  「株式譲渡制限会社」とも呼ばれています。
   これに対し、株式の一部にでも譲渡制限規定がない会社を
  「公開会社」といいます。

   この株式譲渡制限規定は昭和41年にできたので
   社歴の長い会社の中には、実は
  「公開会社」に該当する会社も多いのです。

   今までの商法では、株式の譲渡制限のある・なしを
   あまり意識することはなかったかもしれませんが、
   新会社法では、「株式譲渡制限会社」に認められるメリットを
   受けられなくなります。

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■監査役の権限
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    監査役の任期の問題は、監査役の権限と関係があります(336条)。
   監査役は、「会計監査」だけでなく、取締役の業務執行を監査する
  「業務監査」の権限も、もっています(381条)。

   今までは、「小会社」(資本金1億円以下の会社)ならば、
   監査役の権限を「会計監査」に限定できましたが、
   新会社法では、小会社であるかどうかは関係なく、
   株式譲渡制限会社だったら、定款に定めることにより、
   監査役の権限を「会計監査」に
   限定できるという扱いになります(389条)。

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■小会社の監査役の権限が変わる?
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    新会社法の施行の際に、小会社である会社は、自動的に、
   監査役の権限を会計監査に限定するという定款の定めが
   あるとみなされます(整備法53条)。

   ところが、この定款の定めは、譲渡制限会社のみに適用されるので、
   公開会社は、対象外になります。
 ●小会社で譲渡制限会社である場合
 (施行前) 会計監査権限のみ
 (施行後) 会計監査権限のみ
 ●小会社で公開会社である場合
 (施行前) 会計監査権限のみ
 (施行後) 会計監査権限と業務監査権限

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■「小会社」で「公開会社」の監査役は任期が切れます!
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    このように、現在「小会社」で 「公開会社」に該当する会社は、
   監査役の権限が会計監査だけでなく業務監査にまで
   拡大されてしまいます。
   権限が変わるので、その結果、強制的に監査役の任期が
   満了になってしまうのです(336条4項3号)。
 (336条4項の抜粋)

   次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、
   当該定款の効力が生じた時に満了する。
   三 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の
     定款の定めを廃止する定款の変更
    したがって、新会社法施行と同時に、監査役の変更登記が
   必要になります。

  この場合の登記の期限は、会社法施行後2週間以内です。
   前の監査役が引き続き監査役に就任する場合でも、
   監査の権限が拡大してしまうことを、
   了承してもらったほうがよいでしょう。

   ※ちなみに、譲渡制限規定を設けるには、定款変更や
    公告・通知などの手続きが必要なので、新会社法の施行前に
   「株式譲渡制限会社」になるには、時間が足りません。

【結論】
定款を確認し、「公開会社」である場合は、
新会社法施行後2週間以内に、監査役の変更登記を行いましょう。
同じ人が引き続き監査役に就任する場合には、
監査の権限が拡大することを了承してもらいましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  1人取締役の会社にするには、いくらかかる?  
       
  A 役員の人数を確保するために、両親が取締役になっています。
株式会社も1人取締役でいいと聞きましたが、変更するには登録免許税はいくらかかりますか?
なお、従来から株式会社で、監査役も1人います。
 
 
 
  A 会社の「機関設計の変更」と「役員の辞任」の登記が必要なので、登録免許税だけで、7万円(資本金1億円超の会社は9万円)かかります。

【解説】
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■従来の有限会社型の機関設計
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 非公開会社(株式譲渡制限会社)は、
 従来の有限会社型の会社の形(機関設計)が認められ、
 取締役会を置かない場合には、取締役の人数は1人でもよく、
 監査役も置かないという選択ができるようになりました。

 人数あわせのために、役員の名義借りをしている場合には、
 会社法の施行を機に、機関設計の見直しを行う会社もあるでしょう。

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■1人取締役の会社にするには?
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 会社の機関設計については、「定款」で決めています。
 したがって、取締役会や監査役を置かないという選択をするには、
 「定款」の変更が必要になります。
 記載例はいろいろとありますが、定款の「取締役及び取締役会」の章と
 「監査役」の章を「株主総会以外の機関」という章に変更して、
 取締役会と監査役に関する規定を削除し、
 取締役に関する規定のみを残します。

 株式の譲渡制限に関する規定については、
 「取締役会の承認を受けなければならない」としている会社が多いはずです
 から、この規定についても、「株主総会の承認」というように変更しておく
 ことをお勧めします。
 なお、辞めてもらう役員の方については、辞任の手続きが必要になります。

 ※定款の変更には、株主総会の特別決議が必要です。

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■意外とかかる登録免許税
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 機関設計の変更、役員の変更、譲渡制限規定の文言修正と登記すべき事項が
 たくさんになりますが、この場合、登録免許税(登記申請の際に貼る印紙
 代)は、どのくらいかかるのでしょうか?
 登録免許税は、変更する区分ごとに決められていますが、今回の変更登記の
 場合には、

 ●取締役会設置会社である旨の削除は、
  取締役会・監査役会・委員会に関する変更で一区分 3万円

 ●役員の辞任等は、
  取締役・監査役等の役員に関する変更で一区分 1万円
  (資本金1億円超の会社は3万円)

  ●監査役設置会社である旨の削除は「登記事項の変更」となり、
  譲渡制限規定の文言変更と同じ区分で3万円

 ということで、合計で7万円(資本金1億円超の会社は9万円)になります。

 司法書士に変更登記を依頼しないで、自社で行ったとしても最低、
 7万円はかかることになります。

【結論】
1人取締役の株式会社に変更するには、登録免許税だけでも最低、
7万円かかります。

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■ちょっと付け足し
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 平成18年度の税制改正で、「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制
 度」という増税となる改正がありました。
 特殊支配同族会社に該当するかどうかは、役員の構成もその判定要素になり
 ますので、1人取締役会社に変更することによる影響があるかどうか、
 一応、検討してみてください。
 今年の税制改正は、役員給与に関する改正事項が多く注意が必要です。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  会計参与のメリットは?  
       
  A 新会社法では、「会計参与」という新しい役員を置いてもいいとのことですが、どういうメリットがあるのですか?  
 
 
  A 取締役や監査役といった会社の機関の一つとして、新しく「会計参与」という機関がつくられ、税理士・公認会計士ら会計の専門家のみがなることができます。
会計参与がいる会社の決算書は、会計の専門家が作成に関与しているという点で、信頼性が高いという評価につながることが期待されています。

【解説】
1  「会計参与」制度の趣旨
  いま決算書の信頼性が注目されています。
  金融機関の融資制度も、ひと昔前は経営者の人柄や付き合いの度合いが幅を
  利かせていましたが、最近は財務データのみを分析・評価して貸すといった制度
  が定着しつつあります。
  しかしながら、中小会社では、次のような課題があります。
    (1)中小会社では、会計のチェックができる専門性の高い人員を雇う余力は
      ない。
    (2)監査役が置かれていても、チェック機関として機能している会社は少ない。
    (3)監査法人の監査を受けるには、コストが高すぎる。
  そこで、過大な負担がなく決算書の信頼性を高めるための制度として、税理士や
  公認会計士を会社の機関に組み入れ、決算書を取締役と共同で作成させると
  いった「会計参与」制度が考えられました。

2 「会計参与」の設置は会社の任意選択
  この制度は、会社の選択による制度で、会社の定款でその設置を定めることが
  できます。
  会計参与の氏名・名称は、登記事項として会社の謄本に記載しなければなり
  ません。
  取締役会を設置した会社では、監査役の設置が必要ですが、中小会社では監査
  役の代わりに「会計参与」を設置することが認められます。
    (1)株主総会+取締役+会計参与 (会計参与の設置は会社の任意)
    (2)株主総会+取締役会+会計参与 (監査役に代えて会計参与を活用)
    (3)株主総会+取締役(取締役会)+監査役+会計参与 (監査役との並存は
      会社の任意)

3 「会計参与」とは?
  <職務>
    計算書類(決算書)について、
    (1)取締役との共同作成(商法上の対外責任を負う)
    (2)株主総会での報告説明
    (3)会社とは別に5年間の保存
    (4)株主・債権者からの請求があれば開示に応じる

  <資格>
    税理士(税理士法人を含む)または公認会計士(監査法人を含む)のみが
    なれる。
  <選任>
    株主総会で選任される。
  新しい制度なので、税務申告や記帳代行業務を請け負う税理士等業務との業務
  区分や、中小会社の計算書類の作成基準をどうするかなど、詳細について制度
  整備が必要です。
 
【結論】 
「会計参与」は、決算書の信頼性を高めるはずです。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  会計参与への報酬は?  
       
  A 中小企業の経営者ですが、月次決算をみてもらっている顧問税理士に「会計参与」になってもらおうかと検討しています。
もし「会計参与」を頼んだら、現在支払っている報酬よりも高くなるのでしょうか?
 
 
 
  A おそらく「会計参与報酬」を別途で請求する税理士が多いと思われます。
そもそも、会計参与になることを断る税理士もいると思われますので、御社の顧問税理士が会計参与に積極的かどうかをまず確かめてみてください。

【解説】
1 会計参与のメリット
  (1)決算書の信用を高める(融資・社債発行に有利)
  (2)名目的な監査役を廃止できる(中小会社で取締役会がある場合、 監査役か
    会計参与の設置が義務付けられています)

2 税理士側の反応
    会計参与の主な担い手は「税理士」になります。
    税理士にとっては、新たなビジネスのチャンスです。
    ただ、税理士の現場でも、「会計参与」についての対応が進んでいるわけでは
    ありません。
    現段階ではこの制度自体に半信半疑の税理士も多いというのが現状です。

<半信半疑の税理士が多い理由>
  (1) 「金融機関の対応がまだはっきりしないので、会計参与制度が経営者に
    とって必要かどうかよくわからない」
    これは、金融機関が融資の検討の際に、会計参与がいる会社を高く評価する
    かどうかまだわからない、という意味です。

    現在の金融機関は、融資先を「格付け」して融資をしています。
    どういうことかというと、「自己資本比率は何%か?」「収益率は?」といった、
    いくつかの項目をチェックするによって、各融資先を格付けし、その格付けに
    基づいて融資の可否や利率を決めているのです。
    そのチェック項目の中で「会計参与の有無」がどれくらいの評点になるのか
    が、まだわからないのです。

  (2)「損害賠償の対象にもなるので、そのような責任の重い仕事は引き受けられ
    ない」会計参与は、ただの顧問税理士でいるよりも重い責任を負うことになり
    ます。
    まず、株主総会で選任されるので、株主に対して責任を負うことになります。
    具体的には、「株主代表訴訟」の対象になります。
    当然、会社や第三者に対する責任も負います。
    現在の社外取締役と同様の責任を負うので、ちゃんと仕事をしていなければ、
    (たとえば)報酬の2年分を損害賠償する可能性が出てきます。
    また、経営陣と会計参与との意見が対立し、経営陣が強引に粉飾した決算書
    を作った場合、会計参与は「反対したので、私に責任はありません」ということ
    はできません。
    会計参与は辞任しなければ、「経営陣と一緒に作った」とみなされてしまいま
    す。
    辞任することは、収入を減らすことにもつながるので、ここにジレンマが発生
    することになります。

    また、決算書の作成過程において、不正がないかどうかをチェックするために
    は、会社内部の管理体制もチェックしなければならなくなります。
    以上のように、会計参与になることは大きなリスクを負うことにもなるので、
    消極的な税理士も現時点では結構います。
    「大手の会計事務所しか会計参与になれないのではないか」といった声も
    あがっています。
    ただ、会計参与の責任範囲が広がりすぎないように、「会計参与は決算書しか
    作っていません」などといった『会計参与報告書』を作ることも検討されていま
    す。

3 契約と報酬
    税理士業務と会計参与業務はその責任も異なるので、それぞれ別個の契約
    をするものと思われます。(契約を分けることにより、業務の範囲を明確に区分
    する必要もあるため)
    よって、会計参与報酬も税務顧問料とは別になるでしょう。
    会計参与報酬をサービスでタダにする、という税理士もいるかもしれません
    が、会計参与の責任の重さを考えるとごく少数だと思われます。

4 会計参与に特化した税理士が出てくる可能性
    決算書のお墨付きをもらうとともに、決算書の作成業務をより円滑に進めた
    い、ということであれば、顧問税理士とは別に会計参与を置くこともよいかと思
    われます。
    新しいビジネスチャンスに積極的な税理士なら、会計参与を引き受けるでしょ
    う。

    また、監査のプロである「公認会計士」の資格も持っている税理士を中心に、
    「会計参与」のみを積極的に請け負う税理士も出てくると思われます。

【結論】 
とりあえず顧問税理士さんに、ご相談ください。
税理士によって、その対応は大きく異なると思われます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  会計参与に報酬を払いたいのですが  
       
  A 会社の計算書類の信頼性を高めるため、近々、顧問税理士(個人)に会計参与への就任を要請するつもりです。
なお、会計参与報酬については、税理士報酬とは別に、期末計算書類作成後、年に1回だけ支給するつもりですが、なにか気をつけることはありますか?
 
 
 
  A 会計参与は会社の役員です。
 1.定期同額給与
 2.事前確定届出給与
のいずれにも該当しない会計参与報酬は、法人税の計算上、損金の額に算入されません。


【解説】
----------------------------
■会社法の考え方
----------------------------
 会社法326条1項では、
 「株式会社には、株主総会以外の機関として、1人または2人以上の取締役を
 置かなければならない」としていますが、
 同条2項では、
 「定款に定めれば、会計参与などその他の機関を置くことができる」として
 います。

 続いて、329条1項では、
 「役員(取締役、会計参与及び監査役をいう)及び会計監査人は、株主総会
 の決議によって選任する」とし、
 330条では、
 「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」と
 しています。

 上記の条文から、
 「会計参与は、株式会社の機関であり、会社と委任関係にある役員である」
 ということがわかります。

----------------------------
■報酬の考え方
----------------------------
 そして、379条1項では、「会計参与の報酬等は、定款にその額を定めていな
 いときは、株主総会の決議によって定める」としています。
 つまりこれは、会計参与は株式会社と委任関係にある役員なのだから、
 取締役や監査役と同じく、株主総会において報酬額を定める必要があります
 よ、といっているのです。

 また、379条3項では、「会計参与は、株主総会において、会計参与の報酬等
 について意見を述べることができる」として、必要があれば異論を唱えるこ
 とができます。

 なお、定款で会計参与報酬を定めると機動性を欠くので、実務上は、
 株主総会で報酬の上限枠を定め、具体的な報酬額は、取締役(会)に
 委任するのが一般的です。

------------------------------------------------------
■会計参与は、「会社の役員」である
------------------------------------------------------
 前述のとおり、会計参与は会社の役員です。
 会社の役員は、平成18年4月1日開始事業年度から「役員給与の損金不算入
 (法人税法34条)」の適用を受けます。

 つまり、
 1.定期同額給与 (法人税法34条1項一)
 2.事前確定届出給与 (法人税法34条1項二)
 3.利益連動給与 (法人税法34条1項三)
 のいずれにも該当しない会計参与報酬は、損金の額に算入されないのです。

 では、ご質問のケースで会計参与報酬を損金の額に算入するにはどうすれば
 よいのでしょうか。
 以下、2つの方法をみていくことにしましょう。

----------------------------------------------
■「1.定期同額給与」として処理する
----------------------------------------------
 定期同額給与に該当させるためには、会計参与の職務執行期間の開始前に、
 「事前の定め」があることが必要です。
 つまり、定時株主総会等で事前に「所定の時期に確定額を支給する旨の定
 め」を定めることが必要なのです。

 なお、定期同額給与の場合、支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、
 かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である必要が
 あります。
 したがって、定時株主総会等で月ごとに支給する報酬額を決定し、当該事業
 年度の所定の時期に、毎月同額の会計参与報酬を支給する必要があります。

---------------------------------------
■「2.事前確定届出給与」として処理する
----------------------------------------
 事前確定届出給与に該当させるためには、

 1.定時株主総会等で「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」を定めて
 2.職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日までに
  その「定め」の内容に関する届出を行い、
 3.職務の執行を開始する日には実際に職務の執行を開始しており、
 4.その「定め」どおりに、確定額として届け出た金額を支給する、

 という全ての手順を踏む必要があります。

 したがって、定時株主総会等で計算書類作成後に支給する報酬額を決定し、
 その決定に関する届出を所定の期限までに行い、その決定どおりに会計参与
 報酬を支給する必要があります。

【結論】
 会計参与は会社の役員です。
 会計参与報酬については、
 1.定期同額給与
 2.事前確定届出給与
 に該当するように、手続きを行いましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  会計参与が融資審査に与える影響は?  
       
  A 会計参与を設置している会社の決算書は、信頼性が高いと思われますが、公的機関や金融機関の評価はどうなのでしょうか?
会計参与を設置していると、それだけ融資の審査が有利になるのでしょうか?
 
 
 
  A 融資の審査で、会計参与設置会社がそうでない会社と比較して“劇的に”有利である、とは言いがたいです。
しかし、公的融資制度でも民間の銀行でも、会計参与設置会社を評価する姿勢が少しずつ見えてきました。

【解説】
----------------------------------------
■信用保証協会に関して
----------------------------------------
  平成18年4月以降、信用保証協会の「保証料率の弾力化」が行われているの
  をご存知でしょうか?

  平成18年4月1日申込受付分より、従来、原則一律であった保証料率
  (無担保保証:1.35%)を「0.5%〜2.2%」の範囲で9区分に細分化して
  います。
  これを「リスク考慮型保証料率」と言います。

  さて、この保証料決定のプロセスにおいて、保証料率の割引制度として、
  「会計処理による割引(0.1%)」があります。
  ご説明しますと、信用保証協会は、中小企業の「会計処理による割引」
  として、4つの該当を示してしており、
 その一つに以下のような条件があり ます。

 「会計参与を設置している旨の登記を行った事項を示す書類を
  ご提出いただ いた会社」

  つまり、会計参与設置会社は、
 0.1%の保証料率の割引が実施されるので す。

-----------------------------------------
■自治体融資に関して
-----------------------------------------
  自治体融資に関しても、信用保証協会と同様の優遇制度を実施している地方
  自治体があります。
  しかし、全国の自治体が実施しているわけではありません。
  ご自身で地元の自治体融資を調べてみてください。

  ここで、一例を紹介しましょう。

  東京都に「クイック融資(会計情報)」という制度があります。

  この制度は、ある一定の要件と書類を提出した会社には原則3営業日以内で
  保証審査をする、というものです。
  本制度の利用要件は5つあり、その5つ目に、
  「下記のいずれかの書類を提出すること。」という条件があります。

  その一つに、「会計参与を設置している旨の登記を行った事項を示す書類」
  があるのです。
  もちろんこの制度では他の書類の提出でもよいのですが、
 これは会計参与設 置会社が評価されている一つのケースです。

-----------------------------------------
■ビジネスローン(銀行融資)に関して
-----------------------------------------
  民間の銀行のビジネスローンやプロパー融資に関しては今のところ大きな影
  響はなさそうです。

  しかし、公的融資制度においては、会計参与設置会社に対する優遇制度が少
  しずつ実施されています。
  これにより、民間金融機関における“格付け”に関しても、多少なりとも影
  響してくるでしょう。

  実際、一部の金融機関においては、定性要因として評価しているようです。
  ただし、今後も「会計参与という制度を導入したから劇的に融資を受けやす
  くなる!」とまではならないでしょう。

  一番重要なのは、経営者が、日頃からの決算書作りに関する積極的な姿勢を
  金融機関に示すことです。
  会計参与を設置するのも経営者の積極的な姿勢の表れの一つなのです。

【結論】
  公的融資制度では、会計参与に対してある一定の基準が示されています。
  そのため、会計参与を設置している会社は“それなりに”選択肢の幅が広が
  っています。
  一方、民間の金融機関等の対応は、現段階では曖昧です。
  今後は特に、民間の金融機関等の動向を見守っていく必要があるでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  1人で会社を作れるか?  
       
  A 今年の夏に会社を退職し、自分で事業を行おうと思っています(当面は1人で会社を作って、事業をするつもりです)。
新会社法で株式会社が変わることは聞きましたが、これまでと何が一番変わるのでしょうか?
1円会社(確認会社)にも興味があるのですが……
 
 
 
  A これまでの「株式会社」が大企業を前提に法律が作られていたのに対し、新「株式会社」は、1人でも会社をつくれ、会社の成長に合わせて組織もステップアップできるように法律も作られている点が最も違います。

【解説】
1 新「株式会社」の最低条件
  これまでの「株式会社」では株主総会・取締役会・監査役といった機関が必要
  不可欠でしたが、新「株式会社」では、機関も最低限のものしか決められていま
  せん。

  ☆☆☆ 新「株式会社」の最低条件☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
    『株主総会と取締役(1名以上)は必要』
    →取締役会や監査役などは、会社が大きくなるにつれて作ればよい。
  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  これまで取締役3人と監査役で、最低4人は登記する必要があった株式会社
  の設立が1人でできることになります。

2 「確認会社(いわゆる1円会社)」との違い
  同じ起業家向けの株式会社でも、2年前から認められた「資本金が1円でも株式
  会社が作れる」という確認株式会社の場合、「取締役会(3人以上)」「監査役」
  が必要になります。(つまり、現状の株式会社と同様に最低4人が必要です)
  そのほか確認株式会社では、「5年以内に資本金を1000万円にする」「毎年、
  決算書を経済産業局に提出する」などといった義務が発生します。

  (注意!)
    確認有限会社を作るのであれば、1人でもできますが、「5年以内に資本金を
    300万円にする」「毎年、決算書を経済産業局に提出する」という義務はあり、
    また、新会社法で有限会社そのものがなくなるので、改正時に「有限会社の
    ままでいくか」「株式会社にするか」といった選択と手間がかかることになり
    ます。

【結論】
特に1人で起業しようとしている方にとって、
新「株式会社」は確認会社よりも格段に使いやすい組織です。
すぐに会社設立をするのではなく、個人事業で様子をみて軌道に乗ったら新会社法施行後に会社を設立するのがいいでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  1円会社はどうなる?  
       
  A 資本金特例制度をつかって、2003年に資本金1円で株式会社を設立しました。
新会社法では、資本金が1円でもいいと聞きましたが、私のような1円会社は、やはり5年後までに資本金を1,000万円に増やす必要はあるのでしょうか?
 
 
 
  A いわゆる1円会社は、定款に「解散事由」を定めて、登記しています。
新会社法の施行後に、この「解散事由」の規定を削除し、会社の謄本からも削除する登記をすることにより、「5年後の解散」の規制を取り払うことができます。

【解説】
1 現行法による1円会社
   1円会社は、新事業創出促進法のもとで、一定の要件を満たせばつくれます。
   しかし、いまの商法では、最低資本金の規制が生きているので、これはあくまでも
  「特例」措置なのです。

   この特例でつくられた株式会社は、資本金を1,000万円以上に増やすか、合名
  会社等に組織変更をするかをしないで、5年を経過してしまったら会社を解散する
  こととされています。

2 新会社法では1円会社が恒久化
   「株式会社をつくる際には、最低でも、1,000万円を資本金として払い込まないと
  いけない」この常識が、新会社法ではくつがえります。
   新会社法では、株式会社(施行後には、有限会社はつくれません)をつくるに
  あたり、出資すべき額について「下限額の制限を設けない」とされています。
   これは、要するに、「出資すべき額はいくらでもいい。1円でもいい」ということを
  意味しているのです。

   最低資本金の規制が撤廃されたことによって、いわゆる1円会社の設立が可能に
  なるのです。
   しかも、期限付きの特例ではなく、恒久的に認められることとなります。

3 すでにある1円会社はどうなる?
   すでにある1円会社については、どうなるのか気になるところです。
   特例を受けてつくった会社は、設立の時に作成した会社の定款に「資本金を
  増やせず、組織変更もしなかったら、5年を経過したときに解散すること」を定め、
   これを登記することになっています。
   登記簿謄本にもそのことがちゃんと記載されています。
   資本金を増やすことなく5年後の解散を免れるためには、新会社法が施行され
  たら、株主総会で、この「解散の定め」を定款から削除するという決議をし、登記
  簿からも削除してもらうよう登記申請することが必要です。
   この手続きによって、現状の資本金のままで株式会社をずっと続けることができ
  るようになります。

   新会社法では、最低の資本金という規制自体がなくなりますので、解散事由の
  定款変更と削除の登記をすれば、5年以内に資本金を増やす必要もなく、ずっと
  1円会社のままでもよいことになります。

【結論】
「解散事由の定款変更」と「削除の登記」により、資本金1円で株式会社を続けられます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  安く会社を作れるか?  
       
  A 会社を作ろうと思っているのですが、あまりお金がありません。
新会社法なら資本金がいらないと聞いたのですが。
 
 
 
  A 今までの商法では、株式会社については資本金が1,000万円、有限会社については300万円が最低必要でした。
これが新会社法の新しい「株式会社」では、この最低資本金制度がなくなり、資本金1円からでも会社が作れることになります。

【解説】
1 そもそも資本金とは?
  資本とは、「会社財産を確保するための基準となる一定の計算上の額」つまり
  「おカネに対する信用力」のことです。

  会社には「事業に対する信用」「社長の人柄に対する信用」などいろんな「信用」
  がありますが、お金に対する信用が「資本金」です。

  資本金が1,000万円あるということは、
  「一定のお金をちゃんと用意できる」という信用が世間から得られます。
  このような決まりを作ることによって、会社同士が信用しあえる環境を作ろうとした
  のです。

  ※ 法人登記と貸借対照表には、この資本金を書かないといけません
    (登記では資本金のことを「資本の額」といいます)。

2 資本金の歴史
  平成2年以前、最低資本金の額は、株式会社35万円、有限会社10万円でした。
  すると、バブル期が始まるとともに実体のないペーパー企業が増加し、会社への
  信用が失われる状況となりました。そこで、平成2年の商法改正で、株式会社
  1,000万円、有限会社300万円となりました。

  ところが最近になって、「1,000万円は重すぎる!」「創業促進・産業活性化をすべ
  きだ!」という方向へと政策が転換してきました。
  そこで、まずは平成15年2月施行の中小企業挑戦支援法により、商法の最低
  資本金規制の特例として、資本金が1円でも起業が可能となりました。
  いわゆる『1円会社』です。
  そして、平成18年施行の新会社法により、資本金が何円でもよくなるのです。

3 これからはどうなる?
  このように、1円でも株式会社が作れるようになることから、平成18年以降は
  多くの起業・創業が期待されます。
  しかしそうなると、「株式会社だから」というだけで信用されるということはなくなる
  ことしょう。

  会社の資本金がいくらあるのかを尋ねられたり、取引開始の際に決算書の提出
  が求められること等が予想されます。
  これからは上場企業でなくても、信用のために積極的に情報開示をしなければ
  ならない世の中になるかもしれないですね。

【結論】
資本金は1円でもいいのですが、信用は得るにはそれなりの金額(事業のために当面必要な額)を積むのがいいのではないでしょうか。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  会社設立はどう簡単に?  
       
  A 新会社法では会社設立が簡単になると聞いているのですが、ズバリ、どう簡単になるのですか?  
 
 
  A 平成18年の新会社法により、今までに比べて会社の設立が容易にできるように変わります!
でも、一体どこがどのように変わるのでしょうか?
今、まさに会社を設立しようとしている方にとっては、その変化の差が、会社法改正を待って会社を設立すべきか、それとも待たずに設立するか判断する上でのポイントになります。

【解説】
<<設立フローチャート>>
  発起設立の場合 (←中小企業の大半は発起設立です)
  『現状の手続き』
    1.発起人を決定する
      発起人とは、会社設立の発案者および賛同者のこと。
      登記完了まで一切の手続きを進めていく人物のことです。
            ↓
    2.類似商号の有無をチェックする
            ↓
    3.会社の基本事項を決定する
      商号(社名)、目的(事業の内容)、本店所在地、資本金(出資額)、会計
      年度、役員は誰にするのかなどは、この時点で決めておきます。
            ↓
    4.会社代表印を作る
      商号が確定したら会社代表者の印鑑を作成します。
      設立登記の際にこの代表者印の届出が必要になりますし、その後の契約
      書作成時などにも必要になってきますので、早めに注文しておくことが必要
      になります。
            ↓
    5.定款を作成する
      定款は会社の基本事項を定めた、いわば会社の憲法のようなもの。
      なお、ここで取締役・監査役を事前に選任しておけば、その後の、創立総会
      は不要になります。
            ↓
    6.引受株式数を決定する
      発起人は一人につき最低1株以上の株式を引き受けなければならなく、
      それぞれ何株を引き受けるのかはこの段階で決めます。
            ↓
    7.金融機関へ出資金を払い込む
      発起人は、引き受けた株数に該当する金額を、会社が指定した委託金融
      機関に払い込みます。
      この際に、最低でも株式会社の場合、払込み資本として、1,000万円が必要
      になります(最低資本金規制)。
            ↓
    8.株式払込金保管証明書の発行
      払い込みが完了すると金融機関は株式払込金保管証明書を発行してくれ
      ます。この証明書がないと設立登記はできません。
            ↓
    9.取締役会を開催する
      選出された取締役によって取締役会を開催します。
      まず代表取締役の選出を行い、次に本店の正確な所在地を決定します。
      最後に取締役の報酬の総額の範囲内で、各取締役の報酬を決めます。
            ↓
    10.設立登記
      設立登記申請書を作成し、登記申請します。
      原則として取締役等の設立調査から2週間以内に行います。
            ↓
    11.会社設立
      書類作成上または内容上の問題点がなく、書類が登記所に受理されれば
      会社設立となります。
      例えば、ここで会社の目的(事業内容)が抽象的すぎる場合などは、修正
      が必要になり、登記に時間がかかってしまうこととなります。
      その後、税務署・都道府県・市区町村、労働基準監督署、社会保険事務所
      などの諸官庁への届出や、銀行口座開設の手続きを行います
 
   『会社法改正後』
    1.発起人を決定する
            ↓
    「類似商号の有無のチェックは不要に!」
            ↓
    2.会社の基本事項を決定する
            ↓
    3.会社代表印を作る
            ↓
    4.定款を作成する
    「会社法改正により選任する役員が最低1人でもOKに!」
            ↓
    5.引受株式数を決定する
            ↓
    6.金融機関へ出資金を払い込む
    「最低資本金規制が撤廃され、特別な法律でなくても資本金1円からでも会社
    の設立が可能に!」
            ↓
    「払込金保管証明制度は廃止払込証明手段は残高証明でOKに!」
            ↓
    7.取締役会を開催する
    「1人取締役の会社であれば代表取締役の選出や各取締役の報酬の決定は
    不要に!」
            ↓
    8.設立登記
            ↓
    9.会社設立
    「会社の目的の包括的記載が認められるので、登記所への事前の
    目的相談は不要に!」


【結論】
このように「類似商号の有無のチェック」や「払込金保管証明書」が不要になるほか、他の手続きも簡略化されています。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  新会社法で不要になる手続き  
       
  A 会社設立の際に「類似商号調査」「目的相談」が不要になる、というのはどういうことなのでしょうか?  
 
 
  A これまでは会社設立の前に、「類似の商号がすでに登記されていないかどうか確認する」「定款に書く『会社の事業目的』について、法務局に相談に行く」といった手続きが必要でした。
それが、新会社法ではかなり軽減されます。


【解説】
1 「類似商号調査」とは?
  類似商号とは「同じ市町村(区)内の会社で同一の事業目的を有し、かつ商号が
  全く同じあるいは混同しやすいもの」のことをいいます。

  従って、これから会社を設立しようという際にはあなたの会社の本店を置こうと
  する市町村(区)内に同一の事業目的で同じ(あるいは似た)商号の会社が既に
  存在していないことを確認する必要があります。
  この確認作業を「類似商号調査」と呼びます。

2 「目的相談」とは?
  会社を設立する時には、あらかじめその事業目的を明確にして定款に記し登記
  しなければなりません。
  しかし、この「目的」が適格性に欠けるとして登記ができず、定款認証をやり直す
  ことになり、公証役場に何度も足を運ぶはめになることがあります。
  登記の際にはより具体的に書かれているか否かということが問題になります。
  例えば、「介護用品の販売」では認められませんが、「車椅子、紙おむつの販売」
  ならOK、「人材派遣」では認められませんが、「特定労働者派遣事業」ならOK、
  という具合です。

  では、とにかく具体的に記載すれば、登記は通るのでしょうか?
  実は、どこそこの法務局では通ったけど別の法務局では不可とされたということ
  が現実によくあります。

  ですから、必ず事前にあなたが会社の本店を置こうとしている場所を所轄する
  法務局に確認を取っておきましょう。
  この、事前に法務局に相談し確認をとっておくことを「目的相談」といいます。

3 法改正でどうなる?これらの手続き
  まず、法改正により、類似商号規制は撤廃され、同一地域で類似した商号会社の
  設立が可能になります。
  これまでは、新会社のオフィス設置予定地と同じ地域に商号が類似する会社が
  あったため、やむを得ず社長の自宅を本店とした・・・というような話もよく耳に
  しましたが、新会社法施行後の設立であれば、事業実態のない場所を本店
  所在地とする必要がなくなります。

  ただし、これはあくまで商業登記上の話ですので、有名企業と同一名称となる
  場合等は、商標権等の事前調査が必要となるのは、今までと変わりありません。
  また、現在の商法では類似の商号で、同一の営業を目的として同市町村内では
  登記できないとなっています。
  そこで同一の営業か否かについては、登記事項である「会社の目的」で判断して
  います。
  したがって、登記実務において「会社の目的」に係る語句の使用が厳格で、審査
  に時間と手間がかかることになります。

  ところが、法改正により類似商号規制が撤廃されれば、そもそも同一の営業か
  そうでないかの審査も必要なくなるわけですから、登記実務において、「会社の
  目的」について包括的な記載が認められることとなります。
  現在は、会社の設立の際には会社設立予定地の所轄の法務局に出向いて、
  商号や目的の調査、相談を行わなくてはならず、これは半日〜1日がかりの作業
  です。

  自分で行うのはたいへんなのでこれらを業者に頼んだ場合、報酬・日当・旅費を
  含め、コストとしては1万円〜5万円程度かかります。
  これらの手間・コストがなくなるだけでも、会社の設立はかなり楽になるというわけ
  です。

【結論】
手間・コストがなくなり、会社の設立はかなり楽になります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  「類似商号の調査」は、全く必要ないですか?   
       
  A 新会社法施行後は、「類似商号の調査」を行う必要がなくなると聞きました。
ということは、会社をつくるのが随分ラクになりますよね?
 
 
 
  A 確かに、会社をつくるのはラクになりますが、新会社法施行後も、簡単な「同一商号・誤認されそうな商号の調査」を行う必要があります。

【解説】
新会社法施行後は、法務局で類似商号を調査しなくても、会社がつくれます。
この調査は結構大変だったので、この規制がなくなれば、会社をつくるのはラクになります。
しかし、新会社法では、不正の目的での商号の使用は禁止されているので、新会社法施行後も、同一商号がないか等、調べておく必要があります。

----------------------------------------
■ 登記はできる!
----------------------------------------
    同一市町村内、同一の商号、同一の目的であっても、登記はできるように
    なります。
    これは、現行の商法にある「類似商号の規制」が廃止されるからです。
    ただし、同一の本店所在地に、同一商号の会社は登記できません。
    なお、「商号調査簿」は、引き続き法務局で無料で閲覧できる予定です。

----------------------------------------
■ 「株式会社トヨタ」は可能?
----------------------------------------
    では、類似商号の規制がなくなったので、自分の会社の名前を「株式会社
    トヨタ」にするとことができるでしょうか?
    新会社法では次のように規定しています。

    「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれの
    ある名称又は商号を使用してはならない。」(第8条第1項)

    「前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害
    され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する
    者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求す
    ることができる。」(同法第8条第2項)

    つまり、新会社法では、同じ会社名や誤認されそうな会社名を名乗ること
    は禁止されているのです。
    したがって、やましい目的で「株式会社トヨタ」と名乗ると、後で本家か
    ら訴えられる可能性があります。
   (それにしても、新会社法は条文がひらがな・口語体になったので、案外
    読みやすいですね)

----------------------------------------
■ 損害賠償を請求されるおそれあり!?
----------------------------------------
    また、不正競争防止法第4条では、「故意又は過失により不正競争を行っ
    て他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償す
    る責めに任ずる。」とも規定しています。

    つまり、「登記をすることができても、他社の商号を使用し、他社の営業
    上の利益を侵害すると、訴えられる可能性がありますよ!」と言っている
    のです。恐いですねぇ。

----------------------------------------
■ ヤフーやグーグルで
----------------------------------------
    したがって、「法務局の商号調査簿」や「インターネット登記情報提供サ
    ービス」を利用して、念のため、同一商号はないか、誤認されそうな商
    号はないか、調べた方がいいと思います。

    また、ヤフーやグーグルの検索エンジンで、予定している商号と同じ商号
    等がないかを調べてみるのも参考にはなります。

【結論】
「同一商号」や「誤認されそうな商号」はないか、
一応、調べておきましょう!
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  安く簡単にできる起業なら、どの会社?  
       
  A 起業を考えていますが、当面は自分1人で事業をやっていけるかどうかを見極めようと思っています。
新会社法を活用して、個人事業でなく会社を起こしたいのですが、「安くて簡単にできる」方法がいいのです。
新しくできたというLLPを含めてご指南ください。
 
 
 
  A 「安くて簡単にできる」ということであれば、「株式会社」よりも「合同会社」のほうがいいでしょう。
なおLLPは、会社でなく組合です。また、1人ではできませんのでご注意を。

【解説】
安くて簡単にできる起業を目指されているのであれば、「LLP」や「合同会社」が適しています。
「合同会社」の特徴について「株式会社」「LLP」との比較も交えつつお話いたします。

----------------------------------------
■特徴1 設立費用が安い
----------------------------------------
  設立費用についてですが、「LLP」は登録免許税6万円のみ、「合同会
  社」は登録免許税6万円、印紙税4万円の合わせて10万円です。

  一方、「株式会社」は登録免許税15万円、印紙税4万円、定款認証費用
  5万円の合わせて最低でも約24万円の費用がかかります。

  つまり、「LLP」をつくるのがもっとも安いですが、「合同会社」も
  「株式会社」よりはかなり安くつくることができるのです。(専門家に依
  頼すれば、司法書士報酬等の別途費用もかかります)

----------------------------------------
■特徴2 設立後の手続きが簡単
----------------------------------------
  設立後の手続きですが、「株式会社」の場合、決算公告が義務付けられて
  います。
  また、株式譲渡制限会社(第13回参照)の機関として、最低でも株主総
  会と取締役を設ける必要があります。
  その取締役の任期は最長10年です(定款への記載が必要)。
  一方、「合同会社」「LLP」については、決算公告の義務や取締役の任
  期はありません。

  上の2点の特徴から、「合同会社」が安くて簡単につくられることがおわ
  かりいただけましたでしょうか。
  それでは、合同会社のその他の特徴についても見てみましょう。

----------------------------------------
■特徴3 1人でもつくれる組織
----------------------------------------
  「株式会社」及び「合同会社」は出資者が1人でもつくることができます
  が、「LLP」は最低2人いないとつくることができません。
  どういうことかと言うと、LLPの成立に際しては、「有限責任事業組合
  契約」を締結する必要があります。

  要は、1人ではLLP契約が結べないからダメ!なのです。
  一方、「株式会社」「合同会社」なら、1人でつくることができます!

----------------------------------------
■特徴4 個人の個性を重視した人的組織 
----------------------------------------
  「合同会社」及び「LLP」は、個人の個性を尊重した人的組織なので、
  人の信用力なくしては成立しない組織といえます。
  つまり、社員(出資者)の信用力=会社の信用力です。

  一方、「株式会社」は、資本金(お金)やモノが会社の信用力を担保する
  物的組織です。
  つまり、資本金(お金)やモノ=会社の信用力です。

----------------------------------------------
□「合同会社」が「LLP」よりも優れている点
----------------------------------------------
  「LLP」は組合なので、社員(出資者)に対して報酬(給与)を支払う
  ことは難しいのですが、「合同会社」は法人なので、社員(出資者)に対
  して報酬(給与)を支払うこともできます。

----------------------------------------------
□注意点
----------------------------------------------
  「合同会社」よりも「株式会社」のほうがブランド力があり、信用力も高
  いという利点はあります。
  また「合名会社」「合資会社」も、「合同会社」同様に「安くて簡単にで
  きる」会社です(ただし知名度は低いですが……)。
  なお、個人事業のままでいるのか、会社にするのかについては税金面での
  有利・不利がありますので、ご注意下さい。

【結論】
「安くて簡単にできる」ことを最優先するなら、設立費用が10万円で済み、
決算公告の義務や役員の任期もない「合同会社」がおすすめです。 
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  株式会社をつくるメリットは?  
       
  A 新会社法がスタートすることにより株式会社の設立がしやすくなると聞いていますが、どのようなメリットがあるのかを教えてください。  
 
 
  A 新会社法スタート後に株式会社(株式譲渡制限会社)を設立する場合は、
1、類似商号・目的の調査が不要
2、確認会社を活用しなくても、資本金1円の払込みでも設立可能。
3、資本金の払込証明が、発起人の個人の通帳で可能

  (ただし発起設立の場合)
4、取締役一人から株式会社の設立が可能
になります。

【解説】
新会社法スタート後の株式会社設立のメリットは、既存の株式会社の設立と比較するとわかりやすいです。

----------------------------------------
■1 類似商号・目的の調査が軽減
----------------------------------------
   現在、株式会社を設立する場合は同一市区町村内に同じ商号が無いか、も
    しある場合は、同一目的でないかを調べる作業(類似商号の調査)が必要
    です。
   ですから、この会社名を使いたいと思っても、商号の調査をするまでは確
    定できません。
   さらに、定款に書く「目的」の表現についても、登記できる内容かどうか
    をチェックする必要があります。
   つまり、現在、株式会社を設立する場合は、自分が「この商号とこの目的
    で会社を作りたい」と思っても、調査が終わらないと確定できませんし、
    会社設立の手続も先に進められません。

   これに対して、新会社法スタート後は、類似商号の調査及び目的の調査が
    軽減されますので、極端な話、自分が思いついた商号と目的ですぐに次
    の手続(定款作成及び認証)に入れます。
   また、法務局まで調査に行く必要がありませんから、手間を省くことがで
    きます。
   ただし、有名企業と同じ商号になる場合は、今までと同じように商標権を
    侵害していないかなどをチェックする必要があります。

-------------------------------------------
■2 確認会社でなくても資本金1円の払込み
-------------------------------------------
   現行法上は、最低資本金の規制があり、株式会社を設立するには確認会社
    の制度(資本金1円から株式会社を設立できる制度)を活用しない限り、
    資本金1000万円を用意しないと株式会社は設立できません。

   これに対して、新会社法スタート後は、最低資本金の規制が完全に撤廃さ
    れますから、資本金を自由に設定して株式会社を設立することができま
    す。
   資本金を自由に決められますから、今までのように資本金が少ないから株
    式会社が設立できないといったことはなくなります。

-----------------------------------------
■3 資本金の払込証明が個人の通帳で可能
-----------------------------------------
   現行法上は確認会社の制度を活用せず、発起設立で資本金1000万円の株式
    会社を設立する場合(起業するほとんどの場合が発起設立です)、発起人
    は金融機関に資本金の金額を全て払い込む必要がありました。
   このため
   ・金融機関に払い込んでから登記が完了するまで、払込金を引き出せず資
      金が凍結してしまう。
   ・証明を出してくれる金融機関を探すのが大変。
   ・保管証明を取得するまでの時間(約1週間程度)と手間がかかる。
   といった問題がありました。

   これに対して新会社法スタート後、発起設立で株式会社を設立する場合
    は、資本金の額に関係なく発起人の「個人の通帳のコピー」に代表者が証
    明書を付す形でよくなるので、上記のような問題が無くなります。

-----------------------------------------
■4 取締役一人から株式会社の設立が可能
-----------------------------------------
   現行法上では、株式会社を設立する場合の役員の人数は最低限、取締役3
    名と監査役1名の4名となっています。
   そのため、実際は自分ひとりで会社を運営している場合でも、形式的に身
    内や友人などに取締役や監査役になってもらっている方も多いです。
   これに対して、新会社法スタート後は、全ての株式に譲渡制限が付いてい
    る会社に限ってですが、取締役一人からでも株式会社が設立できます。

   今までのように取締役を自分以外に2名連れてくる必要もないですし、監
    査役もおく必要はありません。

   株式譲渡制限会社に限るといっても、現在でも株式会社を設立する場合の
    多くは、全ての株式に譲渡制限がついている株式譲渡制限会社ですから、
    これから株式会社を設立したいと思っている方には大きなメリットになり
    ます。

【結論】
新会社法スタート後に株式会社を設立する場合は、いろいろな手間を省くことができ、手続が簡略化されます。
特に金融機関への資本金の払込と、類似商号・目的の調査が無くなったのは手間と時間短縮につながるでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  会社設立時の消費税は?  
       
  A 株式会社を作りたいのですが、第1期目から消費税の納税義務があるのでしょうか?
税務面から見て、会社設立のポイントを教えてください。
 
 
 
  A 設立1期目から消費税の納税義務があるかどうかは、事業年度の始めの日の資本金の額で決まります。

【解説】
-------------------------------------------
■1 期首の資本金で1,000万円以上判定
-------------------------------------------
   会社が消費税の納税義務があるかどうかについては、通常、2期前(基準
    期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。
   設立1期目、2期目の会社にとって、2期前というのは会社ができる前のこ
    となので、2期前という事業年度はありえません。

   では、消費税を納税義務がないのかといえば、それほど甘くはなく、法人
    については、「『新設法人』の特例」が設けられているのです。

   消費税法上の『新設法人』の定義は、次のとおりです。    

=======================
  「その事業年度の基準期間のない法人のうち、
    その事業年度開始の日における資本又は出資の
    金額が1,000万円以上である法人」  
=======================

   この資本1,000万円以上の『新設法人』に該当する場合には、1期目、2期
    目の会社でも、消費税を納税義務があるのです。

   ※ 個人については「『新設法人』の特例」の対象外なので、原則、事業
        開始の1年目、2年目の消費税の納税義務は免除されます。

--------------------------------------------
■2 会社法では最低資本金がなくなるので……
--------------------------------------------
   今は、株式会社は最低1,000万円の資本金とする必要があるので、

    株式会社
  = 事業年度開始の日の資本の金額が1,000万円以上
    = 消費税法上の『新設法人』に該当

   という流れで、「1期目の消費税の納税義務があり」と判定されます。

   ところが、会社法では最低資本金の規制が廃止されるので、株式会社の資
    本金は10万円でも、100万円でも大丈夫です。

   資本金10万円の株式会社
  = 事業年度開始の日の資本の金額が1,000万円未満
    = 消費税法上の『新設法人』に該当しない

    となれば、1期目、2期目の消費税の納税義務は、免除されます。

------------------------------------------
■3 1,000万円の対象は資本の額
------------------------------------------
   会社の設立時には、資本金及び資本準備金の額を決めることになっていま
    す。
   株主が払込み等をした財産の額の2分の1以上は資本金にしなければなりま
    せんが、資本金にしないことした額は、資本準備金にすることができます
   (会社法第445条)。

   会社設立時に1,000万円を払い込んだ場合、資本金は500万円、資本準備金
    は500万円と振り分けることができます※。
  『新設法人』の判定の対象となるのは、資本金の500万円だけです。

  ※ 設立時の定款に定めるか、発起人全員の同意により決定することにな
    っています(会社法第32条)。
 
----------------------------------------
■4 会社設立時には資本の額の決定に注意
----------------------------------------
   資本金の額が自由化されて、いくらにすべきかと考える必要が出てきま
    す。
   1,000万円の資本金にするならば、900万円の資本金にして、1期目、2期目
    は消費税の納税義務を回避するという選択は、当然アリです。
   事業にどうしても1,500万円の資金が必要となれば、800万円を資本金、
    700万円を資本準備金とすれば、同様に、1期目、2期目は消費税の納税義
    務を回避できます。

   今年度の税制改正法案が国会で決定されましたが、この消費税の「『新設
    法人』の特例」に関する改正はありませんでした。
   近い将来、改正される可能性はあるかもしれません。

【結論】
会社を設立時の資本金及び資本準備金の決定には、消費税の納税義務を考えて決めましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  5月1日に株式会社を設立したいのですが…?    
       
  A 新会社法施行により、株式会社を設立しようと考えております。
新会社法スタートの5月1日ぴったりに設立したい
と考えておりますが、可能でしょうか?
 
 
 
  A 新会社法施行と同時に(5月1日)に株式会社を発起設立するには
 1、定款認証
 2、資本金の払込
 3、会社印鑑及び決定書等の書類の準備
 4、法務局への書類提出
といった作業を全てその日に行う必要があります。
上記の作業を全て5月1日に行うのは、不可能ではないですが
とても大変です。


【解説】
-------------------------------------------
■「定款認証」は5月1日以降で
-------------------------------------------
   新会社法スタートが5月1日と決定しましたが、
   その日の会社設立は、現実的にはかなり厳しいです。

   理由は、
  「新会社法による株式会社」を設立する場合、
   最初の手続である「公証役場での定款認証」が
   5月1日以降しか行えないからです(整備法75条)。
   仮に、5月1日前に「定款認証」を受けてしまうと、
   登記申請が5月以降でも「旧商法による会社設立」
   になってしまいます。

   つまり、手続の最初のスタートである「定款認証」が
   5月1日以降しかできないので、
   その後の手続も必然的にそれ以降になってしまい、
   結果として5月1日に新会社法による株式会社を
   設立するのは、かなり難しいのです。

--------------------------------------------
■法務局・公証役場の事情
--------------------------------------------
   ちなみに、どれだけの作業を定款認証の後に行うのかというと、
   ・資本金の払い込み
   ・発起人や取締役の会議(必要に応じて)
   ・取締役・監査役の調査(必要に応じて)
   ・必要書類の作成及び押印
   ・法務局への書類提出
   です。

    これを全て、その日のうちに行うのはかなり大変です。
   またその日のうちといっても、
   公証役場や法務局は9時から17時までしかやっていませんので、
   実際は9時から17時までの間に上記の作業を行う必要があります
  (しかも、公証役場の認証の受付は、16時頃までのところが多いです)。
   さらに5月1日は法務局や公証役場も混雑が予想されますから、
   手際よく手続を進めないと時間切れになってしまいます。
   という理由で、5月1日に株式会社を設立するのは
   実際かなり大変です。

------------------------------------------
■どうしても5月1日に設立したい方は?
------------------------------------------
   どうしても5月1日に設立したい方は、
   ・定款の作成・認証
   ・資本金の払い込み
   ・発起人や取締役の会議(必要に応じて)
   ・取締役・監査役の調査(必要に応じて)
   ・必要書類の作成及び押印
   ・法務局への書類提出
   といった会社設立に必要な作業を
   全て5月1日に完了させる必要があります。
   ただ、前述したように、
  「定款認証」という最初の作業が4月中にはできないので、
   4月中にできる限りの書類の準備を全部やっておき、
   5月1日になったら一気に行うということで
   なんとか間に合わせるしかありません。

【結論】
5月1日に株式会社を設立するのは、
5月1日から会社設立に必要な作業を全て行わなければならず、
現実的にはかなり大変です。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  定款認証を電子定款で行うと4万円オトクになる?  
       
  A 現在、株式会社を設立することを検討しています。
会社設立時の定款認証を電子定款で行うと、設立費用が4万円オトクになると聞いたのですが、なぜ4万円もオトクになるのでしょうか?
また、電子定款認証は自分でもできるのでしょうか?
 
 
 
  A 株式会社設立の際に必要な定款認証という手続を電子定款を活用して行うと、従来からの紙を使う定款認証の際に必要な「印紙税4万円」が不要になります。
そのため従来の定款認証の方法と比べて、4万円節約できるわけです。
しかし、電子定款認証は、自分でできないことは無いですが、事前に電子署名を発行したり、 PDFに変換するソフトを用意する必要があり、かえって手間と費用がかかります。

【解説】
--------------------------------------------
■ 定款とは? 定款認証とは?
--------------------------------------------
 株式会社を設立する際に、まず会社のルールブックともいえる「定款」を作
 成し、認証を受けるわけですが、まずこの定款のことを説明します。

 定款とは、会社の組織や運営に関する基本原則を記した書類のことで、会社
 のルールブックともいえる重要なものです。

 定款の作成は、会社設立準備の一つのポイントになります。
 会社設立時の定款は、発起人全員によって作成され、署名または記名押印し
 て、公証人の認証を受けることが義務づけられています。
 公証人の認証を受けることを、「定款認証」といいます。

 そしてこの会社設立時に作成され、認証を受けた定款を「原始定款」といい
 ます。

 また定款というのは、会社のルールブックですから、会社設立後、その内容
 が変わる場合は、その都度変更の手続を取る必要があります。
 この定款を変更することを「定款変更」といいます。

------------------------------------------------
■ 紙を使う方法と電子媒体を使う方法(電子定款認証)
------------------------------------------------
 会社設立時に必要な定款を作成し、認証するための手続というのは、
 これまでは紙で作成し、公証役場で認証してもらうという方法しか
 ありませんでした。

 しかし、2004年3月よりフロッピーなどの電子媒体での認証も受けられる
 ようになりました。

 これを「電子定款」と言い、電子定款を活用して認証をうけることを
 「電子定款認証」といいます。

 この「電子定款」を利用する場合の特徴は、電子定款の場合は通常の紙で
 定款認証を受ける場合に必要な、定款認証印紙代4万円が不要となり、
 会社設立時にかかる費用を節約できる点です。

------------------------------------------------
■ なぜ4万円安くなるのか?
------------------------------------------------
 印紙税は、文字通り「紙」、つまり、文書に課税する税金です。
 つまり、従来からの紙を使って認証を受ける定款は文書ですから、
 印紙税がかかります。

 これに対して電子定款というのは、電子媒体を活用して認証をうけた
 定款なので、文書の扱いではなくなる(紙ではない)ため、印紙税法で
 課税対象外となり、印紙代4万円が不要になるのです。

 紙でも電子媒体でも、定款の内容は同じなのに、紙ではないからという
 理由で印紙代がかからなくなるのは面白いですね。

(下へ続きます)
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  定款認証を電子定款で行うと4万円オトクになる? 完結編  
       
  A 現在、株式会社を設立することを検討しています。
会社設立時の定款認証を電子定款で行うと、設立費用が4万円オトクになると聞いたのですが、なぜ4万円もオトクになるのでしょうか?
また、電子定款認証は自分でもできるのでしょうか?
 
 
 
  A 株式会社設立の際に必要な定款認証という手続を電子定款を活用して行うと、従来からの紙を使う定款認証の際に必要な「印紙税4万円」が不要になります。
そのため従来の定款認証の方法と比べて、4万円節約できるわけです。
しかし、電子定款認証は、自分でできないことは無いですが、事前に電子署名を発行したり、 PDFに変換するソフトを用意する必要があり、かえって手間と費用がかかります。

【解説】
------------------------------------------------
■ 電子定款認証のやり方
------------------------------------------------
 「電子定款」というと、インターネット上で認証ができるようなイメージを
 持つ方も多いと思いますが、認証を受けるには、通常の紙で定款認証を
 受ける場合と同様、公証役場に出向くことが必要です。

 具体的な認証方法ですが、作成した定款をPDF化し、作成者が
 電子証明書で電子署名をし、それをフロッピーに保存して公証役場に
 持参します。

 費用は、公証役場の手数料など約5万2千円です。
 (紙で認証を受ける場合は、この約5万2千円に印紙代4万円などをプラスした
  約9万2千円が認証費用になります。)

 公証役場では公証人が認証を行い、認証をした定款のデータをフロッピーに
 入れて返してくれます。

 電子認証を受けた定款データのみならず、電子認証済みの定款の文書が
 欲しい場合は、文書を取得したい旨を伝えると文書も受け取ることが
 できます。

------------------------------------------------
■ 電子定款認証は自分で行うのは、現実的か?
------------------------------------------------
 上記のように、電子定款認証は4万円コストが安くなり、とてもオトクな
 制度なのですが、一つ欠点があります。

 それは、自分で電子定款認証を行うことが難しい点です。

 理由ですが、まず「電子定款」を作成する場合、電子署名が必要なため、
 自分の電子証明書の発行が必要です。

 この電子証明書の発行だけで、1ヶ月ほどかかります。

 また、電子定款を作成するにあたり、PDF文書を活用するため、PDFに
 変換するソフト(アドビシステムズ社のアクロバット)を用意する必要が
 あります。

 もしこのアクロバットを持っていない場合は、購入する必要があります。

 そして、上記の電子証明書の発行及びアクロバット購入費用で約10万円
 かかってしまいます。

 このように、電子定款認証をうける準備にあたり、コストと時間と手間が
 かかってしまうので、自分でするのはあまりオススメできません。

------------------------------------------------
■ 電子定款認証は専門家に依頼
------------------------------------------------
 このように、準備にコストと時間と手間がかかる電子定款認証ですが、
 専門家に電子定款認証だけを代行してもらえば、上記の問題は解決します。

 行政書士や司法書士などは、電子署名を持っており、電子定款認証を代理で
 行います。
 その手数料も、2万円くらいが相場です。

 ですから、専門家に2万円くらい払っても、紙で行う際の印紙代4万円が
 浮くわけですから、コストとしては最終的に2万円ほどオトクになります。

 会社設立手続や書面作成を自分で行う方も、定款認証だけは専門家に
 電子定款認証を依頼された方がよいでしょう。

【結論】
会社設立時の定款認証は、電子定款認証で行うと印紙代の4万円を
節約することができます。
ただし、電子定款認証を受ける手続や準備に手間とコストがかかるので、
自分で会社を設立する場合でも、電子定款認証は専門家に依頼した方が
よいでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  電子定款の作成は、自分でもできる?  
       
  A 会社設立時の電子定款の作成は、自分でもできるのでしょうか?  
 
 
  A 電子定款の作成方法ですが、電子定款といっても単にワードなどのデータで
作成すれば電子定款として認められるわけではありません。
電子署名をする必要があるので、一般の方では正直難しいです。

【解説】
--------------------------------------------
■ 紙の定款なら4万円かかる
--------------------------------------------
 会社設立の際には定款の作成が必要ですが、
 従来どおり紙で定款を作成すると必ず収入印紙代として
 4万円の費用が発生します。

 しかし、定款を紙で作成するのではなく
 電子データで作成する(電子定款)と、印紙代がかかりません。

<参照>
 新会社法Q&A
 「定款認証を電子定款で行うと4万円オトクになる?」
   http://www.inbloom.jp/foresight/07_new_comp_act/qa.html#q63

--------------------------------------------
■ ポイントは電子署名
--------------------------------------------
 電子定款の作成方法ですが、電子署名がポイントになります。

 電子データで定款を作るというと、
 ワードなどで作って保存しておけば良いと思う方もいらっしゃるかも
 しれませんが、そうではありません。

 定款を電磁気的記録で作成した場合、
 その情報については「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置」を
 とらなければならないと定められています。

 そして法務省令では、「署名又は記名押印に代わる措置」は、
 電子署名と定めています。

 つまり、電子データで作成し電子署名を行わないと、
 電子定款とは認められないのです。

 単にワードなどで定款を作成しただけで電子署名をしない場合は、
 会社の基本情報が書かれた単なる電子データという扱いになり、
 電子定款にはなりえません。

--------------------------------------------
■ 電子定款をつくる具体的方法
--------------------------------------------
 電子定款をつくる具体的な方法ですが、
 ワードなどで作成した定款をPDF化し、作成者が「電子証明書」で
 電子署名をしてそれを保存しておくという方法になります。

 ちなみに、登記申請の際には電子署名をした定款のデータを
 フロッピーに入れて、他の書類と一緒に法務局に提出します。

--------------------------------------------
■ 電子署名の方法
--------------------------------------------
 電子署名の方法ですが、電子署名には「電子証明書」の取得が
 必要になります。

 「電子証明書」とは、印鑑証明書と同じ役割を果たすものです。

 1.電子証明書を取得するためには、まず専用のソフトウェアを購入し、
   そのソフトで申請用のフロッピーディスク等を作ります。

 2.法務局の窓口へ電子証明書の発行請求をし(郵送可)、
   その場で法務局から電子証明書発行確認票を受け取ります。

 3.電子認証登記所からネットで電子証明書を取得できます。

 この電子証明書の取得だけで、1ヶ月ほどかかります。

--------------------------------------------
■ 電子署名のコスト
--------------------------------------------
 電子証明書はタダではなく、
 証明期間が3ヶ月の場合は、2,500円の手数料がかかります。

 また、PDF化のためのソフトの購入費用などを全部入れると、
 現時点では10万円くらいはかかってしまいます。

 このように電子署名をするにあたり、
 手間と時間とコストがかかってしまうので、
 自分で電子定款を作成するのはあまりオススメできません。

--------------------------------------------
■ 電子定款は専門家に任せたほうが……
--------------------------------------------
 このように、準備に手間と時間とコストがかかる電子定款ですが、
 専門家に電子定款作成だけを代行してもらえば、上記の問題は解決します。

 行政書士や司法書士などは電子署名を持っており、
 電子署名の入った定款作成の代行を行っています。

 この場合は、発起人は電子署名をする必要はなく、
 発起人の定款作成代理人である行政書士や司法書士が電子署名すれば、
 足ります。

 この手数料は、2万円くらいが相場です。

 専門家に約2万円くらい払っても、
 紙で行う際の印紙代が4万円安くなるので、コストとしては
 2万円ほどオトクになります。

 会社設立手続や書面作成を自分で行う方も、
 電子定款作成だけは専門家に依頼した方が良いでしょう。

【結論】
電子定款作成は、電子署名の手続に手間と時間とコストがかかるので、
自分で会社を設立する場合でも、電子定款作成は専門家に依頼した方が
良いでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  株式は売ってはいけないのですか?  
       
  A 新しい会社法では「株式譲渡制限会社」という話がよく出てきます。
私の会社も「株式譲渡制限会社」らしいのですが、私の会社の株式は、他の人には売ってはいけないということなのでしょうか?
 
 
 
  A 「株式譲渡制限会社」では、会社に「売らせてくれ!」という請求さえすればちゃんと売れます。

【解説】
1 条文でみる「株式譲渡制限会社」
  新会社法の第127条では「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」
  として、株式の譲渡※は当然の権利として認められています。
   ※譲渡には売買・贈与などを含みます。
  この株式の譲渡という株主の権利を制限することを「株式譲渡制限」といいます。
  制限の仕方は「株主が株式の取引をする際には会社の承認を必要とする」という
  方法です。
  その会社の定款(会社のルールブック)を見れば、株式に「株式譲渡制限」がある
  かどうかがわかります。
  新会社法では、会社が発行するすべての種類の株式に「株式譲渡制限」がある
  会社を「株式譲渡制限会社」と呼んでいます。

2 「譲渡制限株式」を売るとき、買っちゃったとき
  「株式譲渡制限会社」の場合、株式を売る人なら「○○さんに売りたいのです
  が?」、株式を買った人なら「買ったんですけど、株主になっていいですか?」
  と会社に承認請求をしてください(新会社法136条・137条)。
  会社が「ダメ」といった場合でも、会社は自分自身でその株を買い取る、もしくは誰
  か他の買い手を紹介する、といったことをしないといけないので、金銭的な補償は
  受けられます。

3 99%は「株式譲渡制限会社」に
  「株式譲渡制限会社」は、同じ意味の「閉鎖会社」という名称でいまでもたくさん
  存在します。
  (図)旧商法「閉鎖会社」→新会社法「株式譲渡制限会社」
  現在の株式会社の99%は「閉鎖会社」であり、また有限会社も「閉鎖会社」です。
  どうしてそんなに「閉鎖会社」が多いのかというと、株式が自由に売買されると、
  嫌な人物に株式を買い占められ、経営権が乗っ取られる危険性もでてくるから
  です。
  経営者としては、「株式譲渡制限」は経営を守るためにも非常に大切なのです。

  ※上場会社の場合は、株式売買が自由に行なえるように証券取引所の規定で
    「原則、株式に譲渡制限がかかっていないこと」が上場の条件となっています
    ので、上場会社は「株式譲渡制限会社」ではありません。
  ※ライブドアの堀江社長による「上場会社なら買収されることくらい予測すべきだ」
    という発言は、「上場会社には『株式譲渡制限』がないことを肝に銘じておくべ
    きだ」という意味なのです。

  現時点で99%が「閉鎖会社」なのですから、新会社法になっても99%は「株式
  譲渡制限会社」になるでしょう。

4 「株式譲渡制限会社」の特典
  「株式譲渡制限会社」は、中小同族会社に多い会社形態なので、その実態に合わ
  せて、有限会社と同じような特典も用意されています。
    (1)「取締役会」がなくてもよく、取締役は1人でもいい
    (2)株式会社ではこれまで必須だった「監査役」がいらない

【結論】
上場していない会社のほとんどは「株式譲渡制限会社」になるでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  相続で株式が移るのを防ぐ方法  
       
  A 当社は、定款で株式について譲渡制限規定を設けています。
新会社法では、株主の相続人が会社にとって好ましくない者の場合、相続させない方法があると聞きました。
どういう方法でしょうか?
 
 
 
  A 相続させないというよりは、定款に決めることによって、株主の相続人に、相続した株式を強制的に会社に売り渡すよう 請求できるというものです。
そのためには、新会社法施行後に「相続人等に対する売渡し請求」の規定を定款に追加する必要があります。
【解説】
----------------------------------------
■ 相続は「譲渡」じゃない!
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  株式の譲渡制限規定に想定されている「譲渡」とは、「売買しますよ」、「贈与しま
  すよ」 という意思表示による株式の移転を意味し、相続のような意思表示によらな
  い株式の移転については、 株式譲渡制限規定の「譲渡」にはあたりません。
  つまり、現在の定款に株式譲渡制限規定があっても、「相続による株式の移転は
  防げない」のです。

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■ 相続人に「売渡し請求」を
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  そもそも、株式に譲渡制限を設けた趣旨は、 会社にとって好ましくない者が、株主
  とならないようにすることであり、 相続による株式の移転については、株式譲渡制
  限 規定の対象外 となっていることに不満の声が上がっていました。
  そこで新会社法では、あらかじめ定款で定めた場合、相続で 会社の株式(譲渡制
  限株式)を取得した者に対して、 「その株式を会社に売り渡すように」 と請求する
  ことができる、という制度を設けました (新会社法174条)。
  新会社法では、相続によりいったん株式が相続人に移ることを 前提として、その
  株式の売渡しを請求するという仕組みをとっています。
  ちなみに、売渡し請求を受けた株式の所有者(相続人)は、 その請求を拒むことは
  できません。

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■ 「売渡し請求」の手続きは?
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  会社は、相続により株式を取得した者に対し、相続があったことを 知った日から1
  年以内に、株主総会の特別決議を受けて 「売渡し請求」をする必要があります。
  会社は、いつでもこの「売渡し請求」を撤回することができます。
  売渡し請求された株式の所有者は、株主総会において 議決権を行使することが
  できません。
  売買価額は、会社と売渡し請求された株式の所有者との 協議によりますが、もし
  揉<めたら裁判所に対して 売買価額の決定の申立てができます。
  申立てについては、売渡し請求の日から20日以内に 行わなければなりません。
  なお、相続人への「売渡し請求」では、会社が自己株式を買取る ことになるので、
  分配可能額を超える買取りはできない、 つまり、会社の体力を超えた買取りはで
  きないという規制があります。

【結論】
新会社法施行後に定款を変更し、 「相続人等に対する売渡し請求」 の規定を設けるとことによって、 好ましくない者に株式を相続させないようにできます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  黄金株ってなに?  
       
  A 最近、新聞などで見かける黄金株とは、どういうものでしょうか?  
 
 
  A 株主総会などで、決議する事項について「NO」といえる、「拒否権」を もっている株式です。
新会社法で、拒否権をもつ株式と、そうでない株式とを発行できるようになります。

【解説】
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■ 「黄金株」だけの総会!?
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   会社の重要な事項を決めるとき、通常は、株主総会や取締役会などで承認の決
  議がされれば、決定です。
   ところが、この拒否権付の株式を発行している会社では、通常の株主総会などに
  加えて、 「拒否権付の株式をもっている株主の総会」を開いて、そこでも承認の決
  議が必要になります(会社法108条1項8号)。
   つまり、通常の株主総会などで決まった事項を、ひっくりかえすことができるので
  す。
   このような拒否権付の株式を、「黄金株」と呼んでいます。

   ※ 拒否権付の株式を発行するときに、あらかじめ、「ダブル決議」を必要とする
     事項を決めておきます。
     なんでもかんでも、「NO」といえるわけではありません。

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■ 敵対的買収で注目される!
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  この拒否権付の株式を、会社にとって友好的な株主に与えておけば、敵対的買収
  者に普通の株式を買い占められた場合でも、 敵対的買収者の提案に対して、拒
  否権を発動できます。
   たとえば、取締役の決定について拒否権付の株式を友好的な株主に発行してお
  きます。
   ライブドアや楽天に株式を買い占められ、普通の株主総会で、「取締役を総入れ
  替えする」という決議がされても、 拒否権付の株式をもっている友好的な株主が、
  「取締役の総入れ替えはダメ」といえば、普通の株主総会で決まった「取締役の総
  入れ替え」は 「無効」となります。

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■ “譲渡制限”で効果アップ!
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   新会社法では、一部の株式についても「譲渡制限」をつけられるようになります。
   「譲渡制限」とは、株式を売買などによって取得するときには,会社の承認を必要と
  するという取り決めで、 会社にとって好ましくない株主に、株式が渡るのを未然に
  防ぐ手段です。
   拒否権付の株式に「譲渡制限」をつけておくことによって、この株式の売買をの会
  社のコントロール下におけるので、 買収防止の効果が増します。
   今は、「譲渡制限」を設けると、会社が発行するすべての株式について影響があり
  ますが、新会社法で、一部の株式に譲渡制限をつけて、 他の株式にはつけないと
  いうことができるようになります。

   ※ 上場企業では、自由な株式の売買のために、株式に「譲渡制限」をつけない
     こととされていますが、一部の株式につけることができるようになれば、上場
     企業でも活用の道がみえてきます。

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■ 中小企業では、お家騒動対策として活用?
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   上場企業では、敵対的買収の防止手段として注目されていますが、中小企業で
  は、相続などの事業承継で活用されるケースが 考えられます。
   ベンチャー企業が、ベンチャーキャピタルなどから出資を受ける際に、自らの経営
  権を維持する手段として活用することも考えられますが、 そもそも、こういう株式を
  発行している会社にベンチャーキャピタルが出資してくれるかどうかは、疑問で
  す。

【結論】
「黄金株」は拒否権付の株式ですが、その活用については、いろいろと取り沙汰されています。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  種類株式とは何者?  
       
  A 新会社法では、「種類株式の取り扱いが整備されている」とある本に書いてありました。
そもそも、この「種類株式」とは何者なのでしょうか。
 
 
 
  A 会社は、内容の異なる株式を発行できます。
2種類以上の内容の株式を発行するとき、それぞれの内容の株式を 「種類株式」といいます。

【解説】
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■ “普通株式”も種類株式に!?
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   たとえば、“議決権がある株式”と“議決権がない株式”を発行する というように、
  会社は、「内容の異なる株式」を発行できます。
   このように2種類以上の内容の株式を発行する場合、 それぞれの内容の株式を
  「種類株式」といいます。

   その意味では、“普通株式”も「種類株式」の一つになります。
----------------------------------------
■ “黄金株”は種類株式!
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   他に上記で取り上げた“黄金株”も、種類株式の一種です。

   黄金株の場合、“決められた事項について拒否権がある株式”と “拒否権がない
  株式”という「内容の異なる株式」を 発行することになります。
   なお、新会社法では、9つの事項について、 異なる内容の2種類以上の株式の
  発行を認めています。
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■ 9つの種類株式
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  種類株式の内容は、次のとおりです(108条)。
  1.剰余金の配当
   → 配当を多くしたり、少なくしたりすることなど

   2.残余財産の分配
   → 清算したときに分ける財産を多くしたり、少なくしたりすることなど

   3.議決権制限株式
   → 参加できない決議事項を設けること

   4.譲渡制限株式
   → 売買などで取得したときに会社の承認を必要とすること

   5.取得請求権付株式
   → 株主がこの株式の取得を会社に請求することができること

   6.取得条項付株式
   → 一定の事由が生じたときに会社がこの株式を取得できること

   7.全部取得条項付株式
   → 株主総会の決議で会社がこの株式を全部取得できること

   8.株主の拒否権付株式
    → 特定の事項につき株主に拒否権をもたせること

   9.取締役・監査役選任権付株式
   → この株式をもつ株主で取締役や監査役を選ぶことができること

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■ 中小企業の事業承継につかえる!?
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   「種類株式」といった特別な株式を発行するのは難しそうなので、 中小企業には
  関係ないと思われる方も多いでしょう。
   ところが、事業承継との関係で、種類株式がつかえないかと いわれています。
   たとえば、 後継者以外の子どもには“議決権を制限する株式”を 与える仕組みに
  したり、 “取得条項を付して、万が一問題が生じそうなときには、その株式を取上
  げる株式”をつくるなどです。
   このように、「相続」が「争族」にならないための「予防策」としても、 種類株式の活
  用が注目されています。
  ※ 未上場会社の場合、このような特殊な株式の価額をどのように評価するの
    か、税制上の取り扱いに変化があるのか、活用にあたっては留意しましょう。

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■ 発行は「定款」で決める
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   新会社法108条の「種類株式」を発行するには、 それぞれの種類株式につい
  て “新会社法で決められた内容”と、 “発行可能な数”を「定款」で決めます。
   この定款の変更には、株主総会の特別決議が必要です。
   また、種類株式を発行していることを知らせるために、 登記が必要となります。

【結論】
9つの事項について、複数種類の株式(種類株式)を発行できます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  定款は変更してもいいですか?  
       
  A 当社は資本金1,000万円の譲渡制限株式会社ですが、商法がかわったら取締役の任期を10年に伸ばせると聞きました。
当社の定款では「取締役2年」となっているのですが、「取締役10年」と変更することはできるのでしょうか?
 
 
 
  A 株主総会の『特別決議』を経ることによって、定款の内容を変更することができます!

【解説】
定款とは会社の根本規則で、国でいえば憲法にあたるものです。
定款に定められた内容は非常に重要なことがらですから、本来むやみに変えるべきものではありません。
しかし、会社を設立した後、さまざまな情勢の変化に応じて、定款内容の変更が必要な場合があります(今回の場合は法令改正)。
そのときには「株主総会の特別決議」を行ないます。

1 株主総会の特別決議について
  新会社法309条2項で株主総会の特別決議の要件が定められています。
  それによれば「株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の
  過半数を持った株主が出席し(=定足数※)、出席した株主の議決権※の2/3
  以上に当たる多数をもって行わなければならない」としています。

  ※定足数とは株主総会の決議に必要な株主の必要出席者数のことで定款で
    緩和することもできます。
  ※議決権とは、株主が有する総会の議案の決議に加わる権利をいい、憲法でいう
    ところの選挙権のようなものです。

  例えば、総株主が3名おり、株主Aが51個、株主Bが30個、株主Cが19個の
  議決権をそれぞれ持っているとします。
  その場合、議決権の過半数以上を持った株主Aの出席だけがあれば(定足数)
  株主総会は適法に開催されます。
  仮に株主全員が出席した場合、67個分の賛成(議決権)が必要となります。
  たとえ株主Cが反対しても、株主Aと株主Bが賛成すれば定款変更などの議案が
  承認されるということです。
  ただし、定款を変更して株式の譲渡制限を設ける場合には、『特殊決議※』が
  必要となります。

  ※特殊決議とは、特別決議以上に要件の厳重な決議です。今回詳細は省略させ
   ていただきます。
  (マメ知識) 変更後の定款は、公証役場での認証を受ける必要はありません。

2 新会社法において、定款に定めておけば受けられる『恩恵』について
  株式譲渡制限会社において、定款に定めておけば受けられる恩恵で主要なもの
  をピックアップいたします。
    ・取締役の人数
       改正前、取締役は3人以上必要でしたが、1人でもかまいません。
    ・取締役の資格
       取締役の資格を株主に限定することができます。
    ・株券について
       株券は定款に定めがある場合のみ発行することができます。
       さらに株式譲渡制限会社については、株主から請求がある時までは株券
       を発行しないことができます。
    ・会計参与の設置
       定款で会計参与を設置する旨を定めることができます。

【結論】
新会社法スタートに合わせて、定款の各種内容の変更をお勧めします!
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  定款の提出を求められましたが…  
       
  A 建設業を営んでいます。
今回、建設業許可申請をするにあたって定款の提出を求められました。
その際、会社の設立時に公証役場で交付を受けた「会社保存用の定款」を出せばよいのでしょうか?

設立時と比べて、定款の内容がかなり変わってしまっているのですが…。  
 
 
 
  A 提出先に問い合わせて、「どのような形式での提出を求めているのか」を確認し、先方の求めにあった形式の書類(定款+α)を提出しましょう。

【解説】
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■ そもそも、定款とは何か?
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  会社の組織、運営に関して根本的な規則を定めたものです。
  会社のルールブックといえます。
  定款に記載する内容は次の3つにわかれます。
   ● 必ず定めなければならない事項(絶対的記載事項)
   ● 会社に当てはまる要件がある場合は記載が必要な事項(相対的記載事項)
   ● 記載は会社の任意である事項(任意的記載事項)
  会社の運営は、原則として、これら定款の記載内容にのっとって行うことになり
    す。
  ちなみに、新会社法での絶対的記載事項は次の5つです(27条)。
   ・目的
   ・商号
   ・本店の所在地
   ・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
   ・発起人の氏名または名称および住所
  なお、新会社法施行による恩恵(取締役1名でもOK、役員の任期を10年にできる、
  等)を受けるには、定款にその旨を記載することが必要になります。
  そのため、新会社法施行後は、改めて定款の重要性が認識されることになるでし
  ょう。

----------------------------------------
■ 定款記載事項の変更は株主総会で!
----------------------------------------
  定款は会社設立時に発起人が作成し、公証役場で認証を受けます。
  その際、定款の謄本が会社宛に交付されます。(これを『原始定款』といいます)。
  そして、定款の規定は後から変更することができます。
  その場合は、株主総会の決議(原則、特別決議)により変更することになります。
  例えば、会社の名前を変えたい、会社の目的を追加したい、という時には、まずは
  株主総会を開催して定款の変更を行なわなければなりません。
  その上で、登記を行うことになります。
  ※合名会社、合資会社、合同会社の場合、公証役場での認証は不要です。

----------------------------------------
■ 定款の提出を求められましたが……
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  さて、このように会社にとって大切なルールを決めてある定款なので、官公庁への
  許認可申請や、会計監査など、様々な場面で提出を求められます。
  そこで困ってしまうのが、先に述べた『原始定款』を出すのでいいのか?ということ
  です。
  『原始定款』は公証人の認証を受けているのでもっともらしいのですが、これは
  設立時の会社のルールを表しているにすぎません。
  その後、定款の内容に変更がある場合には、一体どうすればよいのでしょうか?

----------------------------------------
■原始定款+株主総会議事録=今の定款
----------------------------------------
  定款の内容を株主総会で変更した場合、再度公証人の認証を受けることはありま
  せん。
  従って、「会社の今の定款」を証明するものは、
  「原始定款」
      +
  「設立から今までのすべての定款変更決議の株主総会議事録」
  ということになります。
  そのため、登記と関係のない定款変更(例えば営業年度等)をした際の 「議事録」
  も、きちんと作成し保存しておく必要があります。

----------------------------------------
■定款データを作っておこう
----------------------------------------
  しかし、「原始定款」+「総会議事録」では、今の定款がどうなっているのかをぱっ
  と見渡せません。
  従って、「原始定款」+「総会議事録」をもとに書き直した最新の定款データの作成
  をお勧めします。
  その場合、「原始定款」に直接修正を施す方法も考えられますが、それでは大切
  な「原始定款」が傷んでしまいます。
  ワード等で定款の電子データを作成し、それを常に最新の状態にアップデートして
  いく方法をお勧めします。

  ※ なお、平成16年3月1日より、電子定款認証制度が一部の公証役場でスタート
    しています。
    電子文章(FD保存文章)を公証役場の中でも指定公証人がいるところに持参
    することにより、収入印紙代4万円が不要となる制度です。

----------------------------------------
■ 提出先に確認しよう
----------------------------------------
  ということで、定款の提出を求められたら、「原始定款」+「総会議事録」+「最新定
  款データ」を提出するのが優等生的な対応といえましょう。
  ところが、定款の提出を求める人は、それぞれ確認したいポイントが異なります。
  場合によっては、会社の今までの総会議事録をどさどさ持ってこられても困るだけ
  なのです。
  大ざっぱに言いますと、次のようになります。

  ● 会社が適法に設立されていることの確認が目的の場合
     ・・・「原始定款」のみ
  ● 会社の現在のルールを確認することが目的の場合
     ・・・アップデートした電子データ
   (データの真性を担保するため、原本と相違ない旨を書き、代表者が記名押印す
       る→これを“原本証明”といいます)
  ● 会計監査等、定款の精査が目的の場合
     ・・・「原始定款」+「総会議事録」+アップデートした電子データ

  提出先に問い合わせて、「どのような形式での定款提出を求めているのか」
  を確認し、先方の求めにあった形式の書類を提出するようにしましょう。
----------------------------------------
■ まとめ
----------------------------------------
  ● 「会社の今の定款」を証明するものは、「原始定款」プラス、「設立から今まで
    のすべての定款変更決議の株主総会議事録」。
  ● ワード等で定款の電子データを作成し、それを常に最新の状態にアップデート
    しておくと便利。
  ● 提出先に確認した上で、先方が求める形式の書類を提出しましょう。

【結論】
まずは定款の保存と、定款変更時の議事録の作成をがんばりましょう。

 
      ▲(このページの先頭へ)  
  議決権を与えたくない!  
       
  A 株主に、株主総会における議決権を与えないことができると聞きましたが本当ですか?
口うるさい株主の方に議決権を与えたくないので、とてもありがたい制度で
す。
ぜひともわが社でもそうしたいのですが。
 
 
 
  A 議決権を与えないことは可能です。
そのためには、定款(会社のルールブック)にその旨を書かなくてはなりません。

【解説】
株主は、株主総会において決議事項に賛成したり反対したりと、いわば会社に
とっては重要だけれどもこわい「ご意見番」といったイメージです。
ところが、この株主総会で決議事項に賛否をしめす権限(議決権)の、全部、
または一部を与えないことができます(議決権制限株式)。
これはベンチャー企業など、経営資金を調達するため多数の株式を発行する会
社が、オーナーの持株比率低下により経営が不安定になるのを防止するため
に、よく使われる手段です。

----------------------------------------
■議決権制限株式のつくり方
----------------------------------------
  しかし簡単に議決権のない株式が発行できるかというと、そうではありま
  せん。
  これについては会社のルールブックである定款に、その旨を書かなくては
  なりません。
  つまり、あなたの会社の定款にその旨が書かれていなければ、まずは定款
  の変更をすることが必要なのです。
  この定款変更には株主総会の承認(特別決議)が必要です。

  ですから、「口うるさい株主の方に議決権を与えたくない」とのことです
  が、まずはその口うるさい株主の方へ議決権制限株式を発行してもよいか
  どうかのご意見伺いが必要、ということになります……。

  ちなみに、議決権制限株式は、配当を優先的に支払うという条件(=優先
  株)とセットにする場合が多いです(昔はセットでなければいけませんで
  した)。
  なお、このような株式を発行する場合は、株式の内容を登記しなければな
  りません。

----------------------------------------
■新会社法では議決権制限株式が無制限に!
----------------------------------------
  議決権制限株式は現行商法でも発行が可能です。
  ただし、発行済株式総数の2分の1以下の発行に制限されています。
  新会社法では、株式譲渡制限会社であればこの発行限度に関する規制が撤
  廃されます。
  また、公開会社が2分の1を超えて発行した場合、直ちに2分の1以下に
  是正しなければいけないけれども、発行はとりあえず有効という取扱いも
  明確化されました。
  つまり、新会社法に施行後は、今よりも議決権制限株式が発行しやすくな
  るのです。

【結論】
議決権制限株式を発行するには株主総会決議が必要なので、まずは、その「口うるさい株主」という方にも納得してもらいましょう。  
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  株式会社の登記はどうなる!?  
       
  A 株式会社を営んでいます。会社法で、株式会社の「登記簿謄本」も 変わるそうですが、何かしなくてはいけないのでしょうか?  
 
 
  A 整備法によって、今の株式会社の定款や登記簿謄本は、<会社法の株式会社の定款や登記簿謄本とみなす>規定が、つくられています。
会社法の施行後は、株式会社の登記も「会社法仕様」になりますが、ほとんどの場合は、会社が手続をしなくても登記官の方で、修正してくれます。

(注)「整備法」
   →会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

【解説】
----------------------------------------
■ 登記簿謄本は、自動的に修正される
----------------------------------------
  現行の株式会社の登記は、会社法の株式会社の登記とみなされます。
  会社法では、登記する事項が変わるので、「会社はなにか手続をしなければなら
  ないのか」と疑問に持つところですが、今の登記簿謄本をみて、修正箇所の判断
  がつくところは、登記官の方で、修正(職権による登記)してくれます。

----------------------------------------
■ 要チェック! 新しい登記事項
----------------------------------------
  一般の中小企業にとって、会社法による大きな改正点の一つが、「取締役」や「取
  締役会」、「監査役」といった 会社の機関が、選べるという点です。
  現状、株式会社は、すべて「取締役会」を設けなければなりませんが、 会社法の
  施行後は、取締役会があったり、なかったりと会社によって変わってきます。
  そこで、登記簿謄本を見れば、会社がどのような機関を選択しているかわかるよ
  に、登記事項も変更されます。
  今の株式会社は、登記官の職権で、会社法の施行とともに「取締役会が設置され
  ている会社」と登記されます。
  職権で登記される事項について、一般の中小企業に関係するものをピックアップ
  すると、次のようになります。

***********************************************
  【職権で登記される事項】
  ・取締役会設置会社であること
  ・監査役設置会社であること
  ・株券を発行する会社であること(注)
    株券を不発行とする旨の登記がされている場合を除く。   
  ・支店所在地における登記
    商号や、本店の所在地、支店の所在地のみの登記となり、簡略化される。
  ・登記事項の呼び名の変更
    資本の額 → 資本金の額
    発行する株式の総数 → 発行可能株式総数
    名義書換代理人 → 株主名簿管理人  など
***********************************************

(注)株券を不発行とする旨の登記がされている会社は、その旨が、削除されます。
   会社法では、株券不発行会社が原則になるためです。

----------------------------------------
■ 6ヶ月以内に登記が必要な場合も!
----------------------------------------
  登記すべき事項のうち、現状の登記簿謄本からわからない事項は、会社が登記
  手続きを行うことになります。
  たとえば、種類株主総会の決議が必要な事項を定めている場合は、「種類株式の
  内容」や「発行可能種類株式総数」の登記が必要になります。
  この場合の登記手続を行う期限は、会社法の施行日から6ヶ月以内です。
  6ヶ月より前に他の登記をするときは、その登記と同時に行う必要があります。

  「大会社」「種類株式などの特殊な株式を発行する会社」「新株予約権を発行する
  会社」は、該当事項があるか注意が必要です。
  しかし、一般の中小企業には、ほとんど関係がないでしょう。

【結論】
特別なことをしていなければ、一般の中小企業の場合、登記官の職権により自動的に登記簿謄本の修正が行われます。 登記手続きは必要ありません。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  議事録の記載事項が変わった?  
       
  A 定時株主総会を終えました。
総会議事録の作成方法で注意すべき点を教えてください。
 
 
 
  A 従来の記載事項に加えて、出席役員の氏名や名称、議事録作成者など、議事録への記載事項の詳細が、会社法施行規則で決められています。
また、税務的な立場からも、会社の租税回避行為の判断で、議事録は大切な意味を持ちますので、自分の会社の場合、型どおりの表現でいいか検討しましょう。

【解説】
--------------------------------------------
■ 定時株主総会の議事録の記載事項
--------------------------------------------
 株主総会の議事録の記載事項は、会社法施行規則72条に掲げられていま
 す 。

 具体的には、次のとおりです。

 ◆株主総会の開催日時、開催場所

 ◆議事の経過の要領及びその結果

 ◆出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名又は名称

 ◆議長の氏名

 ◆議事録の作成を行った取締役の氏名

 ◆会社法で総会にて報告等すべきとされたものなど、一定の規定に従って述
  べられた意見や発言の内容

 ◆総会の決議や総会への報告が省略される場合の一定事項

 このように、書くべき事項が決められたので、それにのっとった形で議事録
 を作成することをお勧めします。
 ちなみに、取締役会議事録の記載事項は、会社法施行規則101条にありま
 す。

--------------------------------------------
■ 計算書類の名前も変わった
--------------------------------------------
 定時株主総会の場合、承認を受ける計算書類の名前も変わりました。
  <今までの一般的な書き方>
   営業報告書により説明報告し、次の書類を提出してその承認を求めた。
     貸借対照表、損益計算書、利益処分案(または損失処理案)

  <会社法施行後、5月以降の一般的な書き方>
   事業報告により説明報告し、次の書類を提出してその承認を求めた。
     貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表

--------------------------------------------
■ 株主総会議事録の記載例
--------------------------------------------
 株主総会議事録の一般的な記載例をご紹介します。

       ○○株主総会議事録

 1.日 時  平成18年○月○日 午前○時

 2.場 所  東京都××  当社本店会議室

 3.出席者  発行済株式の総数  ○株
         この議決権を有する総株主  ×名
         この議決権の総数  ○個
         出席株主数(委任状出席を含む) ×名
         この議決権の個数  ○個

 4.議長  代表取締役 ○○ ○○

 5.出席役員  代表取締役 ○○ ○○
              取締役 ○○ ○○
              取締役 ○○ ○○
              監査役 ○○ ○○

 6.会議の目的事項並びに議事の経過の要領及び結果議長は開会を宣し、
   本日の出席株主数及びその議決権の数を上記のとおり報告し、
   本総会は適法に成立した旨を述べて、議案の審議に入った。

    第一号議案 ×× の件
     ・
     ・
     ・

 7.閉会
    議長は、午前○時をもって閉会を宣言した。

 以上、上記議事の経過及びその結果を明確にするため、
 この議事録を作成し、議長及び出席取締役がこれに記名押印する。※

 平成18年○月○日

  株式会社××   ○○株主総会において

   議長・議事録作成者  代表取締役 ○○ ○○
                    取締役 ○○ ○○  ※
                    取締役 ○○ ○○  ※

 ※出席取締役の株主総会議事録への署名または記名・押印は、
  会社法では求められていません。
  ただし、会社の定款で出席取締役の議事録への署名または記名・押印を
  求めているケースが多いので、本記載例は、それによっています。

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■ 議事録は、会社経営の証
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 身内だけでつくった会社が議事録を作成するときは、登記で必要な場合が
 多いでしょうが、今後は、税務的にもその意味の重要性が増してくるでしょ
 う。
 というのも、特殊支配同族会社の「役員給与の損金不算入」という
 税制改正で、株主や役員の「実質性」が問われてくるからです。
 この特殊支配同族会社に該当するかどうかは、同族関係者以外の株主や
 役員が、「モノをいう株主」「モノをいう役員」であるかが問われます。

 つまり、会社の経営方針の決定に、どれだけ参加しているかということで
 す。
 議事録は、会社の経営方針の決定を審議した「証」ですので、役員や株主の
 「実質性」を主張するならば、議事録に、審議の経過などを省略せずに書き
 留めておくことも必要でしょう。

【結論】
形式面では、出席役員の氏名や名称、議事録作成者なども、総会議事録に記載することになりました。
実質面では、会社の経営方針の決定を、議事録をとおして見るケースも増してきますので、結果のみならず、審議内容がわかるようにしましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  内部統制・日本版SOX法と中小企業の関係  
       
  A 最近、テレビや新聞などで『内部統制』や『日本版SOX法』という言葉を
よく見かけますが、中小企業でも関係あるのでしょうか?
 
 
 
  A 『内部統制』も『日本版SOX法』も上場しない中小企業にとって直接関係はありませんが、対応しなければならない会社もあります。

【解説】
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■ 『内部統制』とは
--------------------------------------------
『内部統制』とは端的にいうと、
「会社が適正な業務を行うための体制」のことです。

内部統制を作るための具体的な作業としては、
業務を「文書化」して「標準化」することです。
これにより、透明性のある業務体制を作ります。

※ 内部統制の定義は次の通りです。
「基本的に、
 1.業務の有効性及び効率性、
 2.財務報告書の信頼性、
 3.事業活動に係わる法令等の遵守、
 4.資産の保全
 といった一定の目的の達成のために、業務に組み込まれ、
 組織内のすべての者によって遂行されるプロセス」
(「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準案」より)

内部統制は、不祥事の防止だけでなく、健全に企業が
成長していくための土台、経営力の基礎となるものであり、
企業価値の維持・増大につながるものです。

会社法により、大会社と委員会設置会社は、内部統制に責任を負います。

--------------------------------------------
■ 『日本版SOX法』とは
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『日本版SOX法』とは、内部統制の強化を目的としたアメリカの企業改革法(SOX法/サーベンス・オクスリー法)の日本版です。

ただ、『日本版SOX法』という法律ができたのではなく、
今年成立し、来年施行される『金融商品取引法』の中にある
「内部統制」の部分が『日本版SOX法』と呼ばれています。

『日本版SOX法』の特徴は、「内部統制の構築・整備」、
「内部統制報告書の作成」などです。

金融商品取引法により、上場企業とその連結子会社は、
内部統制に責任を負います。

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■ 『内部統制』と『日本版SOX法』の関係は?
--------------------------------------------
『内部統制』と『日本版SOX法』は、ほぼ同じことを指していますが、
『内部統制』は一般概念であるのに対し、『日本版SOX法』は
法律の一部分の通称です。

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■ 取引先の選別
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大企業は内部統制を整備しているので、取引先の選別手段として、
中小企業の内部統制の整備の有無は問われてくるでしょう。

たとえば、大企業の作る製品に何か問題が起きた場合、
原因が下請け会社の部品だったとしても、
世間的には大企業が責任を問われます。
大企業が内部統制のしっかりした取引先を選ぼうというのも必然です。

「御社の内部統制はいかがですか?」と聞かれたときに
「それって何ですか?」となることだけは避けるべきでしょう。

--------------------------------------------
■ 株主からの訴訟
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中小企業でも同族経営の場合、株主代表訴訟はよくあります。

経営上の仲違いや後継問題のもつれなどで株主同士がもめた場合、
経営陣から追われた側が、「社長の法令違反」などのあら探しをし、
経営陣を訴えるのです。

それを防ぐためにも、内部統制を整備しておく必要があります。

【結論】
会社法および金融商品取引法上、中小企業にとっては、『内部統制』も
『日本版SOX法』も直接関係はありません。
しかし、取引先の選別や株主訴訟の対策として検討はしなければなりません。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  利益処分案廃止で、総会議事録は?  
       
  A 定時株主総会で、「配当」と「別途積立金の積立て」の決議を
とりたいと思います。

以前は、利益処分案に書いて、決議をとっていたのですが、会社法下では、
議案や議事録の記載を、どのようにすればいいでしょうか?


資本金1,000万円の非公開会社で、会計監査人は設置しておりません。
 
 
 
 
  A 計算書類承認の件とは別の議案で、「剰余金の処分の件」として、
「配当」と「別途積立金の積立て」の決議をとります。


【解説】
--------------------------------------------
■ 利益処分案がなくなった
--------------------------------------------

以前は、次の利益処分案を添付して、これについて、株主の承認決議をとれば、「配当」や「積立金の積立て」の決議になりました。
 ―――
【利益処分案】

 当期未処分利益    ××

 これをつぎのとおり処分します。

 利益準備金      ××
 配当金        ××
 (1株当たり ××円)
 別途積立金      ××

 次期繰越利益     ××
 ―――

それが会社法下では、利益処分案がなくなったので、
剰余金の処分について、計算書類の承認とは別に
一つ一つ議案を設け、決議をとる必要があります。

-------------------------------------------
■ 計算書類の承認 ◇議事録記載例◇
-------------------------------------------

では、まず、貸借対照表などの計算書類の承認決議の
議事録の記載例をご紹介します。

 ―――
 第1号議案  第7期(平成18年6月1日から平成19年
        5月31日まで)計算書類の承認の件

  議長は、本議案について概要を別添資料に基づき
 説明のうえ提案し、その賛否を議場に諮ったところ、
 満場一致をもってこれを承認可決した。
 ―――

 ※計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等
  変動計算書、個別注記表をいいます
  (会社法435条2項、会社計算規則91条1項)。


--------------------------------------------
■ 配当、積立金の積立て ◇議事録記載例◇
--------------------------------------------

次に、配当と積立金の決議について、議事録の記載例を
ご紹介します。
なお、配当は、金銭の配当とします。

 ―――
 第2号議案 剰余金の処分の件

  議長は、次のとおり剰余金の配当および別途積立金の
 積立てを行いたい旨を述べ、その理由を説明したあと、
 議場に諮ったところ、満場一致をもってこれを承認可決した。
        
 1.期末配当に関する事項

 (1)株主に対する配当財産の割当てに関する事項
    およびその額
 
   当社普通株式1株につき 金××円
   配当金の総額 金××円

 (2)剰余金の配当が効力を生ずる日

   平成19年7月○日


 2.剰余金の処分に関する事項

 (1)減少する剰余金の項目およびその額
 
   繰越利益剰余金  ××円
   
 (2)増加する剰余金の項目およびその額
  
   別途積立金  ××円
  ―――


--------------------------------------------
■ 会社法の条文で確認しましょう
--------------------------------------------

剰余金の配当に関し、その都度、株主総会で決議すべき事項は、
次のとおりです(会社法454条1項)

1.配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び
  帳簿価額の総額

2.株主に対する配当財産の割当てに関する事項

3.当該剰余金の配当がその効力を生ずる日

 ※効力の生ずる日とは、一般的には株主総会の翌営業日に
  なります。

 ※※税務申告書の作成との関係で、わかりやすくするために
   上記以外に、配当金の原資や配当の基準日などを決議
   することもあります。
  
 【追加する事項の例】
  配当金の原資       利益剰余金 ××円
  剰余金の配当の基準日  平成19年5月31日


配当以外の剰余金の処分に関し、株主総会で決議すべき事項は、
次のとおりです(会社法452条、会社計算規則181条1項)。

 1.増加する剰余金の項目
 2.減少する剰余金の項目
 3.処分する各剰余金の項目に係る額


-----------------------------------------------------
■ 「配当にともなう準備金の積立て」は?
-----------------------------------------------------

配当にともなって、その配当の原資によって、資本準備金や
利益準備金を積立てる必要があります。

しかし、積立額の計算方法は法令で決められており、
それにより、計算すれば、積立額は確定しますので、
株主総会で決議をとる必要はありません。
 
 
 ※準備金の積立ても、剰余金の処分に関する事項ですが、
  「株主総会の決議を経ないで剰余金額の増減をすべき場合」として、
  「法令等により剰余金額の増減をすべき場合」が掲げられています。
 (会社法445条4項、会社計算規則45条、同規則181条2項)。

-----------------------------------------------------------------------
【結論】
-----------------------------------------------------------------------
計算書類の承認とは別議案で、「剰余金の処分の件」として、
「配当」や「積立金の積立て」の決議をとります。

なお、「配当にともなう準備金の積立て」は、株主総会決議を
とる必要はありません。
 
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  資本金を減らすとお金が増える?  
       
  A 私は、資本金1,000万円の株式会社を営んでいますが、新会社法を機に、資本金を100万円に減らしたいと考えています。
資本金が1,000万円ということは、会社のお金も1,000万円あるはずですから、資本金を減らすことであまった差額の900万円を未払金の支払いにあてたいと考えていますが、いかがでしょうか?
 
 
 
  A 新会社法では、最低資本金制度がなくなります。資本金を減らし、資本金100万円の株式会社にすることもできます。これを「減資」といいます。
しかし、資本金が1,000万円だからといっても、必ずしも会社のお金が1,000万円ある訳ではありません。
仮に1,000万円あったとしても、資本金はもともと株主さんのお金です。減らした資本金は株主さんに返さなければいけません。
つまり、資本金を減らしたからといって、会社のお金が増えるわけではありません。

【解説】
1 「資本金」とは?
  会社をつくる際に、株主さんから出資を受けます。この出資金のことを「資本金」と
  よんでいます。
  会社は資本金を「もと手資金」として、商品や備品の購入したり、経費の支払いを
  します。
  つまり、必ずしも決算書にのっている資本金の金額だけ、会社にお金があるとは
  限りません。
  ※資本金は、本来は株主さんのお金です。借入と違って、株主さんから返してと
    いわれても、会社は返す義務はありません。
    資本金の多い会社に安心感を抱くのは、会社の財産が「返さないでいいお金」
    から成り立っているからなのです。

2 「資本金」は記録なのだ!
  資本金はいろいろな形で使われているので、会社に資本金に見合うお金はあり
  ません。
  しかし、資本金の分は「最初に、株主から出資を受けた金額」、いわば「株主の
  持分だ」ということを示すために、決算書には「資本金1,000万円」という記録を残し
  ておくことになっています。
  そうしないと、当初、株主さんから出資を受けた金額がわからなくなってしまうから
  です。

3 資本金を減らすメリットは?
  新会社法で、資本金1,000万円の株式会社が、「減資」して資本金100万円とする
  こともできるようになります。
  どのようなメリットがあるのでしょうか?
  代表的なケースを2つ、ご紹介しましょう。
    <ケース 1>
      株主さんにお金を渡せます。
      お金が余っている会社は、「株主さんがくれたお金が多いので出資金を
      返金します」ということができるのです。
      これを、「有償減資」とよんでいます。

    <ケース 2>
      累積赤字が多い会社は、減らした資本金と赤字を相殺して、累積赤字を
      消すことができます。
      これにより、決算書の見栄えはよくなります。
      ただし、会社は赤字と資本金を消すので、株主さんに返金する余裕はあり
      ません。
      お金のやりとりはせずに、決算書の科目区分のみを変更する方法です。
      これを、「無償減資」とよんでいます。

  なお、減資は、株主さんだけでなく、会社をとりまく関係者にとっても影響のある
  ことなので、株主総会の開催や債権者への連絡など、一定の手続きが法律で
  決められています。
  減資のやり方によっては、税務上の問題も出てきますので、注意が必要です。

【結論】
資本金を減らしても、会社のお金は増えません。他のメリットを考えて検討しましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  配当をあげたくない!  
       
  A 株主に議決権を与えないことができるのと同じように、株主に配当を受ける権利を与えないようにすることはできるのでしょうか?  
 
 
  A それはできません。株主から「配当を受ける権利」と「残余財産の分配を受ける権利」は、制限はできますが、すべてを奪うことはできません。

【解説】
新会社法105条第1項には、次の3つの株主の権利が明記されています。
1 剰余金の配当を受ける権利
2 残余財産の分配を受ける権利
3 株主総会における議決権
そして新会社法の同じ条文の第2項には「株主に前項第一号及び第二号に掲げ
る権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。」とありま
す。
つまり、「配当を受ける権利」と「残余財産の分配を受ける権利」は最低限守
ってあげなければならないのです。

----------------------------------------
■なぜ「配当を受ける権利」は奪えない?
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  なぜ「配当を受ける権利」は奪えないのかというと、株式会社は「営利を
  目的とした法人である」という大前提から考えると、配当を受ける権利は
  「営利目的」であるはずの株式会社にとって欠かせない株主の権利だとい
  えるからです。

----------------------------------------
■なぜ「残余財産分配請求権」は奪えない?
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  法律上「会社の所有者は株主」なので、会社がつぶれた場合、そこに残っ
  た財産は株主の間で分配されます。
  なぜなら、会社はそもそも株主のモノなので、会社が存在しなくなれば、
  そこにあったものは株主に返すべきだからです。
  こういう観点から考えると、残余財産の分配を受ける権利がない株主とい
  うのは、「会社を所有していなかった株主」という法律上矛盾した存在が
  生まれることになります。

----------------------------------------
■まとめ
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こうした理由で、「配当を受ける権利」と「残余財産の分配を受ける権利」は奪ってはならない、仮にそのようなことを定款に書いても、そのような定款は無効になるのです(定款自治の限界)。
なお、議決権については、定款で定めれば、与えなくても構いません。
  
【結論】
議決権制限株式はアリですが、無配当株式はナシです。   
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  配当がいつでもできる!?   
       
  A 配当が、年に何回もできるようになると聞きました。
会社で持っている土地を売って、その財源をもとに期末を待たずして株主に配当することはできますか?
 
 
 
  A できます!
期中でも、原則、株主総会の決議で、いつでも配当できるようになります(454条)。
期中の利益分もその配当にまわせますが、「純資産額が300万円以上でないと、配当できない」という財源の規制が新たに設けられます(458条)。
※純資産額・・・貸借対照表の右下、資本の部の金額です。

【解説】
今回は、儲かっている会社が、会社に溜まった財産を株主に分配(配当)するときの話です。
配当は、「剰余金の分配」として規定が整理されています。
今までは、「定時株主総会の決議」「定款に中間配当の定めのある会社の中間配当」と、年に1回〜2回しか、配当できるチャンスはありませんでした。
新会社法スタート後は、期中、決算手続に準じた手続を行うことにより、いつでも株主総会の決議によって配当できるようになります。
※中間配当制度と同様の制度は残ります。
※決議する機関を取締役会にすることもできます。
 ただし、これは大会社を想定した制度です(459条)。

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■期中で儲かった分も配当に!
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    どんな会社でも配当できるわけではなく、配当できる金額(分配可能額)
    の計算方法が、決められています。
    新会社法では、「期中でも配当できる仕組み」に変更されたので、この計
    算の方法も変わります。

【計算方法】
   期末の貸借対照表の純資産額をベースに、 期中の剰余金の変動を加算減
    算して、配当を決議した日の限度額を計算する方法になります。
    分配可能額の基準時が決算期でなくなったわけですから、当期に生じた利
    益分も配当にまわせます。

----------------------------------------
■オーナー会社でも配当?
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    配当は、現金などの会社の財産が流出するので、会社の資金繰りを考える
    と、考えにくいという指摘もあるでしょう。
    対象は、あくまでも資金的な余裕のある会社です。
    今後、事業を縮小する傾向にある会社、自社株対策の必要性を感じてい
    る会社※、オーナーに資金が必要な場合で、会社に余分な資金を眠らせて
    おくならば、配当を検討する意義はあるでしょう。
    なお、現金による配当のほかに、現物配当も認められます。

    ※売上規模や従業員数の大きい会社では、自社株の評価をする場合、直前
    の配当が逆に自社株の評価を引き上げるケースもあります。 臨時的な配
    当として処理するか、長期的な計画のもとでお考えください。

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■まとめ
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株主総会の決議で、期中、いつでも配当ができるようになります。
分配可能額の計算は、期中の利益分を取り込めるなど、新しい計算方法が決められています。
ただし、純資産額が300万円以上でないと配当できません。


【結論】
株主総会の決議で、期中、いつでも配当ができるようになります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  利益処分案がなくなる!?  
       
  A 新会社法がスタートしたら、利益処分案がなくなると聞きました。
法人税の申告のときに添付する決算書もかわるのでしょうか?
 
 
 
  A 今までの利益処分や損失処理に関する書類ではなく、「株主資本等変動計算書」という書類を作成することになります。
法人税の確定申告書にも、この書類を添付することになる見込みです。
 
【解説】
会社は、毎期、「損益計算書」「貸借対照表」「利益処分案」といった決算書(計算書類等)をつくって、株主総会でその承認を受けなければなりません。
ところが、会社法では、このうち「利益の処分や損失の処理に関する手続」の規定がありません。
その代わりに、新たに「株主資本等変動計算書」という書類の作成が義務づけられます。

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■すべての会社に影響が!
----------------------------------------
    株式会社だけでなく、有限会社と名のり続ける会社、合同会社、合資会
    社、合名会社もすべて同じ取扱いになります。
    なお、この取扱いは、会社法の施行日(来年5月頃予定)後に決算をむかえ
    る会社から適用になります。
    来年5月以後に決算をむかえる会社については、新しい様式での作成とな
    りますので、注意が必要です。

----------------------------------------
■「利益処分案」がなくなった理由
----------------------------------------
    配当や資本の部の変動、役員賞与など、現状、「利益処分案」により定時
    総会で決議している事項を、会社法では、それぞれ別々の手続として整理
    されているので、利益処分の規定は不要になったものと考えられます。
    また、配当などは、いつでも行うことができるように改正されるので、株
    主の持分の変動の状況がわかるような書類が望ましいとされたわけです。

----------------------------------------
■新しい決算書(計算書類等)は?
----------------------------------------
    これにより、決算書(計算書類等)とは、次のような書類になります。

◇現状
  貸借対照表、損益計算書、利益処分案又は損失処理案、
  営業報告書、附属明細書

◇来年5月(見込)以降
  貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、
  事業報告、附属明細書

    営業報告書は、事業報告に名前がかわります。
    もっとも、営業報告書と附属明細書は、法人税の申告書には添付しなくて
    いいので、株主総会が身内ですむような会社のほとんどは、つくっていな
    いと思いますが・・・。

----------------------------------------
■まとめ
----------------------------------------
すべての会社について、「利益処分案」や「損失処理案」はなくなり、「株主資本等変動計算書」の作成が、必要になります。
※「株主資本等変動計算書」については、今後の法務省令でその様式が明らかになります。

※持分会社(合同・合資・合名会社)の場合、「株主総会」は「社員総会」、
「株主資本等変動計算書」は「社員資本等変動計算書」と読み替えてください。

【結論】
法人税の申告書に添付する書類も、
来年5月以後に決算をむかえる会社から、かわります。
会計ソフトなどのバージョンアップをしないと、
この書類は、自分でつくらないといけませんね。   

 
      ▲(このページの先頭へ)  
  1円会社で資金調達はできるか?   
       
  A 新会社法によって、最低資本金制度が廃止されるそうですが、たとえば1円で株式会社を設立しても、設立時の借入には影響がないのでしょうか?  
 
 
  A 資本金1円でも、1000万円でも株式会社には変わりありません。
制度上は、借入には影響がないように思われます。
しかし、実務上は……。

【解説】
----------------------------------------
■ 平成15年から、「1円会社」スタート
----------------------------------------
    中小企業挑戦支援法が施行されて、会社が資本金1円でも設立できる制度
    がスタートしたのは平成15年2月のことでした。
    「1円会社でも資金調達できるのか?」という疑問はその頃から、議論
    されていたことなのです。
    非常に難しい問題ではありますが、冷静に考えてみましょう。
    例えば、自己資金が十分にあって株式会社を立ち上げた経営者(資本金
    1000万円)と、自己資金がないけど何しろ株式会社を作った経営者(1
    円)を比較してみて下さい。
    あなたが貸し手ならどう思いますか?
    どちらに貸したいですか?

----------------------------------------
■ 国民生活金融公庫のケーススタディ
----------------------------------------
    これまでにも以下のような事例があります。
    現金をある程度もっているのにもかかわらず、1円で株式会社を設立し、
    それで国民生活金融公庫に融資の申し込みに行きました。
    国民生活金融公庫は「自己資金は・・・?」と聞きます。
    貸し手側が、「1円しか資本金のない会社にお金なんか貸せない」と思
    うのは当然でしょう。
    それで、「いいえ、資本金は1円ですが、自己資金はありますが・・・」
    と回答したところ、「それじゃ、どうして1円で会社作ったの?」と言わ
    れたそうです。
    特に開業時には、「必要資金の“全額”を融資してくれる」というような
    ことはありません。
    当然、国民生活金融公庫は、「この経営者は自身でリスクを負うつもりは
    ないのか?」と思うでしょうね。
    ご本人は別段深い意味はなく、1円で会社を設立したそうですが、その時
    点でその経営者の戦略性が問われてしまいます。
    悲しい原則論ですが、お金の無い人に銀行はお金を貸してくれません。
    日本人は、「銀行はお金の無い人にお金を貸すところだ」と思っている方
    がいますが、これは大きな間違いです。

----------------------------------------
■ 資本金額は適当に決めないで!
----------------------------------------
    会社設立後の資金調達のことを考慮すると、以下の点に気をつけて資本金
    額を決める必要があるでしょう。
     1.現実的に、手元資金がどれくらいあるのか?
     2.業種的に、ある程度の資金が必要なのか?必要ないのか?
    銀行は、100万円の株式会社より、たとえ個人でも自己資金1000万円のお
    金を持っている個人事業主の方がお金を貸しやすいのです。
    もちろん、無理をしてでも全財産(自己資金)をつぎ込んで、会社に出資
    する必要はありません。
    経営者の自己責任で判断すべきことです。
    節度のある資本金額で会社を設立して下さい。
    1円より100万円、100万円より300万円、300万円より500万円、500万円よ
    り1000万円・・・、というように考えて下さい。

----------------------------------------
■ 1円会社はマイナスイメージ
----------------------------------------
    そもそも設備投資が必要な業種には、それなりの資金が必要です。
    もし、そのような業種で開業するとしたら、少額の資本金で株式会社を設
    立したとしても、金融機関からの信頼は得られないでしょう。
    パソコン1台で大丈夫というような、それほど資金が必要ない業種なら、
    1円会社でも構いません。

    もしかしたら数年後には年商が数千万円、数億円になっていて、現預金も
    十分、資本の部合計も十分に増加しているかもしれません。
    そのような状態であれば、その時点で借入をすることも可能です。
    しかし、スタート時点で1円で会社を設立して、金融機関から1000万円を
    借りようとするのは本末転倒です。

    先ほども述べましたが、その経営者の計画性、戦略性が問われます!
    設立後の資金調達のことを考えると、これらの点を総合的に検討する必要
    があるでしょう。

【結論】
(極端に資本金を少なくして設立する場合)
借入を考えるならば、資本金額は説明できる金額にしておきましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  節税目的の会社設立に待ったがかかる!  
       
  A 個人事業よりも、会社を設立して役員給与をとる方が、節税になると聞いています。
これは、どういう仕組みなのでしょうか?
 
 
 
  A 会社にして役員給与をとると、給与所得の概算経費がつかえる分だけ、節税になります。
しかし、今度の税制改正で、この節税目的の会社設立に「待った!」がかかります。
つまり、法人税に 「役員給与の給与所得控除相当額 損金不算入」 という規定が新設される予定なのです。
これは 「一定の同族会社のオーナー経営者の役員給与については、給与所得の概算経費分に法人税を課しますよ」 というものです。
※この改正は、新しく設立する会社だけでなく、既存の中小企業にも関係します。

【解説】
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■ マスコミにはとりあげられない大改正
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  昨年12月15日、平成18年度税制改正大綱が発表されました。
  新聞やテレビの報道では、納税者全般にかかわる改正(定率減税、酒税、
  たばこ税に関すること等)がクローズアップされていますが、その中にひ
  っそりと、中小企業に非常に影響のある改正が盛り込まれていました。
  それが「役員給与の給与所得控除相当額 損金不算入」です。
  法案が国会を通れば、平成18年4月1日以降開始事業年度からの適用開始と
  なります。

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■ 法人成りメリットが奪われる!
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  個人事業の法人成り(事業を会社組織にすること)には色々なメリットが
  あります。
  その一つが、個人事業者であれば「実額経費」しか控除できないところ、
  会社にして役員給与をとる方法にすれば、 会社で実額経費を控除できる
  し、役員給与からも「給与所得控除」という概算経費を控除できるとい
  う、「経費のダブル控除」ができる節税メリットでした。

  今回の改正は、個人事業と実態が変わらない会社については、「実額経
  費」と「給与所得控除」のダブル控除は認めない、つまり、企業実態に即
  した課税を行いますよ、という趣旨です。
  ところで、新会社法施行により、少ない資本で会社設立ができるようにな
  ります。
  また、取締役一人でも株式会社が作れるようになります。
  つまり、個人事業からの会社設立ラッシュが見込まれることから、このよ
  うな規定が設けられたのではないか?とも言われています。

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■ 適用対象は?
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  ●業務主宰役員、及び、その同族関係者等で発行済み株式の総数の90%以
   上を保有
  ●その業務主宰役員等が、常務に従事する役員の過半数を占める
   この2つの要件を満たす場合、この規定の適用を受けることになります。

   但し、<業務主宰役員の給与+法人所得>の直前3年内の平均額が
  ●800万円以下
  又は、
  ●800万円超3,000万円以下で、かつ、この平均額に占める業務主宰役員の
   給与の額の割合が50%以下の場合には、この適用はありません。
  もうけの半分超を、オーナー経営者に「役員報酬」として支払っている会
  社の大半は、この要件に当てはまってしまうのではないでしょうか?

※ 業務主宰役員の定義について、詳細は明らかになっていませんが、オー
  ナー経営者など、「経営権を行使して職務を執行する中心的な役員」と考
  えられます。

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■ どのくらい税額が増えるの?
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  この要件を満たす会社の業務主宰役員が、年1200万円の役員報酬を得てい
  たとします。
  この場合、給与所得控除額が230万円になりますので、中小企業の実効税
  率30%とすると、約69万円、法人税等が増加することになります。
  適用対象となる会社にとっては、かなり重い税負担増ですね。
  さて、来週は、この改正の内容を踏まえた上で、「起業を考えている人は
  どう対応すればよいか」について取り上げたいと思います。

【結論】
個人事業と実態が変わらない会社については、役員給与の「給与所得の概算経費分」には法人税が課されることになりそうです。
もうけの半分超を、オーナー経営者に役員報酬として支払っている会社の大半が、この規定の適用対象となります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  「役員給与」の税制改正、対応策はありませんか?  
       
  A 「役員給与の給与所得控除相当額 損金不算入」という規定が新設されると聞きました。上記参照)
これは非常に痛い改正です。
できれば適用を避けたいものです。
既存の中小企業は、どうすればよいでしょうか?
これから会社設立をする人は、どうすればよいでしょうか?
 
 
 
  A 既存の中小企業の方は、顧問税理士とじっくり相談の上、必要であれば回避策を検討しましょう。
これから会社設立を考えている方は、節税だけが目的だったのであれば、「法人成り」について事業のあり方も含めて、再検討しましょう。

【解説】
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■ 既存の中小企業の対応策
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  仮に適用対象法人ならば、業務主宰役員の年俸1,200万円で増税額は約69
  万円になる今回の増税。
  これは回避したい、と思うのが自然です。
  そこで、適用要件を見てみると、いくつか回避策が考えられます。

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【回避策1】身内以外に株式の一部を渡す
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  同族関係者等以外の人に、株式の10%超を譲渡または贈与します。
  この場合、譲渡時の価格が適正(時価)かどうかがポイントになります。
  そして、実態が伴った譲渡であるかどうかもポイントです。
  (譲渡契約書、取締役会議事録、譲渡対価の授受など)

  その後、きちんと税務申告(株式譲渡所得、贈与税等)もしましょう。
  また、株主権を譲り渡すのですから渡す相手は慎重に選び、必要以上に多
  く渡しすぎないようにしましょう。

  ※ 親類以外であっても、事実上婚姻関係と同様の事情にある者等一定の
    人への譲渡については、同族関係者等への譲渡になりますので注意し
    ましょう。
-----------------------------------------
【回避策2】役員を増やす
----------------------------------------
  業務主宰役員等が「常務に従事する役員」の半数以下であればこの規定の
  適用除外となります。
  そこで、従業員の中に経営上重要なポジションにいる人がいれば、その人
  を役員に登用するのも一つの手です。

  この場合には、必ず役員就任予定者に、取締役の義務や責任について説明
  し、承諾を得るようにしましょう。
  「常務に従事している役員」であることがポイントなので、名目だけの役
  員を登記しても、意味はありません。

----------------------------------------
■ 否認される可能性も……
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  これらの回避策は、形式も実質も満たしながら実行しなくては税務調査で
  否認される可能性大です。
  そのため、節税本や節税コンサルのアイデアに安易に飛びつかずに、顧問
  税理士等によく相談し、要件を満たすよう慎重に準備したうえで、回避策
  を行いましょう。

----------------------------------------
■ これから起業する人はどうすれば?
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  ところで、商法では、会社の本質の一つは「社団性」にある、とうたって
  います。
  つまり、会社は「人の集まり」なのです。
  従って、個人事業と実態が変わらない会社については、そもそも商法の理
  念と離れているといえます。

  そして上記でもお話ししたとおり、この規定は「企業実態に合わせた課税
  方式への転換」の布石では? と言われており、個人事業主とのオーナー
  企業の公平性をはかった措置といえます。
  新会社法施行にタイミングを合わせて節税目的で「法人成り」しようとし
  ていた個人事業主の方には残念ですが、商法の理念から考えても、課税の
  公平の観点から考えても、「企業実態に即した課税」という税務の流れ
  は、いたしかたないのかもしれません。
  (ただし、議論なしにこういった規定がいきなり新設されてしまうこと
  は、納税者に対しては非常に失礼なことだと思います)

  節税目的で会社を設立しようと思っていた方は、とにかく再検討です。
  税額のシュミレーションも含め、今一度、自分の事業のあり方を見直し
  ましょう。
  その上で、事業パートナーや取引先を株主や役員として迎え入れるな
  ど、本来の商法の理念に即した設立プランを考えるのも一案かもしれま
  せん。

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■ 結び
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  「会社」が見直される時期に来ていることは確かです。
  新会社法施行により最低資本金制度が撤廃されることから、会社イコール
  即信用、というわけではなくなり、事業実態に即した組織で運営すること
  が是とされる時代になるとは思います。
  せめて、時代がそこまでになってからこの規定が新設されればよかったの
  に……と思えてなりません。

【結論】
既存の中小企業の方は、すぐに税理士に相談しましょう。
これから会社設立を考えている方は、節税だけが目的の会社設立はやめておきましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  3月決算の会社が作る決算書は?    
       
  A 当社は3月決算の株式会社です。
もし新会社法施行日後に株主総会を開くとしたら、商法ではなく新会社法をふまえた決算書を作らなければいけないのでしょうか?
 
 
 
  A 3月決算なら、決算日は会社法の施行日より前です。
新会社法による計算書類等(決算書)を作る必要があるのは、新会社法のスタート後に決算をむかえる会社です。
3月決算会社の場合、今までどおり「商法による計算書類等」を作ればオーケーです。

【解説】
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■ 決算日が会社法施行日の前か後か?
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   会社法整備法の99条(計算に関する経過措置)には、「会社法施行日前に
    到来した最終の決算期に係る計算書類等の作成については、なお従前の
    例(商法)による」と定めています。
   つまり、会社法施行前に決算日をむかえていれば、株主総会がたとえ会社
    法施行日後になったとしても、今までどおり「商法による計算書類等」を
    作ればいいのです。
   なお現在、会社法の施行日は5月1日の可能性が高いので、4月決算の会社
    もギリギリセーフということになります。

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■ 商法と会社法ではこんなに違う!
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   商法と会社法による計算書類等には、以下のような違いがあります。

   商法による計算書類等
      ……貸借対照表、損益計算書、営業報告書、
        利益処分案(損失処理案) + 附属明細書

   会社法による計算書類等
      ……貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、
        個別注記表 + 事業報告、附属明細書

   今まで作成されていた「利益処分案(損失処理案)」は、会社法では、
   「株主資本等変動計算書」に変更され、「営業報告書」は「事業報告」に
    なります。

   貸借対照表や損益計算書の注記事項とされていた事項は、まとめて「個別
    注記表」を作成することになりました。

   なお、会社法施行後に決算日をむかえる会社は、会計ソフトのバージョン
    アップも必要です。

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■ やはり、移行期なので注意が必要
----------------------------------------
   会社法整備法90条(株主総会等の権限及び手続に関する経過措置)には、
   「会社法施行日前に株主総会の招集の手続が開始された場合におけるその
    株主総会の権限及び手続については、なお従前の例(商法)による」と定
    めています。

   つまり、会社法の施行日前に株主総会の招集手続きを開始した場合、会社
    法施行日後に株主総会が行われたとしても、「商法による株主総会の決
    議」が行われます。

   仮に会社法の施行日が5月1日とすると、3月決算会社が4月中に株主総会の
    招集手続きを行えば、「計算書類等の作成」「株主総会の決議」の両方
    が、商法により行われます。

   しかし、3月決算の会社が会社法施行後に株主総会の招集手続きを行う
    と、「商法による計算書類等の作成」と「会社法による株主総会の決議」
    が行われます。
   この場合、商法と会社法による手続きが混在するので、注意が必要です。

【結論】
会社法施行日前に決算日をむかえた株式会社は、「事業報告」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」を作る必要はありません。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  オーナー会社課税を回避する方法は?  
       
  A 一定のオーナー会社の役員給与について、税制改正で
一部課税される規定ができたと聞きました。
これを回避する方法は、何かありますか?
 
 
 
  A 回避する方法は大きくわけて二つ、です。
一つは、株主の構成を考える。もう一つは、役員の構成を考える。
この規定に関する政令が先日公表されたことで、
具体的な対応策が、少しずつ見えてきました。

【解説】
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■1 オーナー会社課税のおさらい
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   個人事業を会社(オーナー会社)にして役員給与をとると、
  給与所得の概算経費がつかえる分だけ、
  節税になるといわれています。
  しかし、今度の税制改正で、この節税目的の会社設立に
  「待った!」がかかります。
   法人税に 「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」
   という規定が新設されたのです。
   簡単に言うと 「一定の同族会社のオーナー経営者の役員給与については、
   給与所得の概算経費分に法人税を課しますよ」 という規定です。
   ※この規定については、新しく設立する会社だけでなく、
    既存の会社にも関係します。
   ※この規定について、詳しくはこちらの「新会社法Q&A」をご覧くださ
      い。
   http://www.inbloom.jp/foresight/07_new_comp_act/qa.html#q42

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■2 回避策(1) 株主の構成を考えよう
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   まず、このオーナー会社課税は
   同族会社の「業務を主宰している役員」と「その特殊関係者」が
   所有している株式の所有割合が90%未満であれば回避できます。
   そこで気になるのは「特殊関係者」の定義ですが、
    1)業務主宰役員の親族
    2)業務主宰役員と事実上婚姻関係にある者
    3)業務主宰役員の使用人
    4)業務主宰役員の金銭等によって生計を維持している者
    5)2)〜4)の親族
   と政令で明らかにされました。

   つまり、設立の際に、
   身内以外の人や、経済的に自分と独立している人に
   最低でも株式を11%持ってもらえば
   まず無条件に、オーナー会社課税を回避できます。

   ※政令では、一定の会社が「特殊関係者」となる場合についても
   規定していますが、ここでは割愛させていただきます。
    会社が法人株主となっている場合について
   オーナー会社課税の適用対象となるかどうかについては
   顧問税理士にご相談ください。

----------------------------------------
■3 回避策(2)役員の構成を考えよう
----------------------------------------
   次にオーナー会社課税は、
  「業務主宰役員」と、常務に従事する役員である「特殊関係者」の人数が
  「常務に従事する役員の総数」の半数以下であれば
   適用しない、とされています。
   つまり、「特殊関係者」以外の人を、半数役員に登用すれば
   回避可能です。

   たとえば、あなたと配偶者で役員になり、会社を起こす場合には
   ほかに身内以外の者を2人、役員にすればいいのです。
   ただし、常務に服していただく必要があります。
   名義だけの役員ではだめですよ。

----------------------------------------
■4 新会社法とオーナー会社課税回避策
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    最後に、新会社法の視点から、オーナー会社課税に関する
   大事な点をピックアップしてみました。

    ● 新会社法施行後は、少ない資本金で会社設立が可能になります。
     そのため、オーナー会社課税を回避するために
     最初から「他人」に株式を11%持ってもらう際、
     その「他人」の経済負担が少なくてすみます。

   ● 新会社法の施行後は、前にもまして「種類株式」を
     発行するケースが増えると思われます。
     議決権のない株式については、90%判定をする際
     分母分子から除外されます。

   ● 新しく設立できるようになるLLC(合同会社)は、
     オーナー会社課税の適用を受ける用件が株式会社とはちょっと違いま
        す。
     LLCの場合には
     社員(出資者)である「業務主宰役員グループ」の人数が
    「社員(業務執行社員に限る)の人数」の9割未満でないと、
     回避できません。
     合同会社は、出資比率に関わらず議決権の個数を決められるので
    (1社員1議決権、など)
     このように規定されたのでしょう。

   ● あなたと配偶者と他人の、3人の常勤取締役の会社の場合
     新会社法施行後、定款を変更し、取締役会を置かない会社とした上で
      配偶者を取締役から外し、あなたと他人の2人の常勤取締役の会社にす
        ればオーナー会社課税は回避できます。
     このように、役員の数を減らすことで課税を回避できるケースもあり
        ます。
     ただし、この場合、取締役を退任した配偶者が、
     その後も会社経営に関わっていれば「みなし役員」に該当しますの
        で、オーナー会社課税の適用を受けてしまいます。

【結論】
オーナー会社課税を回避する方法は、
 ● 株式を、他人に11%以上持ってもらう。
 ● 「業務主宰役員」と、常務に従事する役員である「特殊関係者」の人数
      を、「常務に従事する役員の総数」の半数以下にする。
です。
また、新会社法施行後に実施すると対応しやすい回避策もあります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  会計も変わると聞いたのですが…?  
       
  A 新会社法により、会計に関する部分も変わったと聞きましたが、
具体的に何が変わるのでしょうか?

また、当社は3月末決算なので、
今月中に決算を確定させなくてはなりません。
今回の決算から、新会社法の影響を受けるのでしょうか?
 
 
 
  A 計算書類の体系が大きく変わります。
「利益処分案」が廃止されるのが大きなポイントです。
なお、平成18年5月期決算からこの改正の適用を受けることになります。
3月決算の会社さんは、今回の決算は従来どおりの計算書類で大丈夫です。

【解説】
----------------------------------------
■計算書類が変わった背景
----------------------------------------
    新会社法では、配当については、
   決算の確定手続きと切り離され、株主総会決議があれば
   いつでもできるようになりました。
   そこで、現在のような決算期末の未処分利益を
   どのように処分するかを示す「利益処分案(損失処理案)」は
   あまり意味がなくなるため、廃止されました。
   その代わり、配当原資となる剰余金、資本金、準備金等
   資本の部の期間中のフローを表す
  「株主資本等変動計算書」の作成が必要になったのです。

   新会社法では、配当だけではなく
  「資本の部の計数の変動」「役員賞与」なども
   決算の確定手続きから、切り離されています。
   これが、新会社法で計算書類が変わった背景です。

----------------------------------------
■具体的にはこう変わる!
----------------------------------------
   新会社法で規定される計算書類は、
     ・「貸借対照表」
    ・「損益計算書」
    ・「株主資本等変動計算書」
    ・「個別注記表」
   の4つとなります。

   また、株式会社は、各事業年度の計算書類とは別に、
   「事業報告」「附属明細書」を作成することとされています。
   イメージとしては、このようなかんじです。
 【改正前】       【改正後】
 ・貸借対照表    → ・「貸借対照表」
 ・損益計算書    → ・「損益計算書」
 ・営業報告書    →   ×
 ・利益処分案    → ・「株主資本等変動計算書」
   又は損失処理案
 ・(各計算書類の注記)→ ・「個別注記表」
  各決算書の注記が、計算書類に格上げになり
  営業報告書は、計算書類の枠組みからは外れ
  「事業報告」となったということですね。

  また、従来の「利益処分案」に記載されていた配当などは、
  「株主資本等変動計算書」への記載以外に、
  「個別注記表」への注記事項にもなります。
  このことからも、今までは「注記」というと、
  中小会社ではあまり重要性を感じなかったり
  省略していたかもしれませんが、
  これからはきっちりと「個別注記表」を作成しなければなりません。

----------------------------------------
■B/S、P/Lの主な変更点
----------------------------------------
    貸借対照表や損益計算書の表示もかなり変わります。
  まず、貸借対照表の主な変更点ですが、
  「資本の部」が「純資産の部」となり、
  「株主資本」「評価・換算差額等」「新株予約権」の3区分表示となりま
    す。
   会社の純資産とその内容について重要視するということですね。
   損益計算書はさらに大きく変わります。
   まず、損益計算書の区分表示
   (『経常損益の部』や『特別損益の部』などに分けて表示)
   がなくなります。
   また、今まで、末尾は「当期未処分利益」だったのが、
  「当期純利益金額(当期純損失金額)」が末尾になります。

----------------------------------------
■適用開始時期はいつからなの?
----------------------------------------
     計算書類の変更があるので、当然、新会社法施行に伴って、
   会計ソフトのバージョンアップも必要になります。
   多くの会計ソフト会社では、バージョンアップは
   6月下旬以降というところが多いようです。
   なんだか遅いような気がしませんか?
   でも、心配ご無用です。
   この計算書類の改正は、施行日以降に開始する決算期から
   適用になります。
   つまり、平成18年5月期決算から、改正の適用を受けることになります。

   5月決算の決算実務を行うのは、6月下旬〜7月にかけてです。
   なので、バージョンアップが6月下旬でも、なんとか間に合うのです。
   18年3月決算・4月決算の会社さんは、
   従来の計算書類の体系で決算実務を行って頂いて大丈夫です。

【結論】
配当などの手続きが決算の確定手続きと切り離され、
株主総会の承認があればいつでも出来るようになったことから、
利益処分案は廃止され、新会社法の計算書類は、
「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等計算書」「個別注記表」
の4つになりました。
なお、計算書類関係の改正の適用は、平成18年5月期決算からとなります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  配当金を支払う場合には?  
       
  A 当社は5月末を決算日とする非公開会社(株式譲渡制限会社)であり、
会計監査人は置いていません。
この後7月に開催される定時株主総会において、期末配当金を支払う決議を行う予定ですが、税務・会計上、何か変わった点はありますか?
配当の基準日は5月末日です。
 
 
 
  A 当期の決算において作成する「個別注記表」の株主資本等変動計算書に関する注記として、<期末配当の注記>を記載する必要があります。
なお、実際に配当金が支払われるのは翌期となるため、「株主資本等変動計算書」への増減の記載は翌期に行います。

【解説】
----------------------------------------
■「個別注記表」とは?
----------------------------------------
 「個別注記表」とは、会社計算規則第91条1項に規定された
 計算書類の1つです(詳しくは上記を参照して下さい)。

 個別注記表に表示すべき項目は、全部で12種類あります。

 しかし、会計監査人を置かない非公開会社の場合、
 次に掲げる3つの注記を行えばよいです(会社計算規則第129条)。

 ・<重要な会計方針に係る事項に関する注記>
 ・<株主資本等変動計算書に関する注記>
 ・<その他の注記>(旧商法の追加情報のような注記)

 裏を返せば、他の9つは省略できるということです。

----------------------------------------------
■<株主資本等変動計算書に関する注記>とは?
----------------------------------------------
 会社法施行後は、利益処分案はなくなり、
 「株主資本等変動計算書」を作成することになりました。

 それに合わせて「個別注記表」には、株主資本等変動計算書の
 補足情報として新たに、<株主資本等変動計算書に関する注記>を
 行うことになりました(会社計算規則第136条)。

 なお、記載すべき具体的内容は、

 ・当該事業年度の末日における発行済株式の数
 ・当該事業年度の末日における自己株式の数
 ・当該事業年度中に行った剰余金の配当に関する事項
 ・当該事業年度の末日後に行う剰余金の配当に関する事項
 ・当該事業年度の末日における当該株式会社が発行している
  新株予約権の目的となる当該株式会社の株式の数

 の5つです。
 上から4番目が、今回のご質問に関係する内容です。
 もちろん、該当事項がないものについては、
 注記事項を省略することができます。

------------------------------------------------------
■<株主資本等変動計算書に関する注記>がなぜ必要なの?
------------------------------------------------------
 旧商法では、配当金支払の決議を利益処分手続きの1つとして
 行っていました。

 しかし、利益処分案が廃止されたため、税務上、期末配当金を
 今までどおり、当期に繰り上げる方法で計算していいのか
 ということが問題となりました。

 この問題を解決するために、期末配当金については、
 <株主資本等変動計算書に関する注記>を行うことによって
 解決を図ろうとしたのです。

 この注記により、「同族会社の留保金課税」の「留保所得金額」の
 計算については、今までどおり、期末配当金を当期に繰り上げて
 計算することが認められます。

 なお、全ての株式会社は、この注記を行う必要があります。

----------------------------------------
■「個別注記表」への記載例
----------------------------------------
 具体的な記載例は、次の通りです。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 当該事業年度の末日後に行う剰余金の配当に関する事項

 平成18年7月××日開催予定の定時株主総会において、
 次の議案を決議する予定である。
 配当金の総額       ×××円
 配当の原資        利益剰余金
 一株当たりの配当額    ××円
 基準日          平成18年5月31日
 効力発生日        平成18年7月××日
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 実際に配当金が支払われるのは翌期となるため、
 株主資本等変動計算書への増減の記載は翌期になります。

【結論】
期末配当を予定している場合には、注記が必要です。
税務上も大切な注記となりますので、忘れないようにしましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  役員給与の増額に伴う一括支給について  
       
  A 当社は3月決算の株式会社です。
6月の定時株主総会で役員である私の定期給与を増額しました。
役員報酬について、法人税の改正があったと聞きますが、今までどおり、
「4月から6月までの給与の増額分」を「7月の給与」に上乗せして支給しても大丈夫でしょうか?
 
 
 
  A 「期首から定時総会までの増額分」を一括支給する場合、その「増額分」は
会社の法人税の計算上、「経費として認められません」
ので、ご注意ください。

【解説】
------------------------------------------------------
■具体的な例でみてみよう
------------------------------------------------------
 例えば、「月額100万円」だった役員の給与を、6月の定時株主総会決議で、
 期首の4月までさかのぼって「月額150万円」に増額した場合、

 4月 100万円 ⇒ 150万円 (50万円増額)
 5月 100万円 ⇒ 150万円 (50万円増額)
 6月 100万円 ⇒ 150万円 (50万円増額)
 7月 以後150万円ずつ支給

 となり、4月から6月までの合計150万円の増額分が発生しますが、
 この増額分を7月分の給与に上乗せして支給すると、

 7月 150万円(7月分) + 150万円(増額分) = 300万円

 となります。

 この場合、4月から6月までの増額分150万円は、法人税の計算上、
 経費にならない(損金不算入である)ことが、国税庁の役員給与に関する
 Q&Aで明らかにされています。

※ 平成18年3月31日以前開始事業年度においては、上記増額分が損金処理
  できました(法人税法基本通達9-2-9の2)。
※ 役員給与の額のうち、不相当に高額な部分については損金に算入されませ
  ん(法人税法34条2項、法人税法施行令70条)。

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■会社法の考え方
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 会社法361条1条では、
 「役員賞与は役員報酬と同じく、株式会社から受ける財産上の利益である」
 としています。

 会社法は、「役員報酬」と「役員賞与」を区別することなく、
 「役員の報酬」と一括して取り扱っています。
 これは、株式会社の利益は、役員の職務執行の成果であり
 (もちろん従業員の成果でもある)、

 そういった意味では「役員賞与」も「役員報酬」と同じく、
 役員の職務執行の対価である、と考えているためです。
 ですから、役員報酬に関する定款の記載も(報酬等)
 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける
 財産上の利益は、株主総会の決議によって定める。
 というように、表現を変えている会社もあります。

----------------------------------------
■損金に算入される役員給与の範囲
----------------------------------------
 会社法の考え方を受けて、税法においても別々のものと規定されていた
 「役員報酬」と「役員賞与」が、平成18年税制改正によって
 「役員給与」として一括されました。
 また、平成18年の税制改正では大改正が行われ、
 「法人が役員に対して支給する給与のうち、
 損金の額に算入されるものの範囲」が変わりました。

 具体的には、
 1.定期同額給与 (法人税法34条1項一)
 2.事前確定届出給与 (法人税法34条1項二)
 3.利益連動給与 (法人税法34条1項三)
 のいずれにも該当しない役員給与は、損金の額に算入されません。
 では、引続き1及び2の内容をみていきましょう。

※「3.利益連動給与」の説明は割愛いたします。

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■「定期同額給与」とは?
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 まず「1.定期同額給与」とは、原則的には、
 「その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、
 当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与」
 のことをいいます。
 また、定期給与の額について、期首から3ヶ月を経過する日までに
 改定された場合には、改定前の各支給時期の支給額が同額であって、かつ、
 改定以後の各支給時期の支給額が同額であることとされています。

 たとえば、6月末までに改定がなされ、
 4月〜6月 毎月100万円
 7月〜3月 毎月150万円
 であれば、「定期同額給与」に該当します。

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■「事前確定届出給与」とは?
------------------------------------------------------
  次に「2.事前確定届出給与」とは、
  「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに
 基づいて支給する給与」のことをいいます。
  つまり、「定期同額給与」以外の支給形態でも、その役員に対する
 給与の支給時期、支給金額が事前に定められているものについて、
 「事前に」税務署に届出れば、
 これらの給与を会社の経費にできるという制度です。
 この場合、「その給与に係る職務の執行を開始する日」と
 「会計期間の3月経過日」とのいずれか早い日までに、
 税務署に届出を行う必要があります。

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■ポイントは「事前に」定めがあること
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 これらの規定は、いずれもその役員の「職務執行期間の開始前」に
 「事前に」定められていることが要件になります。
 職務執行期間の開始日は、定時株主総会の日であるため、
 ご質問のケースである「4月から6月の増額支給分」は、
 「既に終了した職務期間」であると考えられます。

 4月 100万円
 5月 100万円
 6月 100万円
 7月 300万円
 8月〜3月 毎月150万円

  7月に支給する増額分は、「事後的」なものとして考えられるので、
 「定期同額給与」にも「事前確定届出給与」に該当しないことになります。

【結論】
税務上のリスクが高いので、期首にさかのぼった増額分の一括支給は、避けた方がいいでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  匿名組合を利用して得た利益の分配の税金は?  
       
  A 私(居住者)は、匿名組合契約を利用して投資をしたいと考えています。
匿名組合契約の利益の分配に対する税金について教えて下さい。

※ 所得税法上の居住者とは、国内に住所があり、
    または、現在まで引き続いて1年以上居所がある個人をいいます。
 
 
 
  A 居住者が匿名組合を利用して得た利益の分配は、通常「雑所得」となります。
なお、利益の分配を受ける際には20%の税金(源泉所得税)が差し引かれている場合があります。

【解説】
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■ 匿名組合とは
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 匿名組合とは、
 「当事者の一方(出資者)が相手方の経営する事業(営業)に対して
  出資し、その代わりにその事業でもうけた利益を出資者に分配する
  という契約」 です(商法第535条)。

 匿名組合においては、
 出資者のことを「匿名組合員」といい、
 事業経営者のことを「営業者」といいます。

 匿名組合とは、
 「匿名組合員」が「営業者」に出資し、
 その事業の一切を「営業者」に任せ、
 「匿名組合員」は利益の分配受けるだけ、という契約です。

--------------------------------------------
■ 登場人物は2者のみ
--------------------------------------------
 組合という言葉から誤解されやすいのですが、
 匿名組合契約の当事者は、「営業者」と「匿名組合員」の2者であり、
 出資者が数人いても、民法上の組合やLLPのように各出資者間に
 1つの組合契約がある訳ではありません。

 たとえば、「営業者」が10人から出資を受けた場合は、
 法律上は「営業者」と「匿名組合員」の間に、
 出資者の数だけつまり10コの匿名組合契約が存在することになります。

--------------------------------------------
■ 所得税の所得区分について
--------------------------------------------
 「匿名組合員(居住者)」が、匿名組合契約に基づいて
 「営業者」から受ける 利益の分配は「雑所得」となります。

 ただし、「匿名組合員」が「営業者」の営む組合事業を共同経営していると
 認められる場合には、「営業者」から受ける利益の分配は
 「事業所得」または「その他の各種所得」とされます。
 (所得税基本通達36・37共−21)

--------------------------------------------
■ 利益の分配に対する源泉徴収
--------------------------------------------
 「匿名組合員(居住者)」に対し、下記(※)のような契約に基づく
 利益の分配の支払いをする「営業者」は、その支払いの際、
 利益の分配につき20%の税率で所得税を源泉徴収しなければなりません。

 ※「営業者」が10人以上の「匿名組合員」と締結している匿名組合契約等

--------------------------------------------
■ 自民党税制改正大綱に
--------------------------------------------
 12月14日にその内容が明らかにされた平成19年度税制改正大綱では、
 「源泉徴収制度の対象となる
  匿名組合契約等に係る組合員の人数要件を撤廃し、
  すべての匿名組合契約等に基づく居住者に対する利益の分配を
  源泉徴収制度の対象とする。
  なお、この改正は、平成20年1月1日以後に支払われる
  匿名組合契約等に基づく利益の分配について適用する」
 としています。

 したがって、与党案通りに平成19年度税制改正が行われた場合、
 平成20年1月1日以後に、居住者が匿名組合から利益の分配を受ける際には、
 必ず20%の税金(源泉所得税)が差し引かれることになります。

 サラリーマン(給与所得者)の場合は、給与以外の所得が少額ならば、
 確定申告が不要なケースもありますが、状況によっては、
 申告をした方が税金計算上有利になることもありますので、
 税務署や税理士に確認してみましょう。

【結論】
居住者が匿名組合を利用して得た利益の分配は「雑所得」となります。
なお、利益の分配を受ける際には
20%の税金が差し引かれている場合があります。
給与所得者は確定申告が不要なケースもありますが、、
状況によっては、申告をした方が得になる場合がありますので、
税務署や税理士に相談してみましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ))  
  新会社法とメインバンク制の崩壊……?  
       
  A 新会社法がスタートによって、「メインバンク」という概念が無くなるかもしれないと知り合いの経営者から聞きました。本当でしょうか?
また、そうなると中小企業の経営にどのような影響があるのでしょうか?
 
 
 
  A ほとんど影響はありません。
そもそも「メインバンク」という概念をあらためて考えてみましょう。

【解説】
--------------------------------------------
■ この質問の言わんとするところは?
--------------------------------------------
 最近、数人の経営者から、今回と同様の【質問】を受けています。

 これは何を意味しているかといいますと、新会社法によって、
 「法人設立の際に、株式払込金保管証明書が必要なくなった」
 ことが影響しています。

 ※こちらもご参照ください。
 http://www.inbloom.jp/foresight/07_new_comp_act/qa.html#q10

 これまでは、この保管証明書を発行してもらうことが
 意外と大変だったのです……。

 金融機関によって、その度合いは違うにせよ、
 それなりにその新設企業は審査されました。

 しかし、新会社法によって、払い込みの証明手段は
 簡便な「残高証明」でよくなりました。

 これによって、設立当初からの金融機関との
 「結びつきが弱くなるのではないか?」
 「その果てには、メインバンクという考えがなくなるのではないか?」
 という懸念が起きたようです。

 新会社法がスタートして以来、様々な情報が発信されています。
 特に、これから起業される方にとっては、
 気になることなのかもしれませんね。

--------------------------------------------
■ メインバンクとは?
--------------------------------------------
 そもそもメインバンクとは何でしょうか?

 中小企業白書によると、
 メインバンクとは
 「企業の経営行動において、その取引金融機関の中で
  最も多額の融資を受け、人的・資本的に、
  あるいは情報の上で最も密接な関係にある金融機関」、
 「単一の会社における複数の貸出銀行の中で第一位の貸手」をいう。
 とのことです。

 また、中小企業白書では、
 ・企業がメインバンクと認識している金融機関をメインバンクである。
 (原文ママ)
 との見解も示しています。

 前者の見解はいかにも学術的ですが、
 後者の見解がいかにもメインバンクの実態・真実を表していると思います。

--------------------------------------------
■ 経営者の一方的な片思い……?
--------------------------------------------
 ・「当社のメインバンクは○○銀行です。」
 ・「○○銀行はうちのメインなのに、追加融資をしてくれない!!」
 とある経営者が言いました。

 なぜメインなの?と聞くと、
 「最も融資の残高が多いからです」とのこと。

 多くの経営者がこう思っていませんか?

 これが大きな勘違いです。
 実は、経営者の一方的な片思いである場合が多いのです。

 確かに、今は大手銀行が業績のよい中小企業に、
 「社長、お金を借りてください」と営業するような機会も増えてきました。

 大手銀行からそう言われて気分を害する経営者はいないでしょう。
 (特に、経験の浅い経営者なら!!)

 経営者が一方的にメインバンクと思っても
 肝心な金融機関はそんなこと思っていないかもしれませんよ。

 それでも、一方的に「メインなのだから!」と決め付けて、
 金融機関に詰め寄るのは、一つ間違えれば、
 ストーカー行為に近いと思います〜。

-------------------------------------------------
■ メインバンク神話の崩壊……。本当の恋人は?
-------------------------------------------------
 そもそも、格付け中心、クレジットスコアリング方式による
 ビジネスローン全盛の昨今において、
 この“メインバンク”という考えは
 あまり機能していないのではないでしょうか。

 ※ビジネスローンとは?
 http://www.mbs-con.com/bank1_bl.html

 いざ!という時に中小企業に支援の手を差し伸べてくれる金融機関は、
 多くの経営者が勘違いしている“メインバンク”ではなく、
 長くお付き合いしている“信用金庫”だったりします。

 人間社会でも同じかもしれません。
 信じていたパートナーに裏切られ、意外な人が力を貸してくれた……
 というような経験をされた方もいらっしゃるでしょ〜?

-------------------------------------------------
■ 保管証明書を出してくれた金融機関がメインか?
-------------------------------------------------
 新会社法のスタートによって、保管証明書の発行が必要なくなった現在、
 メインバンク制が崩壊する……という見解すら、辻褄があっていません。

 そもそも、これまでだって、保管証明書を発行した金融機関がその後、
 必ずメインバンクになるわけでもありませんでした。

--------------------------------------------
■ 金融機関との付き合い方
--------------------------------------------
 新会社法がスタートしたからといって、
 新会社法が金融機関との関係に何か大きく影響するものでもありません。

 中小企業には、少なくとも 以下のような
 金融機関チャネルを持つようにお勧めします。

 1.都市銀行1〜2行
 2.地方銀行1〜2行
 3.信用金庫1〜2行
 4.政府系金融機関1〜2行

 ちなみに政府系金融機関は、改革によって統廃合、民営化されます。

 現在、中小企業が主に活用している「国民生活金融公庫」は、
 2008年10月以降は「日本政策金融公庫(仮称)」に統合されます。

 ※日本政策金融公庫について
 http://www.mbs-con.com/dictionary/nskk.html

 いつの時代も、バランスよく
 金融機関との付き合いをしていく必要があります。

 都市銀行がビジネスローンで積極的に融資をしてくれるからといって、
 信用金庫などの地域金融との付き合いをないがしろにしないように
 してください。

 また、もっとも重要なことは、黒字経営を目指すことです。
 売上・利益を出す経営こそが、他からの影響を受けない方法です。

【結論】
「新会社法によってメインバンク制が崩壊する??」という議論自体、
あまり気にしなくても結構です。
要は、黒字経営を心がけ、金融機関との関係を良好に維持することが
重要です。
経営者一人では、判断に困ることも多いでしょう。
顧問税理士などに相談することによって的確な判断をするように
心がけて欲しいと思います。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  決算月を決めるポイントは?  
       
  A 【ご質問】
会社をつくろうと思います。
決算月は3月が多いようですが、いつにしたらいいか、迷っています。
なにか、アドバイスはありますか?
 
 
 
  A 会社は決算月を自由に決められます。
事業の特性等によって、決めることが多いです。
なお、決算月は「定款」で決めますが、登記すべき事項ではありません。

【解説】
--------------------------------------------
■ 日本の会社は決算月を選べる
--------------------------------------------
 上場企業の場合、3月決算が約8割を占めるので、
 会社をつくったら決算月は3月にと思われる方も多いです。

 しかし、会社は自由に決算月を決められます。

 日本の会社は官公庁の予算に合わせたため3月決算が多いですが、
 欧米では暦年に合わせた12月決算が主流ですし、
 日本企業でもデパートやスーパーといった小売業は2月決算が主流です。
 (2月は閑散期なので棚卸作業がしやすくなるから)

 では、決算月を決めるときのポイントを、みていきましょう。

--------------------------------------------
■ 決算月 選択のポイント
   その1 よい営業成績で決算を迎えたい
--------------------------------------------
 ● 売上が好調な月を決算月にする。
  
  たとえば、アイスクリーム製造業。
  たいていは、冬より夏を迎える時期に売上が伸びます。

  右肩下がりで決算を迎えるよりは、
  右肩上がりで決算を迎えた方が社内の士気も高まって、
  気持ちがいいです。

  また、利益をあげなければならない会社の場合、
  これからという時期に決算を迎えたら、
  売上の前倒しをしたくなることもあるでしょう。

  1年ならしてしまえば同じですが、人間の心は弱いもので、
  この売上が今期に入ったらと、つい、考えてしまうものです。

--------------------------------------------
■ 決算月 選択のポイント
   その2 決算作業は、落ち着いてやりたい
--------------------------------------------
 ● 業務が落ち着く月を決算月にする。

  たとえば、税理士法人の場合。
  3月から5月は、クライアントの確定申告や3月決算法人の
  決算・申告などで、自社のことを振り向く余裕もありません。

  決算作業は、結構大変です。
  余裕があるときを決算月にすると、じっくり、
  決算対策も考えられますし、業務への支障も少なくなるでしょう。

--------------------------------------------
■ 決算月 選択のポイント
   その3 親会社がある場合
--------------------------------------------
 ● まずは、親会社の意向で決まる。

  連結決算を行う場合は、有無をいえず、
  親会社の決算月にあわせることが要求されます。

  連結決算などが不要な場合は、グループ企業間で
  まとめて決算作業を行った方が効率的か、
  それとも、作業を分散させるために、
  個々の会社でバラバラに決めた方がいいかを検討しましょう。

--------------------------------------------
■ 決算月 選択のポイント
   その4 業績予測が難しく、役員給与の金額が決めにくい
--------------------------------------------
 ● 短かい期間で、第1期決算を行うのも考え方の一つ

  第1期は、なるべく長い時期になるように、
  決算月を決めるケースも多いと思います。
  たとえば、2月に設立予定でしたら、 
  1月を決算月にするというケースです。

  しかし、会社を設立したばかりでは、
  売上や利益の水準を予測することは大変難しいです。

  そこで困るのが、「役員給与」の金額をいくらにするかということです。

  どういうことかというと、昨今の税制改正により、
  役員給与の金額の決定について「定時同額」という考え方が
  前面に出されており、期の途中での増額改訂は難しく、
  支払っても経費にならない金額をつくることになってしまうのです。

  役員給与の金額の額を税務上の費用とするには、
  期首から3ヶ月以内に決まっていることや、
  よほどのことがない限り、期中は、金額が一定であることなどが
  要求されます。

  設立当初は、事業に対する不安から、役員給与の金額を抑えて、
  その後、事業が軌道にのってきた場合は、役員給与を少し上げたい
  というわけにはいかないのです。

   そこで、新しく作った会社は、なかなか業績予測がたてにくいので、
  数ヶ月で決算月を迎える試運転みたいな第1期を設け、
  第2期から本格的に稼動するという方法もあるかと思われます。

【結論】
 決算月について、いくつか選択のポイントをあげました。
 ご自分が一番しっくりする考え方で、決めてください。

 なお、決算月は株主総会で定款を変更することにより可能です。
 変更したら税務署等へは届け出ますが、登記すべき事項ではないので
 変更登記は不要です。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  決算公告の電子化とは?  
       
  A 決算公告を行わないと法律違反だと聞きましたが本当ですか?
また、決算公告するなら電子化のほうがいいと聞きましたが、どういったメリットがあるのでしょうか?
 
 
 
  A 決算公告などの公告を行なうのは、株式会社の義務です。
決算公告を電子化すると、他の方法で公告するより、
コストが抑えられます。
ただし、電子化すると、詳細な表示と5年間の開示義務が要求されます。

【解説】
--------------------------------------------
■ 株式会社の公告とは
--------------------------------------------
 株式会社は、会社の重要な事項について、
 広く一般に知らせなくてはいけないという趣旨から

  ・決算
  ・合併
  ・資本金の額の減少
  ・解散

 などの重要な事項について、公告するように義務付けられています。

---------------------------------------------
■ 決算公告を行わないと100万円の罰金!?
---------------------------------------------
 この公告の中で、特に身近なものが「決算公告」です。

 株式会社は事業年度終了後に株主総会を行い、
 株主総会で承認された貸借対照表などを公告する義務があります。
 この公告が「決算公告」です。

 でも、実際は
 「決算公告?ウチはやってないなぁ」という会社がほとんどだと思います。

 ところが、法律上は、公告義務を怠った場合、
 100万円以下の過料(罰金)が科されるのです!

 しかし、大多数の中小企業が決算公告を行なっていませんし、
 行政当局もこの状態を長年放置し続けてきたので、
 事実上おとがめナシの状態になっています。

 ただ、決算公告を行なわないことは、実は「法律違反」なのです。

--------------------------------------------
■ 決算公告が重視される時代がやって来る?
--------------------------------------------
 資本金1円でも会社が設立できるようになったいま、
 昔のように「株式会社 イコール 資本力のある会社」
 というわけではなくなりました。

 そこで信用調査や適正な企業評価のために
 「決算情報を入手し、活用したい」という会社外部からの要請は、
 ますます高まってくるでしょう。

 また最近「コンプライアンス」という言葉がよく聞かれますが、
 今後は中小企業にも、法令遵守・情報開示・会社の透明性の確保が
 求められます。

 こうした流れを考えると、
 決算公告が重視される時代がやってくる気がしてなりません。

 今までお目こぼししてきた行政当局も、
 公告することを厳しく求めるかもしれません。

 ある日突然
 「はい、罰金を払ってください」という通知が会社に来る……
 私はあり得ない話ではないと思っています。

--------------------------------------------
■ 公告電子化のメリット
--------------------------------------------
 そこで、来るべき決算公告重視の時代にそなえ
 「よし、マジメに決算公告するか!」と思った方には、
 電子公告がオススメです。

 公告の方法としては

   1)官報に掲載
   2)日刊新聞紙に掲載
   3)電子公告

 という方法が認められていますが、
 1)や2)の方法はコストがかかります。

 たとえば、官報に決算公告を掲載する場合、
 小さな会社でも最低6万円から10万円はかかってしまいます。
 毎年のことだと、かなり痛い出費ですよね。

 一方、電子公告の場合は、
 もし自分でホームページを作成する知識・技術があれば、
 コストはほぼ無料です
 (サーバー関連、ページ制作、登記といった費用は別途かかります)。

 また、決算公告をアップするのは自社のホームページ上でなくても
 大丈夫です。

 電子決算公告のサポートをする業者に掲載をおまかせする
 という方法もあります
 (この場合、その業者のサイトに決算公告が掲載されます)。
 このような業者の利用料金は、年間1万円前後が多いようです。

--------------------------------------------
■ 公告を電子化するには?
--------------------------------------------
 さて、公告方法を電子化する場合、
 どのような手続きが必要なのでしょうか?

 全部の公告を電子化する場合には

  定款変更(株主総会の特別決議が必要)
  ↓
  登記

 という手続きをとります。

 ところが、全部の公告を電子化してしまうと減資や合併の公告を行う際に
 電子公告が適法に行なわれたかどうかについて、
 公告期間中、法務大臣の登録を受けた調査機関の調査を
 受けなければなりません。

 実は、この調査料がかなり高額(20万〜30万円)で、
 むしろ官報に掲載したほうが安上がりだったりします。

--------------------------------------------
■ 「決算公告」だけは例外!
--------------------------------------------
 そこでオススメなのは、
 他の公告については官報に掲載するとしたまま、
 決算公告のみ電子公告とする方法です。

 決算公告だけは電子公告としても調査機関の調査を受けることは
 必要ありません。

 こうすれば、減資や合併の公告のときには、
 調査料を節約することができます。

 なお、決算公告のみ電子公告とする場合、定款変更の必要はなく、

 取締役会<取締役会非設置会社は株主総会>の普通決議
 (決算公告を電子化することとともに、決算公告を載せるURLを決めます)
 ↓
 登記(決算公告ホームページのURLの登記が必要になります)

 という手続きをとります。

--------------------------------------------
■ 電子決算公告の注意点
--------------------------------------------
 しかしながら、決算公告を電子化すると通常の決算公告であれば、
 貸借対照表の要旨の記載で足りる場合でも、
 貸借対照表の全文を記載せねばなりません。

 また、掲示期間が非常に長く
 定時総会の日から5年間継続して掲載する必要があります。

 これらは、電子化を検討する際に、ぜひ考慮にいれておきたい注意点です。

【結論】
 これからは、情報開示・コンプライアンスにより自社のイメージ向上を
 目指す時代です。
 その流れの中、決算公告の履行について、今後は官民ともにシビアに
 求めてくるかもしれません。
 コストが断然安く、かつ、多くの方に閲覧してもらえるのは電子決算公告
 です。
 検討してみてはいかがでしょうか?
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  保険で利益を調整してもいい?  
       
  A ベンチャー企業の経営者ですが、今度の決算では利益2億円の予定が、
3億円になりそうです。
すると、IPOに詳しい人に
「株式上場(IPO)を考えると“右肩上がりの成長”を演出しないとならない
 ので、業績の急上昇はあとが苦しくなる。利益は繰り延べたほうがいい」
と言われ、保険料1億円の生命保険に入って利益を圧縮することを
勧められました。
一般的な生命保険や医療保険にはすでに入っているのですが、
さらに保険に入って、利益の調整をしたほうがいいのでしょうか?
 
 
 
 
  A 利益調整のために使われる保険、通称「節税保険」は、利益調整・節税対策
のための財テク商品として活用されていますが、コンプライアンス上の
問題だけでなく、さまざまな経営上の問題点もあります。


【解説】
--------------------------------------------
■ 「節税保険」とは
--------------------------------------------

 成長を演出するため、節税のために利益を圧縮したい
 という誘惑にかられることはよくあります。

 しかし、建物を買っても、高級車を買っても
 すぐに利益を圧縮することはできません
 (減価償却によって徐々に損金となるため)。

 そんななか、「保険料」は利益を圧縮する手段として
 昔からよく使われています。

 そして、保険の中には通称「節税保険」といわれるような、
 利益を調整することを主目的とした保険も売られています。

 この保険は「解約返戻金」といって
 解約すると払い込んだ金額の大部分が戻ってくるため、ある種の
「定期預金」としての性質も持つのです。

 利益があるときに保険に入り、損失が出たときに保険を解約すれば、
 赤字を穴埋めできるだけでなく、税効果により一時的に納税額を減らす
 こともできます。

 ※もちろん、保険の第一目的は「保障」のためなのですが、ここでは
  その説明は割愛させていただきます。

---------------------------------------------
■ 全額損金にできる生命保険もまだある
---------------------------------------------
 昔は多くの保険が「節税保険」として活用されていましたが、
 この合法ではあるが過度な節税を国税庁も見逃すわけもなく、
 年々規制が厳しくなっています。

 現在では、一部の定期保険や終身ガン保険といったものしか、
 全額損金にすることは認められていません。

 (全額損金に認めていたものを、たとえば「半分は損金ではなく、
  資産として計上しろ」といったように全額損金にはさせない規制が
  しかれています)。

 しかし、逆をいうと、法の目をかいくぐった「節税保険」は
 まだいくつか存在しているのです。

--------------------------------------------
■ 1.保険料は払い続けなれければならない
--------------------------------------------
「節税保険」だと確かに利益は圧縮でき、
 解約した時点で払い込んだお金は返ってきます。
 しかし、経営上の問題もあります。

 まず1つ目の問題は、
 「保険料は毎年払い続けなければならない」
 という点です。

 今年、利益が3億円出たので、保険料1億円の保険に入って
 利益を2億円に圧縮したとします。

 『利益3億円−保険料1億円=(操作後)利益2億円』

 しかし、翌年、業績不振で利益が1億円だった場合でも
 保険料は支払い続けなければなりません。
 すると、利益がゼロになり、IPOどころではなくなります。

 『利益1億円−保険料1億円=(操作後)利益0億円』


 保険料が払えなければ途中で解約してもいいのですが、
 ある一定の期間を経ないと半分も返ってこない場合があります。

 早い時期の解約だと、
 1億円の保険料を払って5千万円しか返ってこない
 という事態もありうるのです。

 保険料は、借金をしてでも払い続けなければならないのです。

--------------------------------------------
■ 2.全額が戻ってくるわけでなない
--------------------------------------------

 昔の保険は利回りもよかったため、
 払い込んだ保険料より解約返戻金のほうが多い、
 ということもありましたが、いまの「節税保険」では
 よくても9割しか戻ってきません。

(例)年1億円の保険を5年後に解約する。
  『1億円×5年分×解約返戻率90%=4.5億円』
  →5年間で5千万円の支出

 つまり、普段どんなに細かい金額の
 コスト削減に精を出していたとしても、
 利益調整だけで5千万円も使ってしまうことになります。

 社員のコスト削減意識も失われかねません。

--------------------------------------------
■ 3.自由に解約できるわけではない
--------------------------------------------

「節税保険」の場合、ある期間を経ないと
 半分も返ってきません。

 さらに、節税保険の代表格である「逓増定期保険」の場合は、
 ある期間を過ぎても半分も返ってこなくなります。

(例)ある逓増定期保険の解約返戻率
   1年後 17%
   3年後 54%
   5年後 90%
   7年後 90%
   9年後 73%
   11年度 49%

 上の例ですと、5〜7年後に解約しないと大損してしまいます。

 つまり、この5〜7年後の時期に、たまたま
 利益がたくさん出ていた場合でも解約しないといけません。

 この場合、問答無用で利益が増加するため、
 “右肩上がりの成長”を演出するためには
 また利益調整について頭を悩ませなければなりません。

(例)年1億円の保険を5年後に解約する。
  『1億円×5年分×解約返戻率90%=4.5億円』
  →5年後に4.5億円の利益が増加する。

--------------------------------------------
■ 4.突然、税務上の取り扱いが変わることも
--------------------------------------------
 こういった「節税保険」は、すでに国税庁に目をつけられているモノなので
 突然、全額損金が認められなくなる可能もあります。

 実際、「逓増定期保険」については
 3月に国税庁が見直すことを生命保険協会に対して通告したため、
 大手各社は当面の販売を見合わせることになりました。

 突然、税務上の取り扱いが変わると、会計処理もまず変更されるので
 節税対策、利益調整どころではなくなります。

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【結論】
-----------------------------------------------------------------------
「企業防衛」「事業保障」「資産形成」といった言葉で
 勧められることも多い節税保険ですが、
「保険料の継続」「解約の制限」「全額戻しナシ」「法務リスク」
 といった問題もあり、今後の経営行動に大きな制約が課されます。

これからも自由に経営を行いたいのであれば、
利益調整目的で保険を使うべきではないでしょう。

保険は、「必要なときに必要な分だけ」使えばいいのです。

 
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  資金調達を考えると、資本金はいくらがいい?  
       
  A これから開業して、“創業融資”を申請する予定です。
新会社法スタート以降、理論上、資本金1円で法人設立をすることができます
が、実際のところどれくらいの資本金で設立すればよいのでしょうか?
そもそも、個人事業主での資金調達はやはり不利なのでしょうか?
 
 
 
 
  A あくまでも“資金調達”という視点から検証してみます。

まずは、1円で法人設立ができるからといって、
「本当に株式会社で起業した方がいいのか?」
を考えるべきです。

そして、法人で起業する場合、資金調達を考えれば
一つの“目安”は300万円
でしょう。

なぜなら、
「新会社法スタート以前は、有限会社が300万円だったから」
です。

【解説】
--------------------------------------------
■ 法人か?個人事業主か?
--------------------------------------------
 開業融資を申請する場合、法人で申請すべきなのかどうか?
 をとても迷われている方が多いです。

 一般論として、専門家は、
 「個人より、法人の方が金融機関からの
 社会的信用が高いから法人で起業すべきだ」
 と説明するケースが多いようです。

 しかしながら、実際のところ、これはケースバイケースです。
 もし、仮に自己資金が50万円しかない方が法人を設立しても、
 “法人だから”といって審査が絶対に有利であるとは言い難いでしょう。

 逆に、自己資金500万円持っている方で、
 しかも連帯保証人や担保等も用意して開業融資を申請する場合は、
 “個人”であっても金融機関としては資金を貸しやすいです。

 特にスモールビジネスで起業される場合、
 必ずしも「法人だから信頼性が高い」わけではありません。

 よって、これはケースバイケースです。
 (当然ですが、法人設立には各種のコストがかかります。)

 ただし……、

--------------------------------------------
■ ビジネスローンを申請するのなら……
--------------------------------------------
 今、大手金融機関の融資商品として、ビジネスローン
 というものがあります。

<ビジネスローンについて>
 http://www.mbs-con.com/bl1.html

 三井住友銀行の「ビジネスセレクトローン」や
 三菱東京UFJの「融活力」などのことです。

 当然、融資を受けるには、様々な条件があります。
 その一つとして、「法人であること」という条件があります。

 そうです。個人事業主では、これらのビジネスローンには
 申請することすらできません。
 ビジネスを拡大して、多額な借入も必要になる事業プランなら、
 ビジネスローンなどを申請できる法人のほうが有利です。

 それでは、法人を設立する際に
 どれくらいの資本金額が適切なのでしょうか?

 この相談は起業家から受けることが多いのですが、
 実際、法人設立をご支援されている
「行政書士」や「司法書士」の方からの相談も多いです。

--------------------------------------------
■ 専門家も説明に困っている??
--------------------------------------------
 この「300万円」というラインは誰もが提唱している資本金額だと
 思われます。

 起業家を支援しているプロでも
「資本金はどれくらいが妥当ですか?」
 との質問をされると、
「300万円ぐらいですね」
 と回答されている方が多いようです。

 しかし、
「どうして300万円なのですか?」
 という質問の回答には苦慮しているようです。


-----------------------------------------------------
■ 新会社法スタート以前は、有限会社が300万円
-----------------------------------------------------
 この300万円の根拠は、
「新会社法スタート以前は、有限会社が300万円だったから」
 というものです。
 
 この説明は、一見、曖昧なようにも見えますが、
 “資金調達”の視点で考えてみると
 実は、非常に説得力のある説明だといえます。

 新会社法以前は、創業者が法人を作る場合、有限会社なら
 300万円〜の資本金で設立し、国民生活金融公庫や
 信用保証付きの自治体融資制度などに申し込みをしていました。

 つまり、審査する側は、300万円〜の資本金の
 法人を審査することに“慣れて”いるのです。

 開業融資等の場合、コンピュータ審査中心のビジネスローン等とは違って
 “人間”中心の審査になりますので、この審査側の事情は見逃せません。


--------------------------------------------
■ 50万円、100万円の資本金額ではダメなのか?
--------------------------------------------
 それでは、50万円や100万円の資本金で設立した
 会社では本当にいけないのでしょうか?

 そんなことはありません。

 例えばコンサルティング業で、
「開業時に事務所を借りる資金として50万円〜100万円くらいの
 借入で十分で、今後、莫大な運転資金等が必要になることはない」
 という方にとっては、問題ないと思われます。

 そもそも、借入の必要が一切なければ1円でも構わないのです。

 しかしながら、開業して、数年内に
 数千万円くらいの資金調達が必要になると
 想定される事業計画や業種なのに、
「まずは資本金50万円で始めればいいかなあ……」
 という発想はあまりにも安易であり、ある意味、
 見る人が見れば、「経営者としての資質」まで疑われかねません。

   特に団塊の世代でこれから起業されようと
 考えている方は気をつけてください。
「現金(退職金)は十分にあるけど、まあ、ひとまずよくわからないから
 10万円で設立しておけばいいか……」
 と安易に考えないようにしてください。


--------------------------------------------
■ 実は、これは非常に難しい問題なのです
--------------------------------------------
「資本金額はどれくらいが適切なのか?」
 という結論も、ケースバイケースであって非常に難しい判断です。
 今回、解説した以外にも様々な要因を想定して判断する必要があります。

 多くの起業家からの資金調達相談を受けていますが、
 実は、その時点では「すでに手遅れ……」という方が
 結構いらっしゃいます。
「どうして設立時にきちんと考えなかったのか?」といつも思います。
 特に、新会社法がスタートしてからは、
 起業家自身が、このことについて十分に検討すべきです。

「1円で起業できる!!」
 というキャッチフレーズに踊らされている起業家が多すぎます。
 いや、司法書士や行政書士といった専門家もです。

 私たち、インブルームLLPでもいえることですが、
 起業予定者から開業の相談をされた時には、
 適切な起業、開業についてアドバイスをすべきでしょう。
 まさに今こそ、
「1円で起業できる!」というキャッチフレーズに踊らされないような
 適切なアドバイスが起業家には必要である、と強く感じています。


-----------------------------------------------------------------------
【結論】
-----------------------------------------------------------------------
 さて、結論です。なお、これはあくまでも“資金調達”の視点で考える
 という前提であり、一つの判断基準でしかありません。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1.まずは、法人か個人か?を考えてみましょう

 年商1000万円ほどの計画で、SOHOなどのスモールビジネスであって
 開業時や開業後の資金調達もさほど必要ないのなら、
 個人事業主でもよろしいと思います。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
2.法人を設立する場合

 「300万円」の資本金を基準に検討すべきです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
3.必ずしも300万円というわけでは……

 必ずしも300万円でなければ、ということではありません。

 (1)開業時、及び開業後の事業計画及びPL、BSの計画
 (2)開業時、及び開業後の資金調達計画
 (3)開業する業種特性
 (4)起業家の考え……

 などを総合的に検討して、資本金額は決定すべきでしょう。
 

 
      ▲(このページの先頭へ)  
  持っている株が吸収合併で消滅するので…  
       
  A 先日A社がB社に吸収合併されたため、以前から保有していたA社株式が失効し、
新たにB社株式の交付を受けました※。
B社から『この合併は税制上適格合併に該当する』という連絡を受けています。
今回の合併に関連して、私は確定申告を行う必要があるのでしょうか?

 ※A社は被合併会社(合併により消滅する会社)
  B社は合併会社(合併により存続する会社)
  A社、B社ともに非上場会社。
 
 
 
  A A社とB社の合併は適格合併に該当するため、確定申告を行う必要は
ありません。


【解説】
--------------------------------------------
■まず、適格合併とは?
--------------------------------------------
 適格合併とは、
 1.『株式保有要件』
     または
 2.『共同事業要件』
     のいずれかを満たす合併で、
 3.被合併会社の株主に対して、合併会社の株式以外の資産が
  交付されないもの
     をいいます。
 
 これらの要件を満たしていれば、適格合併に該当することとなります。
 
 組み合わせとしては、1と3を満たす場合、2と3を満たす場合
 のどちらかが考えられます。

--------------------------------------------
■株式保有要件、共同事業要件とは?
--------------------------------------------
 『株式保有要件』とは、企業グループ内の合併で、
 (1)合併会社と被合併会社が完全支配関係にある場合
                や
 (2)合併会社と被合併会社の間に50%超100%未満の支配関係がある場合
  で、
   合併後も合併会社が被合併会社の株式を100%または50%超100%未満
   継続して保有することが見込まれる場合をいいます。
 
 なお、上記(2)の場合には、
 80%以上の従業者の引継ぎと主要な事業の継続が必要です。

 『共同事業要件』とは、共同事業を営むための合併で、
 (1)80%以上の従業者の引継ぎ
          と
 (2)主要な事業の継続
        以外にも、
 (3)合併会社と被合併会社の主要な事業が相互関連していること、
 (4)相互関連する事業の規模(売上金額、従業者数、資本金額など)
   が大きく乖離しないこと(おおむね5倍以内)
        又は
   合併会社及び被合併会社で経営に従事していた双方の特定役員が
   合併会社の特定役員になることが見込まれていること※、
 などのすべての要件を満たしている場合をいいます。 
 
 (さらに、被合併会社の株主の数が50人未満である場合には、
  合併直前の段階で、被合併会社の発行済株式の80%以上を
  有する株主達が、合併により交付を受ける合併会社の株式
  の全部を継続して保有することが見込まれること、も必要です。)

 1または2を満たす場合でも、
 被合併会社の株主に対して、合併の対価として現金を交付するなど、
 合併会社の株式以外の資産が交付される場合には、
 適格合併には該当しません。

 ※特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役
  もしくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に
  従事している者をいいます。


--------------------------------------------
■適格合併に該当しないと??(非適格合併の場合)
--------------------------------------------
 では、適格合併に該当しない場合には、被合併会社の株主に対して、
 どのような課税関係が発生するのでしょうか?

 まず1つめは、「みなし配当課税」です。
 みなし配当課税についての詳細は割愛しますが、適格合併に該当しない
 場合、被合併会社の株主に対して、みなし配当課税が生じます。

 2つめは、「株式譲渡益課税」です。
  こちらについては、下記2つのケースに分けて考えると分かりやすいです。

 合併の際に、被合併会社の株主に対して、
 (1)合併会社の株式以外の資産が交付される(=非適格合併)
                ↓
      株式譲渡益課税の問題が発生します

 (2)合併会社の株式が交付される(適格合併・非適格合併ともに)
                ↓
      株式譲渡益課税の問題は発生しません

 これは、合併により交付された合併会社の株式について、
 「将来譲渡する時点まで課税の繰延べ認めてあげよう」という趣旨です。

 したがって、適格合併に該当すれば、合併時における課税関係は
 生じません。

-----------------------------------------------------------------------【結論】
-----------------------------------------------------------------------
 A社とB社の合併が適格合併に該当する限り、被合併会社の株主において
 「みなし配当課税」や「株式譲渡益課税」の問題は生じません。
 
 したがって、当該合併については確定申告を行う必要はありません。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  三角合併で、税務上のメリットは?  
       
  A 税務上のメリットを受けることができる「適格合併」について疑問が
あるのですが、いま話題になっている「三角合併」は、「適格合併」に
該当するのでしょうか?
 
 
 
  A 「三角合併」については条件を満たしていれば、適格合併に該当します。

【解説】
--------------------------------------------
■ 三角合併とは
--------------------------------------------
 平成19年5月1日に、昨年の会社法施行から1年間先延ばしされていた
 いわゆる「三角合併」がついに解禁されました。
 
 三角合併とは、
 A社とB社が合併する際に、
 存続会社であるB社が消滅会社であるA社の株主に対して、
 B社の株式ではなく、
 B社の親会社であるP社の株式を対価として交付する方法をいいます。
 
 三角合併は、「対価の柔軟化」の一種です。

--------------------------------------------
■対価の柔軟化と適格合併
--------------------------------------------
「対価の柔軟化」とは、会社法施行により
 吸収合併の際に消滅会社の株主に対して、
 存続会社の株式以外の金銭等を交付できるようになったことを指します。
 (会社法第749条1項2号)
 
 現金、親会社株式、新株予約権、社債などを
 合併の対価にできるようになりました。
 
 しかし、適格合併の要件には該当しないため、
 税務上の優遇措置は受けられません。
 被合併会社の株主に対して、合併会社の株式以外の資産が交付される場合、
 適格合併の要件には該当しません。

--------------------------------------------
■対価の柔軟化が税務的に優遇されない理由
--------------------------------------------
 対価が柔軟化されると、税務的な優遇措置は受けられない。
 ―――これはある意味当然といえます。

 例えば、現金を対価とした合併の場合、
 被合併会社であるA社の株主は、
 合併会社であるB社の株式ではなく、現金を取得することになります。

 結果的にみれば、A社の株主は、A社株式を手放して
 現金を手に入れたことになります。
 これは「保有していた株式を売却した」のと同じ結果になるのです。

 この場合の株式売却だけ税金がかからないというのでは、
 他の株式売却のケースとの整合性が取れません。
 だから、合併会社の株式以外の資産が交付される場合、
 適格合併の要件には該当しないのです。


  ※株式を売却したとみなされないためには、
   合併の対価として合併会社の株式のみ交付を受けるという
   「投資の継続性」が必要になります。

   また、合併当事会社においては、
   株式保有の継続性と主要な事業の継続性が要求されています。
   (適格合併に該当する場合、被合併会社においても
    資産の譲渡益課税は行われません。)
  
-----------------------------------------------------
■三角合併は、適格合併には該当しないのか?
-----------------------------------------------------
 では、「三角合併」は「適格合併」には該当しないのでしょうか?

 適格合併の要件の1つに、
「被合併法人の株主に、合併会社の株式のみが交付される」
 という内容があります。

 上記にあてはめて考えると「三角合併は適格合併とはなりえない」
 ということになります。

 しかし、三角合併が適格合併に該当しないということは、
   被合併会社の株主における株式譲渡益課税の繰延べ措置や
 みなし配当課税の不適用措置が適用されないことを意味します。

 それでは、せっかく法制化したにもかかわらず
 実務上、三角合併が行われなくなってしまいます。

 そこで、平成19年度税制改正では、
 三角合併に際して、親会社P社が合併会社B社の100%親会社であり、
 被合併会社A社の株主に対して、親会社株式のみが交付される場合には、
 被合併会社の株主のA社株式に対する「譲渡益の課税繰延べ」を認めています。


 参考までに、国税庁のホームページにアップされている
「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の
 平成19年度税制改正のあらまし」です。
          ↓↓↓
 http://www.nta.go.jp/category/pamph/sanrin/h19.pdf

 
 なお、P社の子会社に当たる合併会社B社がペーパーカンパニーである
 場合には、課税の繰延べ処理を認めていません。

 事業実体のないペーパーカンパニーを利用した企業買収を防止しよう
 という意思が、税制面からもみて取れます。

-----------------------------------------------------------------------【結論】
-----------------------------------------------------------------------
「対価の柔軟化」においては、基本的には適格合併に該当しませんが、
「三角合併」については条件を満たしていれば適格合併に該当します。
 
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  取締役会のない会社の役員報酬の決め方  
       
  A 当社は取締役会のない、取締役2名の会社です。

ふつう役員報酬は、「株主総会」で“報酬総額”を決め、
「取締役会」で“個々の役員への支給額”を決めると思うのですが、
当社のような取締役会のない会社の場合、個々の役員報酬の額は
どのように決めるのが正しい手続きなのでしょうか?
 
 
 
  A 「株主総会」で“個々の額”まで決めるのが基本です。

そうしない場合には、「株主総会」で、「代表取締役に一任する」か、
「取締役の協議に一任する」旨の決議をとっておきましょう。

【解説】
--------------------------------------------
■(1)基本は「定款で定める」のだけど…
--------------------------------------------
 取締役と会社の関係は、委任契約であるため、
 会社が報酬を支給する場合は、「定款」で定めるのが基本です
 (会社法361)。

 ただし、定款で報酬額を定めると、改定したいときには
 定款変更の手続きが必要になります。

 定款変更手続きは、株主総会の特別決議
 (原則、総議決権過半数以上の株主の出席と出席議決権3分の2以上の決議)
 が必要となり、たいへん面倒です。

 そこで、ほとんどの会社では、定款では定めず、
 「株主総会の決議」によって定めています(会社法361)。

---------------------------------------------
■(2)オーソドックスな決定方法は、実は慣習
---------------------------------------------
1)原則
 株主総会の決議により定める場合、“報酬の総額”だけでなく、
 “個々の支給額”も決議するのが原則です。

 しかし、株主にとっては、
 取締役の個々の報酬額がいくらかということよりも、
 全体として役員報酬の額がいくらなのか、ということが重要です。

 また、取締役にとっては、なるべく各々の報酬額まで
 株主に干渉されたくないというのが本音でしょう。

2)慣習
 そこで、株主・取締役双方に都合がいいように、
 「株主総会」では“報酬総額”を決め、
 「取締役会」で“個々の報酬”を決めるという方法が、
 ひろく採用されています。

 そして、この方法は、実は法律でそうしろといっているわけではなく、
 いわば慣習なのです。

--------------------------------------------
■(3)取締役会がない場合には?
--------------------------------------------
 ところで、会社法施行後、株式譲渡制限会社であれば、
 取締役会のない株式会社(取締役会非設置会社)も
 認められるようになりました。

 そこで、ご質問のように

 「取締役会のない場合はどうやって“個々の役員の報酬額”を
 決めればよいのだろう?」

 という疑問が生じたと思われます。

 まず解決法としては、(2)の1)原則にあるように、
 「株主総会」で“個々の額”を決定することです。

 では、「株主総会」で“報酬総額”だけを決議し、あとは
 取締役間で決めたい場合にはどうすればいいのでしょうか?

--------------------------------------------
■(4)ケーススタディ
--------------------------------------------
1)取締役が一人の場合

 取締役が一人の場合、そもそも配分を決める必要はありません。
 したがって、株主総会で決めた額を、その取締役が全額とってしまって
 構いません。

2)取締役が二人以上で“代表取締役”の設置を定めている会社

 取締役会非設置会社であっても、“代表取締役”の設置を定める
 ことができます。
 こういった会社の場合、株主総会で
 「代表取締役に一任する」旨の決議をとっておきます。
 その後、代表取締役が、取締役の意をくんで、個々の額を決定します。

3)取締役が二人以上で“代表取締役”の設置を定めていない会社

 取締役会非設置の株式会社の場合、
 取締役全員が代表権を有することになるので、
 登記簿上は、取締役全員が“代表取締役”と登記されますが、
 こういった会社の場合、「代表取締役に一任する」旨の決議をとって
 おくよりは、株主総会で「取締役の協議に一任する」旨の決議をとって
 おくほうが望ましいでしょう。
 
 ※ 2)のような会社でも、もちろん取締役の協議で決めてかまいません。

 なお、2)や3)の場合、税務調査などを考えると
 “株主総会の議事録”のほかに、“個々の支給額の決定書”を
 作成しておいたほうが無難でしょう。

--------------------------------------------
■(5)監査役や会計参与の場合
--------------------------------------------
 なお、取締役会非設置会社であっても、
 監査役や会計参与を置く場合が考えられます。

 監査役や会計参与が複数名いる場合には、定款、又は、株主総会で
 個々の額まで決めてしまうか、総額を決めて、
 “監査役間の協議、会計参与間の協議”で決めることになります。
 これは慣習ではなく会社法で明確に定められています
 (会社法379、387(1)、(2))。

 したがって、監査役や会計参与の個々の支給額については、
 代表取締役や取締役の協議に一任することは出来ないので注意しましょう。

-----------------------------------------------------------------------
【結論】
-----------------------------------------------------------------------
 取締役会非設置会社の “取締役個々の役員報酬の額”の決定方法は
 次のいずれかになります。

 1)株主総会で個々の額を決定する

 2)「代表取締役に一任する」旨の決議をとり、
   代表取締役が個々の額を決定する。

 3)「取締役相互の協議に一任する」旨の決議をとり、
   取締役間で個々の額を決定する。

 2)や3)の場合、“株主総会の議事録”以外に、“個々の額の決定書”
 などを作成しておいたほうがよいでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  合資会社をLLCに変更したいのですが?  
       
  A 会社法で、合同会社(LLC)ができるようになったら、合資会社をLLCに変更したいのですが、どうすればいいですか?  
 
 
  A 合資会社は、定款を変更して登記することにより、LLCに変更することができます。
LLCは、すべての社員が有限責任なので、ご質問のように、合資会社から変更するケースも多いと想定されます。

【解説】
----------------------------------------
■ LLC、合名会社、合資会社は同じ仲間
----------------------------------------
  会社法で、「日本版LLC(合同会社)」という新しい会社が出現します。
  LLCは「法人格がある」「定款自治」「有限責任」の3つの特徴をもち、
  1人でも設立できます。
  LLCや合名会社、合資会社は、総称して「持分会社」といいます。
   これらの会社には、組合的な規律が適用されるなど、同じような規定が適
   用されています。
------------------------------------------
■ 「持分会社」3社の違いは?
-----------------------------------------
  LLCと合名会社と合資会社では、有限・無限といった社員の責任や出資の内
   容に違いがあります。

  LLC・・・社員は「有限責任社員」のみ。
       出資について、労務出資や信用出資は認められず、「金銭や財産
      の出資」に限られる。

  合名会社・・・社員は「無限責任社員」のみ。
         出資については、「労務出資」や「信用出資」が認められ
         る。

  合資会社・・・社員は「無限責任社員」と「有限責任社員」が必要。
         1人では設立できない。
         出資については、「労務出資」や「信用出資」が認められ
         る。

  LLC・合名会社・合資会社は、社員の責任を変更することによって
  (定款変更)これら持分会社間の変更ができます。

  ※会社法では、持分会社間の変更を「持分会社間の種類の変更」といい、
   持分会社と株式会社間の変更を「組織変更」とよびます。

----------------------------------------
■ 合資会社をLLCにするには?
----------------------------------------
    合資会社をLLCにするには、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員
    の同意により、「その社員の全部を有限責任社員とする」という定款の変
    更が必要になります(会社法637、638条)。

   ※この定款の変更は、社員がLLCに対する出資の履行を完了していること
      が、効力発生の要件となります。

   持分会社間の変更は、定款変更が終わったら合資会社については「解散の
    登記」をし、LLCについては「設立の登記」をします(会社法919条)。

【結論】
「その社員の全部を有限責任社員とする」という定款の変更をし、合資会社については解散登記をし、LLCについて設立登記をしましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  合同会社の設立は本当に6万円?  
       
  A 『つまみ食い新会社法』では、「合同会社の設立費用は10万円」と記載されていますが、「合同会社の設立費用は6万円」と書いている本も見つけました。
どちらが正しいのでしょうか?
 
 
 
  A 法的には「合同会社の設立費用は10万円」が正解です。
「合同会社の設立費用は6万円」と誤解している専門家が多いのも事実です。

【解説】
--------------------------------------------
■1 会社設立時の税金は登録免許税+印紙税
--------------------------------------------
   会社の設立には、「登録免許税」と「印紙税」がかかります。
  「登録免許税」は、法務局に設立申請書類を提出する際に必要になりま
    す。
   決められた金額の収入印紙を購入し、申請書類に貼り付けるのです。
  (株式会社は資本金の7/1000、最低15万円。
    合名会社・合資会社・合同会社は6万円)「印紙税」は定款の原本を作成
    した際に、定款に4万円の収入印紙を貼り、消印をする必要があります。

----------------------------------------
■2 合同会社は印紙税がいらない?
----------------------------------------
  「合同会社の設立費用は6万円」という根拠は「合同会社の場合、登録免
    許税だけでよい」というものです。
  しかし、印紙税法上は、合同会社も含め会社の定款には印紙税4万円がか
   かります。

   詳しい解説は以下のとおりです。  
================================
   印紙税の課税文書については、印紙税法別表第1に定められているが、第
    6号に「定款」がある。
  「定款は、会社の設立のときに作成される定款の原本に限るものとす
    る。」
   上記のような課税の定義があり、会社法施行前の現在では、株式会社、有
    限会社、合名会社、合資会社の定款の原本は課税文書に該当する。
   さて、会社法整備法293条において、会社法の施行に伴う印紙税法の改正
    内容が規定されている。
   その中には、「合同会社の定款は課税文書から除く」という内容の記載は
    ないため、会社法が施行されれば会社法上の会社に該当する合同会社の定
    款は自然に課税文書に該当する結果となるであろう。  
================================

   では、なぜ専門家でも「印紙税はいらない?」と誤解するのでしょうか?
   それは、合名会社・合資会社・合同会社の場合、設立時に「印紙」を貼っ
    た定款を他人に見せる必要がないからなのです。
 
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■3 「脱税行為」は勧めたくない!
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   株式会社の場合、公証人役場で定款認証を受ける際に定款の「原本」を提
    出する必要があるので、印紙4万円を貼らなければ設立の手続きが先に進
    みません。
   しかし、合名会社・合資会社・合同会社の場合、定款認証を受ける必要が
    ないので、定款の「原本」を他人に見せる必要はなく、印紙4万円を貼ら
    なくても設立ができてしまうのです。

   合同会社などの場合、「バレなきゃいい」という気持ちで、定款に印紙を
    貼らないのも自由ですが、税務調査で指摘された場合は、印紙税額の3倍
    に相当する過怠税がかかります(ただし一定の場合は1.1倍)。
  「合同会社の設立費用は6万円」とうたうことは、印紙税を貼らない脱税行
    為を専門家が勧めることになります。
   私たちとしては、専門家の良心を裏切ることは当然したくないので、「合
    同会社の設立費用は10万円」と法的に正しい金額を記載しています。

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■4 電子認証の場合は印紙税はいらないが……
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   定款については、近年、電子データによる「定款認証」もできるようにな
    っています。
   この場合は、定款も電子データで作成しますので、株式会社でも印紙税4
    万円は不要になります(公証人役場に払う定款の認証手数料5万円は変わ
    りません)。
   ただ、電子定款認証を行うには、電子証明書の発行料や電子署名の専用ソ
    フトなどが必要になります。
   これらをそろえるには約10万円もかかります。
   電子定款認証を専門家に依頼することもできますが、この場合、専門家へ
    の報酬もちょっと高くなることが多いようです(なお専門家に頼んだとし
  ても、実費も含めて考えたら、当然「電子定款認証」のほうが安くすみま
  す)。

   なお、「合同会社の設立費用は6万円」と記載している本には、同時に
   「株式会社の設立費用は、定款の印紙税込みで24万円」という内容も書か
    れているので、「合同会社は電子データで定款をつくるから6万円」とい
    った意図ではなさそうです。

【結論】
電子定款でもない限り、あらゆる会社の定款には印紙税4万円が必要です。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  合資会社を合同会社に変える場合の手続は?  
       
  A 現在、無限責任社員1名、有限責任社員1名の「合資会社」を運営しておりますが、新会社法施行で設立できるようになった「合同会社」に変更しようと思っています。
どんな手続を行えばよいのでしょうか?
 
 
 
  A 合資会社から合同会社へ変更するためには、「定款を変更」し、
「種類変更の登記」という手続が必要です。
種類変更前の持分会社(合資会社)を解散し、同時に種類変更後の
持分会社(合同会社)を設立するという手続を取ります。

(会社法第919条、第932条)

【解説】
--------------------------------------------
■ 合同会社と合資会社は同じ分類
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 会社法に定める会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の
 4種類です。

 この4種類の会社は、大きく、
 「株式会社」と「持分会社」の2つの類型に分けられ、
 「持分会社」には、合同会社、合名会社、合資会社の3つの会社が
 含まれます。

 つまり、合資会社と合同会社は、「持分会社」という同じ分類の会社なので
 す。

 <会社の分類>
 「株式会社」‥‥株式会社
 「持分会社」‥‥合同会社、合名会社、合資会社

--------------------------------------------
■ 持分会社の種類変更手続き
--------------------------------------------
 上記をふまえ、合資会社から合同会社へといった持分会社同士の変更を
 行う場合には、「持分会社の種類の変更」に過ぎないということで、
 「種類変更」という手続を取ることになります。

 また今回は、「無限責任社員」と「有限責任社員」で構成される合資会社
 から、「有限責任社員」のみで構成される合同会社に変更することになる
 ため、「社員全員を有限責任社員とする旨の定款の変更」を行うことに
 なります。

--------------------------------------------
■ 「種類変更」と「組織変更」の違い
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 ちなみに、合同会社から株式会社への変更というのは、持分会社から
 株式会社になるということで、全く違う分類の会社に変更することになる
 ため、「種類変更」ではなく、「組織変更」という手続を取ることになりま
 す。

 「種類変更」と「組織変更」を比べて、どちらが手間がかかるかというと、
 違う分類の会社に変更することになる「組織変更」の方が、かなり手間が
 かかります。
 「組織変更」は債権者保護の手続をとったり、合同会社の社員全員の同意を
 あらかじめ得る必要があるからです。

 「種類変更」には、上記のような「組織変更」に関する規定の適用も
 ありません。

 <会社の変更>
 「合資会社」→「合同会社」‥‥種類変更
 「合同会社」→「株式会社」‥‥組織変更

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■ 解散と設立の登記
--------------------------------------------
 合資会社から合同会社への種類変更の登記申請手続ですが、「合資会社
 種類変更による解散登記」と、「合資会社種類変更による合同会社設立
 登記」を同時に申請します。

 登録免許税は、合資会社解散で3万円、合同会社設立で3万円の合計6万円に
 なります。

【結論】
合資会社から合同会社への変更は、「種類変更の登記」が必要です。
(組織変更ではありません)
費用は、最低でも、登録免許税が6万円かかります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  企業連携に合同会社・・・そのワケは?  
       
  A 最近、大企業が合弁で合同会社(日本版LLC)を設立した、というニュースを見聞きします。
合同会社というと、スモールビジネス向けの企業というイメージでしたが、大企業にもメリットがあるのでしょうか?
 
 
 
  A 合同会社の特徴には、企業間の連携に生かせそうなメリットがいっぱいです。
「有限責任」「定款自治」「損益の分配割合の自由」のほか、とても重要な営業上のメリットもあります。

【解説】
 2006年5月1日、会社法が施行され、新たな会社形態として「合同会社」が
 創設されました。

 株式会社が、資本という会社財産によって結びつくという意味で、
 「物的会社」と呼ばれるのに対し、合同会社は、出資者の人的結合に
 よって成り立つという意味で、「人的会社」であると呼ばれています。

 このため、合同会社は、少人数で立ち上げるスモールビジネスのための
 会社形態と考えられています。

 しかし最近は、大企業が合同会社を設立したり、複数の大企業間、
 中小企業と大企業間のジョイントベンチャーなどに合同会社を
 活用する事例も見られます。

 実は合同会社には、企業連携に生かせそうなメリットがいっぱいなのです。
 合同会社の特徴を振り返りながら、そのメリットを一つ一つ
 見ていきましょう。

--------------------------------------------
■ 出資者は全員有限責任である
--------------------------------------------
 合同会社の出資者(社員)の責任は、株式会社の株主と同様に出資額を
 限度とする「有限責任」です。

 合名会社や合資会社には無限責任社員が必要です。
 この無限責任社員は、会社の債務について、自身の財産をもって弁済する
 責任を負わねばなりません。

 これに対し、合同会社の出資者は、全員が有限責任社員であるため、
 誰も出資額を超える責任を負うことはありません。

--------------------------------------------
■ 会社の機関等を自由に設計できる(定款自治)
--------------------------------------------
<1> 機関設計
 合同会社は、“出資者イコール経営者”であるため、株式会社のように
 “出資者と経営者が分離”していることを前提としたガバナンスの仕組み
 (機関)は必要ありません。

 しかし、出資者がそれを望むなら、そのような機関を設けることも
 自由です。
 それを定款に定めれば良いだけです。

 合同会社は、原則として、
 『社員(出資者)全員が業務執行に当たり(第590条)、
  その意思決定は過半数をもって決する』とされていますが、
 これに拘らず、
 『特定の社員を業務執行社員(役員)とし、
  さらにその中から代表社員(社長)を定める』ことができます。

 後者のように、業務執行社員と代表社員を設けるのが一般的であり、
 実際の合同会社を運営する上で現実的です。

 業務執行にあたっての意思決定は『業務執行社員(役員)の過半数を
 もって決する』こともできますし(第591条1)、場合によっては、
 機動性を確保するため、『代表社員(社長)の意思だけで決する』定めを
 定款に盛り込むことも可能です(第591条1)。

<2> 社員の種類
 社員は1名(又は1社)以上いればよく(第641条1項四号参照)、
 数に制限はありません。
 合同会社の社員(出資者)には次の3種類が設けられています
 (第591条、第599条3項、4項)。

 (1)社員   
   合同会社にお金だけを出資し、会社の業務執行には一切口を出さない
   社員(出資者)です。   

  (以下、ここでは、この社員を、社員全体を指す「社員」と区別するため
   「一般社員」と呼びます。)  

 (2)業務執行社員   
   いわゆる合同会社の役員で、会社の業務を執行する社員(出資者)
   です。

 (3)代表社員   
   いわゆる合同会社の社長で、会社を代表し、会社の業務に関する
   一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する社員(出資者)
   です。

 これらの社員ステータスによって、社員の登記のしかたも変わってきます。

-------------------------------------------------
■ 損益分配割合が出資比率に縛られない
-------------------------------------------------  
 合同会社などの持分会社は、出資比率に縛られず、出資者間の
 「損益分配割合」を定款で自由に定めることが可能です。

 持分会社の場合は、株式会社と異なり、資本金、資本剰余金、利益剰余金
 といった純資産の部の各金額を、社員ごとに区別(=持分)して計算する
 必要があります。

 そのため、社員ごとに「損益分配割合」を変えることが許される仕組みに
 なっています。

 ここでいう「損益分配割合」とは、毎期、合同会社で生じた利益や損失を、
 帳簿上、「各社員にどのような割合で帰属させるのか」という、
 その割合を指します。

 損益分配割合は、さらに、利益分配割合と損失分配割合に分かれ、
 この2つをそれぞれ別々に定款で定めることが可能です。

 つまり、「利益がでたら6対4で、損をだしたら5対5にする」などを定款に
 定めることができます。(第622条2項)

 (利益分配割合についてのみを定款で定めた場合、損失分配割合は、
  利益分配割合と同じであるものと推定されます)

 損失はともかく、利益分配割合が出資比率に縛られず、定款
 (当事者の合意)で自由に設定できる点が、合同会社の大きな魅力です。

 出資金額が少ない社員でも、利益剰余金の持分が多ければ、
 出資比率以上の配当を受けることができます。
 ここに、合同会社を利用する意味があります。

--------------------------------------------------
■ 議決権割合を自由に設定できる
-------------------------------------------------
 合同会社の業務執行は、業務執行社員(役員)の過半数をもって
 決定しますが、定款に別段の定めをすることが可能です(第591条1項)。

 例えば、A社、B社とC社の3社が業務執行社員だとしても、A社だけで
 業務執行を決定すると定款に定められます。

 また、代表社員が業務執行を決定すると定めることも可能です。

 このように、業務執行に関し主導的立場にある社員に意思決定権を与え、
 業務執行の機動力を確保できます。

-------------------------------------------------
■ 法人が役員や社長になることができる
-------------------------------------------------
 【職務執行者について】
  ところで、合同会社の業務執行社員が法人である場合には、実際の
  業務執行は自然人が行う必要があります。

  これを「職務執行者」といい、その法人に選任された人でなければ
  なりません(第598条1項)。
  つまり、職務執行者は、その法人から派遣されて合同会社の業務執行の
  職務を行う人間です。

  この職務執行者その人が社長や役員になるのではなく、あくまで社長や
  役員は派遣元の法人です。
  そして、その法人は職務執行者の首をいつでもすげかえられます。

  「わが社の職務執行者は、今度は誰々にします。」ということを
  他の出資者に通知するだけで構わないのが原則です(第598条1項)。


 【登記について】
  職務執行者は、業務執行社員である法人の取締役会などで選任される
  必要がありますが、登記にあたっては、代表社員の職務執行者に
  ついてのみ、その選任を証する書面(取締役会議事録等)を添付します。

  有限責任事業組合(LLP)の登記の場合には、出資企業全社の
  職務執行者の選任を証する書面(取締役会議事録等)の添付が要請され、
  職務執行者全員の氏名と住所までが登記されることに比較すると、
  合同会社の登記はかなり緩いです。

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■ 社員に関する事項の登記
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 法人が合同会社の代表社員(社長)である場合は、「法人の所在地」及び
 「名称」と並んで「職務執行者の住所」及び「氏名」も登記されます。

 しかし、法人が単なる業務執行社員である場合には、その「法人の名称」
 のみ登記され、法人の所在地や職務執行者については登記されません。

 社員のステータスに応じて、登記される事項は次の様になります

  (1) 一般社員  
   一切登記はされません。

  (2) 業務執行社員  
   「名称」のみが登記されます。
   出資者サイドで職務執行者を選任しなりませんが、その人の住所と
   氏名は登記不要です。

  (3) 代表社員  
   「所在地」と「名称」が登記されます。
   出資者サイドで職務執行者を選任しなければならず、その人の
   「住所」と「氏名」も登記事項になります。

− − − − − − − − − − − − − − − − − −
  例えば、次の4社で合同会社を作り、業務執行社員がそれぞれの
  職務執行者を選任したとします。

  株式会社××商事(代表社員)職務執行者 青山太郎  
  株式会社△△工業(業務執行社員)職務執行者 赤坂次郎
  株式会社□□興産(業務執行社員)職務執行者 三田三郎
  株式会社◇◇開発(一般社員)

  この場合、登記簿の社員に関する事項欄は、次の様に登記されます。

 [社員に関する事項]
  業務執行社員 株式会社××商事
  業務執行社員 株式会社△△工業
  業務執行社員 株式会社□□興産

  東京都中央区銀座九丁目10番11号
  代表社員 株式会社××商事
  東京都港区六本木八丁目9番10-112号
  職務執行者 青山太郎

 (※株式会社◇◇開発については一切登記されません。
  株式会社△△工業と株式会社□□興産の所在地や職務執行者については
  登記されません。)

-------------------------------------------------
■ 合同会社の名刺
-------------------------------------------------
 このように登記されるということで、名刺の表記は次のようにすることが
 できます。

  合同会社○○産業
  社長(代表社員) 株式会社××商事
  職務執行者 青山太郎

  合同会社○○産業
  業務執行社員 株式会社△△工業
  職務執行者 赤坂次郎

 このように表記された名刺は、合同会社○○産業に株式会社××商事や
 株式会社△△工業の信用力が加わることになり、合同会社の強力な
 営業ツールになります。

-------------------------------------------------
■ その他
-------------------------------------------------
 旧商法下では、社債の発行は、株式会社だけに認められた特権でした。
 しかし、新会社法において、合同会社にも社債の発行が認められました
 (第676条)。
 社債が発行できるということは、出資や借入によらない外部からの資金調達
 が可能になります。

 また、旧商法下では、人的会社から株式会社への組織変更は認められて
 いませんでした。

 しかし、新会社法では、合同会社から株式会社への組織変更(第746条)が
 認められています。

 これにより多額の資金を調達したり、IPOを目指す必要が出てきた段階で、
 合同会社を解散することなく、スムーズに株式会社へ移行できます。

 ※ ただし社債の発行や組織変更の自由については、新会社法においては
   合同会社だけの特徴というわけではありません。

【結論】
有限責任、定款自治、損益分配割合の自由など、合同会社はスモールビジネス
だけでなく、その自由度や手軽さを生かして、企業間の連携にも活用できる
会社形態といえます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  合同会社の定款に4万円は、いる?いらない?  
       
  A 現在、合同会社を設立することを検討しています。
合同会社の場合、設立時の定款の印紙代4万円がかからないと聞きました。
しかし、定款には印紙を貼る必要があるという話も聞きます。
いったい、どういうことなのでしょうか?
 
 
 
  A 合同会社であっても、定款を紙面で作成する場合には、
4万円の印紙を貼らなければいけません。


【解説】
--------------------------------------------
■ 合同会社の定款
--------------------------------------------
 合同会社を設立する際には、株式会社と同様に定款を作成するところから
 会社設立の準備がはじまるので、まずこの定款を説明します。

 定款とは、会社の組織や運営に関する基本原則を記した書類のことで、
 会社のルールブックともいえる重要なものです。

 定款の作成は、会社設立準備の一つのポイントになります。

 合同会社の設立時の定款は、社員(出資者)全員によって作成され、
 署名または記名・捺印を行います。

 そして、この合同会社の設立時に作成された定款を
 「原始定款」といいます。

--------------------------------------------
■ 合同会社の定款は、定款認証の必要がない
--------------------------------------------
 合同会社の定款は、株式会社の定款と違って公証人の認証は不要です。

 つまり、社員間で定款を作りさえすれば、
 公証役場で認証を受けなくても正式な定款になります。

 ちなみに、株式会社の場合は、公証役場での定款認証が必須なので
 定款認証費用として、公証役場に約5万2千円払う必要があります。

--------------------------------------------
■ 「紙」の場合は、株式会社同様に4万円
--------------------------------------------
 合同会社の定款は、上記のとおり公証人の認証が不要なため、
 公証役場での定款認証費用(約5万2千円)はかかりません。

 ただし、設立時に定款を紙で作成すれば、
 その原本1通に株式会社と同様に、収入印紙4万円を貼付する必要があります
 (印紙税法 別表第一 第6号文書)。

 「合同会社の定款は印紙代4万円が不要」といったことが
 書かれている本などがありますが、
 実際は収入印紙を貼ることが、印紙税法で決まっているため、
 印紙代4万円は必要というのが正しいです。

 この印紙代は、株式会社・合同会社といった違いや、
 定款認証を受ける、受けないには関係ありません。

--------------------------------------------
■ 印紙代不要説のわけ
--------------------------------------------
 実際は4万円が必要なのにもかかわらず
 なぜ印紙代が不要と言われるのでしょうか。

 それは、合同会社の場合、定款認証を受ける必要がないので、
 定款の「原本」を他人に見せる必要もなく、
 印紙4万円を貼らなくても、会社の設立ができるからです。

 ちなみに、株式会社の場合は、公証役場で定款認証を受ける際に
 定款の「原本」を提出する必要があるので、印紙4万円を貼らなければ、
 設立の手続きが先に進みません。

 そのため、紙で定款を作成する際には、必ず印紙代4万円が必要です。

 合同会社は、印紙を貼らなくても、設立できるからといって、
 定款に印紙を貼らずにおくと、大きなペナルティを受けることがあります。

 たとえば、税務署への会社設立の書類提出や
 税務調査等によって指摘されることがあります。
 この際、紙で作成した定款の原本に収入印紙が貼っていなければ、
 4万円の税金が12万円※になります。

 ※ 印紙税の本税+本税の2倍の過怠税で3倍
   税務調査等を予知したものでなく、自主的に納付の場合は、
   10%の過怠税で1.1倍

 法令違反(コンプライアンス違反)でもあるので、
 チェックされなくても4万円の印紙は、
 定款の作成時に貼っておきましょう。

--------------------------------------------
■ 定款を電子データで作成すると……
--------------------------------------------
 合同会社の定款であっても収入印紙代として4万円かかりますが、
 この印紙代を不要にする方法があります。
 それは、合同会社の定款を紙ベースで作成するのではなく
 電子データにて作成する方法です。
 電子定款にすることにより、印紙税の4万円を払わずに済みます。

 ※ 電子定款の方法はこちらこちらをご参照ください。

【結論】
合同会社の定款は、対外的に見せる必要がないとはいえ、
電子定款でもない限り、法律的に4万円の収入印紙を貼る必要があります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPってなんですか?  
       
  A 今日たまたま新聞を見ていたら、「株式会社と民法上の組合の長所をあわせ持つ、
LLPという新たな事業体の活用が可能になる」と書いてありました。
LLPとはどのようなものなのか?
すごく興味があります。

「株式会社と民法上の組合の長所をあわせ持つ」という意味を、もう少し詳しく教えてください。
 
 
 
  A LLPは、株式会社の長所である「有限責任」と、民法上の組合の長所である「内部自治の徹底」「組合員課税」という両方の特徴を持った、新しい事業体です。
 
【解説】
LLPは、株式会社や有限会社・合資会社・合名会社などと並ぶ、「有限責任事業組合=リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ」という新しい事業体です。
2005年8月よりその設立が認められています。
今回はLLPの具体的な特徴をみていきましょう。

◆具体的な特徴 1 「有限責任」
  有限責任とは、出資者(LLPの場合は組合員)が、原則、出資した金額の範囲
  までしか責任を負わない制度です。
  たとえば、100万円出資した組合員は、たとえLLPにそれ以上の債務があった
  としても、100万円を超える責任は負わなくていいのです。
  これにより、組合員はリスクが限定され、事業に取り組みやすくなります。

◆具体的な特徴 2 「内部自治の徹底」
  内部自治とは、組織の内部ルールが法律によって細かく定められるのではなく、
  組合員同士の話し合いで決定できることです。
  これには2つの特徴があります。
  まず1つ目は、出資額の比率とは関係なく「損益・権限の分配ができる」という点
  です。
  たとえば、お金がないため10%しか出資していない組合員でも、労務や知的
  財産、ノウハウなどを提供することにより、その貢献度をふまえて50%の分配を
  受けることができます。
  次に2つ目は、取締役などの会社の機関を作らなくてもよく内部組織を柔軟に
  作れる、という点です。
  つまり、LLPのガバナンス(企業統治)は、組合員間の話し合いで柔軟に決める
  ことができるのです。
  これにより、共同事業を行うときなど、組合員のインセンティブを高めやすくなり、
  ニーズに応じた柔軟な組織運営ができます。

◆具体的な特徴 3 「組合員課税」
  組合員課税とは、LLPの段階では課税せずに、組合員に直接課税する仕組み
  です。
  LLPの事業で出た利益は、LLP段階では法人税は課されず、利益が分配された
  先の各組合員のもとで課税されます。
  また、LLPの事業で損失が出たときは、出資の金額を基礎とした一定の範囲内
  で、組合員の他の所得と損益通算(黒字と赤字を一本化)できます。
  ちなみに、LLPには出資金額の下限がないため1円でもつくれます。
  しかし、最低2人の組合員が必要なので、LLPとしての最低出資金額は2円という
  ことになります。

【結論】
LLPは、大企業同士、大企業と中小企業、産学連携、専門人材同士などの様々な共同事業での活用が見込まれている新しいタイプの事業体です。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPはどうやってつくるんですか?  
       
  A LLP法が施行されたら、ぜひとも自分達でつくってみたいと考えています。
しかし、お恥ずかしい話、私には法律の知識がないので、どうやってLLPをつくればいいのか分かりません。
はたしてLLPは簡単につくれるのでしょうか?
できれば具体的な手続きを教えてください。
 
 
 
  A LLP契約の締結⇒出資金の払い込み⇒組合契約の登記、という手続きを経ることによって、LLPは比較的簡単につくれます。

【解説】
LLPは、
  1.組合員が、LLP契約を締結する
  2.契約に記載した出資金を全額払い込む
  3.事務所の所在地を管轄する法務局で組合契約の登記をすることによって
    成立し、事業を行うことができます。
以下で、上記1〜3の具体的な手続きの内容を、もう少し詳しくみていきましょう。

◆具体的な手続き 1 「LLP契約を締結する」
  LLP契約(有限責任事業組合契約)は、LLPの運営の基本となることを定め
  ます。具体的には、
    (1) 組合の事業
    (2) 組合の名称
    (3) 組合の事務所の所在地
    (4) 組合員の氏名又は名称(法人の場合)及び住所
    (5) 組合契約の効力が発生する年月日
    (6) 組合の存続期間
    (7) 組合員の出資の目的とその価額
    (8) 組合の事業年度 等
  です。
  組合員はこれらの事項を記載した契約書を作成し、全員が署名又は
  記名押印(実印)します。

◆具体的な手続き 2 「出資金を全額払い込む」
  契約書が完成したら、次に、契約書に記載した出資金を全額払い込む必要があり
  ます。
  現金だけでなく、貸借対照表に計上可能な現物財産(不動産、株券等)を出資
  することも可能です。
  ただし、労務出資については認められません。
  各組合員が出資金を全額払い込んだ(現物出資を全部納付した)段階で、LLP
  契約の効力は発生します。

  ※株式会社と同様に、「金融機関」に払い込まなければならないかどうかは、
   現在法務省のほうで検討中とのことです。
  ※「不動産」「株券」の出資には、注意が必要です。
   詳しくは、このメルマガ一番下の“うら編集後記”をご覧下さい。

◆具体的な手続き 3 「法務局で組合契約の登記をする」
  最後に、LLP契約の登記は、「LLP契約書の原本」と「出資の払い込みを証明
  する書面」「各組合員の印鑑証明書」などを持って、LLPの事務所の所在地を
  管轄する法務局で申請します。
  具体的な登記事項は、
    (1) 組合の事業
    (2) 組合の名称
    (3) 組合の事務所の所在地
    (4) 組合員の氏名又は名称(法人の場合)及び住所
    (5) 組合契約の効力が発生する年月日
    (6) 組合の存続期間
    (7) 組合員が法人の場合の職務執行者
    (8) 組合契約で特に解散事由を定めた時はその事由
  です。
  債権者などの第三者に対しては、登記が終わってはじめて、「私達組合員は有限
  責任ですよ!」と主張(対抗)することができます。
  なお、株式会社と異なり、「公証人による定款認証の手続き」はいりません。
  また、1円会社と違って、「経済産業省の認定や許認可」もいりません。

【結論】
期間は約10日、登録免許税は6万円。
株式会社と比べて時間も費用もかからず、簡単にLLPをつくることができます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPで「投資ファンド」は作れますか?  
       
  A LLPですが、出資者を集めて投資活動を行う「投資ファンド」としてLLPを活用することも可能なのでしょうか?  
 
 
  A LLP(有限責任事業組合)では、「共同事業要件」が求められているため、「投資ファンド」として活用するのは難しいです。

【解説】
 LLPには組合員全員が「有限責任」という利点があるため、
 「投資ファンド」に活用できないか、と考える方が大勢いらっしゃいます。
 (従来から「投資ファンド」で使われている「民法上の組合」は組合員全員
 が無限責任、「匿名組合」は業務執行者である営業者が営業上の全責任を負
 う、「投資事業有限責任組合」は業務執行者が無限責任)

 しかし、LLPには「共同事業要件」があるため、「投資ファンド」として
 活用するのは難しいと考えます。

----------------------------------------
■共同事業要件とは
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 そもそもLLPは、組合員全員がそれぞれの個性や能力を活かしつつ、共通
 の目的に向かって事業に参加するという制度です。
 そのため、組合員の全員が業務執行に参加しなければなりませんし重要な意
 思決定については全員の同意が必要です(共同事業要件)。

 どうしてこれらの共同事業要件が決められているのかというと、出資のみの
 組合員を排除するためです。
 出資のみして損失の取込だけを狙う、つまり租税回避に使われることを防ぐ
 狙いがあるのです。

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■投資ファンドでは……
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 こうした事情から、多くの人からお金を集めて、それをファンドマネージャ
 ーに一任して運用させるという「投資ファンド」は、全員が事業に参加する
 わけではないので、LLPの共同事業要件を満たせません。

 組合員全員がファンド資産の運用にたずさわる場合などは別ですが、通常
 「投資ファンド」にLLPを活用することは難しいでしょう。
 「投資ファンド」を作りたい方は、従来どおり民法上の組合(任意組合)・
 匿名組合・投資事業有限責任組合をご活用ください

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■共同事業要件には注意が必要
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 LLPでは、組合員全員が業務執行をしなければなりません。
 これは組合員の権利であり、義務でもあります。
 業務執行の全部を他の組合員に委任することはできません。

 そのため、一部の組合員が「代表」や「会長」といった肩書きを使用する
 と、「その組合員だけが業務執行をしているのではないか?」と疑われる可
 能性があります。
 「共同事業要件」が満たされなければ、「権利能力なき社団」としてLLP
 に法人税が課せられるおそれも否定できません。
 「全員が業務執行をしています!」とアピールするのであれば、「代表」
 「会長」「理事長」といった肩書きは避けたほうがよいでしょう。

 なお、業務執行を広報担当・財務担当・営業担当など、役割を分担すること
 は可能です。

【結論】
全員参加型の組織を作りたい時だけ、LLPをご検討ください。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPとLLCはいったい何が違うんですか?  
       
  A 「日本版LLC=リミテッド・ライアビリティ・カンパニー」というのを雑誌で見かけました。
「LLP」と「日本版LLC」。確かに名前は似ていますが、「P」と「C」で1文字違うのですから、何か違いがあるのですよね?
そこで恐縮ですが、「LLP」と「日本版LLC」の違いを教えてください。
 
 
 
  A 両者の最大の違いは、「LLP」が「組合」であるのに対し、「合同会社(=日本版LLC)」は「会社」である、という点です。
「合同会社」には法人格がありますが、「LLP」に法人格はありません。
なお、「合同会社」は新会社法施行後に作られる新しいタイプの会社です。

【解説】
 「合同会社」は、株式会社、合資会社、合名会社と並ぶ「会社組織」の中の
 1つの形態です。
 来年に予定されている、新会社法施行後に作れるようになります。
 「合同会社」は、「有限責任」「内部自治の徹底」という2つの特徴を持っ
 ています(「有限責任」「内部自治の徹底」については、参照)。

 この2つは、「LLP」にも共通する特徴です。
 それでは、両者の異なる部分を比較しながら、「合同会社」の特徴を見てい
 きましょう。

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■LLPとの違い・1 合同会社は『法人課税』
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  合同会社は「会社組織」であるため、法人格があります。したがって、課
  税の仕組みは法人課税となります。つまり、合同会社が稼いだ利益に対し
  て「法人税」がかかります。
  一方、LLPは「会社」ではなく「組合」なので、法人格がありません。
  したがって、課税の仕組みは構成員(出資者)課税となります。つまり、
  LLPに法人税はかからず構成員の方で課税されます。

  なお、合同会社の場合、法人税課税後の利益は「配当」として出資者に支
  払うことができますが、受け取った出資者の「配当」に対しても、再び税
  金がかかります。

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■LLPとの違い・2 合同会社は『一人でも作れる』
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  合同会社は、社員(出資者)1人でも作れます。これに対し、LLPは構
  成員(出資者)が最低2人いないと作ることができません。
  また、合同会社は、「株式会社・合資会社・合名会社」に組織変更ができ
  ますが、LLPに組織変更することはできません。

  LLPは、「民法組合」に組織変更できますが、合同会社・株式会社・合
  資会社・合名会社に組織変更することはできません。つまり、「会社」と
  「組合」をまたぐ組織変更はできません。

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■LLPとの違い・3 合同会社には『共同事業性の例外』がある
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  合同会社は、原則として、社員(出資者)全員が業務を執行する権限を持
  ちます。いわゆる「共同事業性」と呼ばれるもので、社員全員が代表取締
  役というイメージです。
  しかし、定款または社員全員の同意によって、一部の社員に業務の執行を
  委ねることもできます(「共同事業性の例外」)。

  一方、LLPには合同会社のような例外はなく、構成員(出資者)全員
  が、業務の執行にかかわることが必要です。
  ここでいう業務の執行とは、意思決定とそれに基づく業務のことを指しま
  す。

【結論】
合同会社は
1.法人課税
2.出資者が1人でも「会社」をつくることができる
3.「共同事業性の例外」がある
という点で、LLPとは異なります。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPの損失は、どこまでが必要経費?  
       
  A 実際にLLPを作ってみました(個人組合員のみ)。
うちのLLPでは、初年度どうやら損失が出そうです。
その損失は各組合員に分配されるとのことですが、「個人の確定申告において、まるまる全額が損失になるわけではない」 と聞きました。
いったいどういうことでしょうか?
 
 
 
  A LLPの事業で損失が出たときには、出資の価額の範囲内で、 組合員個人の他の所得と損益通算することができます。

【解説】
LLPの個人組合員に対しては、「LLPの事業から生じた損失があるときは、
組合員個人の出資金額(調整出資金額)を 超える部分については、その年分
の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入しない(損益通算できない)」 とされています(租税特別措置法第27条の2)。

例えば、1人当たり70万円出資して 2人でLLPを作ったとします(損益の分配割合は50%)。
初年度に200万円の損失が出た場合、 100万円が個人組合員に分配されます。

しかし、個人組合員は確定申告において、出資金額である70万円までしか必
要経費として処理することができず、 30万円は切り捨てになります。
つまり、
100万円(LLP事業損失)−70万円(出資金額)=30万円
が必要経費不算入額となり、
100万円−30万円=70万円
が必要経費となります。
なお、LLPの損益は、LLPの決算日(事業年度の終了の日)をもって、配分しま
す。

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■切り捨てられた30万円のゆくえは?
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  組合員が個人の場合、切り捨てられた必要経費不算入額は、その後の年
  度でも、必要経費に算入されることはありません。

  これは個人の場合、 「単年度主義」という考え方をしているからです。
  一方、組合員が法人の場合は、処理が異なります。
  翌年度以降のLLP利益の額を限度として、 毎年損金の額に算入できます。
  ずっと損金に算入されなかった部分の金額は、LLP契約の清算結了、地位
  の譲渡があった時点で、損金の額に算入されます。
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■まとめ
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LLP事業損失(100万円)−出資金額(70万円)=必要経費不算入額(30万円)
LLP事業損失(100万円)−必要経費不算入額(30万円)=必要経費(70万円)

 ※ 調整出資金額とは、累計の出資金額に前年以前の累計の所得金額を加算
   し、累計の分配額を控除して計算します。
 ※ 個人の場合、損益通算の対象になるLLPの事業損失は、不動産所得や事
   業所得等に該当するものに限ります。

【結論】
LLPの事業で損失が出たときは、 出資金額(調整出資金額)を限度として、他の所得
と損益通算することができます。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPで利益が出る時、気をつけることは?  
       
  A 8月1日のLLP法施行と同時に、LLPを作った者です(個人組合員のみで12月決
算)。
その利益は各組合員に分配され、組合員の他の所得に合算されるとのことですが、各個人の確定申告で、何か気をつけるべきことはありますか?
 
 
 
  A あります。
9月30日までに「青色申告承認申請書」を提出すれば、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。

【解説】
個人の場合、「青色申告承認申請書」は、新たに業務を開始した日から2カ月以内に届け出る必要があります。

もし、LLPの成立日が8月1日ならば、9月30日までに申請書を提出しなければ来年の確定申告で、青色申告特別控除は受けられません。
なお、最大65万円の控除を受けるには、それなりの会計帳簿を作成する義務があります。

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■サラリーマンは要注意!
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  特に注意したいのは、今までサラリーマン(給与所得者)だった方が新た
  にLLPの組合員となった場合です。
  給与所得者の場合、税務署の窓口に申請書等を提出したことがある、とい
  う経験をお持ちの方が少ないため、気付いた時には手遅れになっているか
  もしれません。

  ※ 既にLLP以外でも個人事業を行っている方は、通常、「その年の3月15
    日まで」と届出期限が異なります。

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■青色申告の有無でどれくらいの差が?
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  では、青色申告特別控除(65万円)の適用を受けた場合と受けない場合と
  では、納税額にどれくらいの差が出てくるのでしょう?

  例えば、本業の給与収入が1,000万円あり、LLPからの利益の分配を200万
  円受けた場合、青色申告特別控除なしの場合には、所得税と住民税を合わ
  せて約223万円の納税になるのに対し、青色申告特別控除ありの場合に
  は、所得税と住民税を合わせて約197万円の納税で済みます。
  つまり、紙切れ1枚出すか出さないかで約26万円もの差が出てくるので
  す。

  ※ 損益通算をしてもまだ赤字が出る場合、その赤字を3年間繰り越すこ
    ともできる等、青色申告者には他にも各種特典があります。

  ※ 正規の簿記の原則に従った帳簿書類に基づいて作成された「貸借対照
    表」「損益計算書」等の明細書を添付すること等の適用要件がありま
    す。

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■具体的な提出手続き
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  提出先は、納税地を所轄する税務署長です。
  しかし、実際には納税地を所轄する税務署の窓口に提出します。
  後で確認できるように、税務署提出用と本人分控えの2部用意するのがい
  いでしょう。
  郵送による提出も出来ます。
  郵送の場合には、必ず自分宛の返信用封筒(切手を貼ったもの)を同封し
  て下さい。

  なお、郵送で提出する場合には、9月30日必着ですので注意が必要です
  (現在の実務では9月30日の消印が押されていれば期限内として処理する
  税務署内部の取扱いがあるとのこと。
  しかし、法律的には必着なので早めに提出した方が望ましい)。
  郵便事故を想定して、できれば記録が残る簡易書留等で提出するのが望ま
  しいです。
  ちなみに、宅急便は郵便ではないため、9月30日の日付があってもダメで
  す(必着)。
  その他の届出書類については、所轄の税務署か税理士に相談しましょう。

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■まとめ
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  納税地を所轄する税務署長に対して、期限内に「青色申告承認申請書」を
  提出し、帳簿の作成をきちんと行えば、青色申告の各種特典を受けること
  ができます。
  その中の1つが、青色申告特別控除(最大65万円)です。

【結論】
「青色申告承認申請書」は、必ず期限内に提出しましょう!   
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPで資金調達はできる?(政府系金融編)   
       
  A LLPを設立しようと思っているのですが、LLPで融資を受けることができるのでしょうか?
また、LLPで資金調達する方法があれば教えて下さい。
 
 
 
  A 経済産業省の報告では、融資や助成金による資金調達は「可能である」ということになっています。
しかしながら、現実的にはどうなのか?

政府系金融機関や民間金融機関などの動向を今後、注意深く見守る必要があります。

【解説】
金融機関の口座については、民法組合は組合の業務執行者の「肩書き付き名義」で開設することができます。
よって、LLPでも同様の取り扱いになると考えられます。
しかし、その金融機関からの「融資」は、果たして可能なのかどうか?

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■ 行政側の見解では大丈夫だけど……
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    「有限責任事業組合契約に関する法律(LLP法)」には、「LLP制度
    の創設による、ベンチャーや中小企業と大企業の連携、中小企業同士の連
    携、大企業同士の共同研究開発、産学連携、IT等の専門技能を持つ人材
    による共同事業などを振興し、新産業を創造する。」という内容が謳われ
    ています。

    事業を振興し、新産業を創造するには、“資金”は欠かせません。
    基本的な行政側の考え方としては、「資金調達は可能である」との見方を
    しているようです。

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■ 政府系金融機関では融資は可能か?
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    それでは、まず“政府系金融機関”ではどうなのかを検証していきましょ
    う。
    政府系金融機関とは、その名のごとく“政府”が経営している金融機関で
    す。
    その統廃合が、今後の小泉内閣での改革の本丸の一つだと言われていま
    す。

    代表的な政府系金融機関は、以下の通りです。
     1)国民生活金融公庫(国金・国民公庫)
     2)中小企業金融公庫(中小公庫)
     3)商工組合中央金庫(商工中金)

    経済産業省の説明によると、「LLP事業に対する融資を促進するため、
    中小企業金融を活用する。LLPの構成員単位で、政府系金融機関の低利
    融資制度が活用可能。」と公表しています。
    但し、これらは、関係部署への“要望”として公表されているだけであっ
    て必ずしも融資を約束しているわけではありません。

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■ ポイントは構造改革!?
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    しかし、国民生活金融公庫法によると、その対象者は、「独立して事業を
    遂行する意思を有し、かつ、適切な事業計画を持つ者で、当該事業の継続
    が可能であると見込まれるものに対して、当該事業を遂行するために 必
    要な小口の事業資金の貸付けを行うこと。」とされています。
    LLPを否定しているわけではない、とも判断できます。

    皆さんもご存知の通り、政府系金融機関の改革は、小泉内閣の本丸の一つ
    とされています。
    こういう状況下で、政府系金融機関がLLPへの金融支援をどこまで本腰
    を入れて実施できるのか・・・。是非、注目していきましょう。

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■ 当面の対処法は?
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    現在のところ、LLPとしての融資対応策は、組合員が各々に国民生活金融
    公庫等に融資申請をするしかないでしょう。
    しかしながら、そうすると、申請した組合員だけがリスクを負うことにな
    りかねません。
    そういう場合は、他の組合員が連帯保証人になってリスクを分け合うよう
    な形式をとる、という方法も考えられます。
    組合員同士で、じっくりと話し合って決めてください。

【結論】
政府系金融機関については、今後の対応を注意深く見守ってください。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPで資金調達はできる?(民間金融編)   
       
  A LLPを設立しようと思っているのですが、LLPで銀行から融資を受けることができるのでしょうか?  
 
 
  A 政府系金融機関については現状では様子見の状態です。
民間金融機関についても、今後の動向を注意深く見守る必要があります。

【解説】
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■ 民間金融機関は融資してくれるか?
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    民間金融機関も基本的には政府系金融機関と同様でしょう。
    現在、LLPへの融資を積極的に展開しようとしている銀行は皆無に等
    しいと考えられます。
    経済産業省の見解では、「融資条件にかなえば可能である」との見解を示
    していますが、実際、民間金融機関である、都市銀行・地方銀行などが、
    LLP融資の企画商品を開発するとは考えにくく……、皆さまはどう思わ
    れますか?

    しかしながら、大企業に関連しているLLPなら、そのプロジェクトの実
    現可能性によっては、融資をする可能性があるでしょう。
    よって、例えば中小零細事業者が集まって設立したLLPが都市銀行から
    融資を受けるというのは現状では考えにくいです。
    これも今後の民間金融機関の現実的な動向を見守る必要があります。

----------------------------------------
■ 民間金融機関、活用のポイント
----------------------------------------
    現在のところ、LLPとしての民間金融機関活用方法としては、各々の組合
    員が取引のある金融機関に相談してみてください。
    もし、組合員の本業に収益性があって、何かしらのスキームが組めると銀
    行が判断できるのならば、もしかしたらLLPに対する融資は可能かもしれ
    ません。

    申請する組合員が、それまでに金融機関に対して、どれくらいの信頼と実
    績があるのか?に左右されるでしょう。
    また、民間の金融機関で無理な場合は、上記でご説明したように政府系
    金融機関に打診することをお勧めします。

----------------------------------------
■ 補助金、助成金に活路が!?
----------------------------------------
    年間数千あるともいわれている補助金、助成金ですが、これも、今後の動
    向を見守る必要があります。
    LLPも対象となる制度が作られても不思議ではありません。
    現状の対応としては、LLPの組合員が、個別に申請することによって、
    補助金等を受けることは可能です。

    また制度の要件次第では、LLPの組合員が“組合の肩書き名義”で、L
    LPの事業ための補助金を受けることができる、とされています。
    さらに重要なポイントがあります。今年度に国会で成立した「中小企業新
    事業活動促進法」ですが、これのいわゆる“新連携”枠にこのLLPの事
    業が対象になるようです。

    これはLLPの組合員が申請を行い、認定を受けることになります。
    この認定に伴い、LLPの各構成員が事業を行う際に、「補助金」ばかり
    でなく「融資」「保証制度」などの活用も、審査に適えば可能であるとさ
    れています。

    但し、LLPでの新連携の認定を受けたケースはまだ無いと思われます。
    詳しくは、各都道府県の該当部署、又は「新連携支援地域戦略会議」にご
    確認ください。
    http://www.smrj.go.jp/shinrenkei/

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■ IPOはできるか?
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    IPOによる資金調達はLLPでは不可能です。
    LLPは株式会社ではありませんので、これは無理です。
    IPOが念頭にあるのなら、当初から株式会社を設立することをお勧めい
    たします。

【結論】
 NPO法人も融資されるようになるまでに時間がかかりました。
 LLPもある程度待つ覚悟は必要です。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPの決算日はいつがいい?  
       
  A LLPを仲間(個人事業主)と作ろうと考えてます。
決算期について何かアドバイスはありますか?

現在、個人の確定申告に合わせて12月末決算を予定してます。
 
 
 
  A 12月末決算は避けた方が良いでしょう。
12月末決算では、“決算事務・税務事務の気楽さ”という LLPのメリットが半減してしまいます。

【解説】
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■ 決算日は自由に決められるけれども
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  LLPは構成員課税です。LLP自体に納税義務はありません。
  つまりLLPは、法人税の申告書を提出したり、それに基づいて 税金を納めなくても
  良いのです。

  このことからLLPの決算は、あまり期限の拘束を受けないように思えます。
  そのためLLPの決算日を、なんとなく決めた方も多いのではないでしょうか。

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■ LLPの決算は?
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  LLPでは、毎事業年度経過後2ヶ月以内に、LLP事業の 「貸借対照表」「損益計算
  書」「附属明細書」を作成します (LLP法31条)。
  そして、“組合員の決算”に“LLP事業の損益”を取り込む タイミングは、LLPの事業
  年度終了の日、つまり決算日を 基準にします。

  LLPの決算日が2005年12月31日だとすると、個人組合員の場合、 2005年分の所
  得に取り込み、翌年の3月15日までに確定申告します。

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■ 書類の提出義務と提出期限
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  このように、構成員課税であるLLP事業に係る税務申告は、 各組合員が“LLP事業
  の損益”を“自分の確定申告”に取り込む ことにより行います。
  このことから、LLP自体には税務申告の義務はないけれど、 各組合員が“LLP事
  業について正しく申告しているかどうかを 確認できる書類”を、税務署に提供しなく
  てはなりません。

  そのため、LLPは計算期間の終了する日(決算日)の属する年の 翌年1月末まで
  に、『各組合員の所得に関する計算書※』を 税務署に提出することが義務づけら
  れています。
  ※ 有限責任事業組合に係る組合員所得に関する計算書。
     法定調書の一種です。

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■ 12月末決算だと大変なことに!
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  つまりLLPの決算日を12月末にしてしまうと、法定調書の 提出期限が翌年1月末で
  すから、わずか“1ヶ月”でLLPの決算を仕上げ、 『各組合員の所得に関する計算
  書※』を税務署に提出しなければなりません。
  これでは、LLPのメリットである“事務処理の気楽さ”も 半減してしまいます。
  ゆとりをもってLLPの決算を組むためには、 12月末決算だけは避けた方がよいで
  しょう。

  他の月であれば、税務署への法定調書の提出期限に 余裕をもって対応できま
  す。
  12月末以外であれば、LLP事業の季節性や資金需要を考慮して、 自由に決算月
  を決めて構わないでしょう※。
  1月末決算にすると、税務署への法定調書の提出期限まで なんと1年もありま
  す! (とは言うものの、組合員に対する損益報告は2ヶ月以内です。)

  ※ LLPの決算日(事業年度)は、最初に、組合員間の組合契約書で決めます。

【結論】
法定調書の提出期限の関係から、LLPの決算事務をゆとりをもって行うためには、決算月を12月末にすることは避けた方が良いでしょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPが税務署に対して行う手続きは?  
       
  A 上記で、LLPは毎年1月末までに 「有限責任事業組合に係る組合員所得に関する計算書」を税務署に提出しなければならない、と知りましたが、これ以外に、LLPが税務署に対して行う手続はあるのでしょうか?  
 
 
  A LLP自体には納税義務はありませんが、 「給与の支払事務所等の開設届出書」 は提出しなくてはなりません。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 兼 納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」 についても提出することをお勧めします。

【解説】
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■ 設立の届出は?
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  法人を設立した場合や個人で開業した場合には、納税地を所轄する税務署に 「法
  人設立届出書」や「開業届出書」を 提出しなくてはなりません。
  それでは、LLPを設立した場合はどうなるのでしょうか?
  結論からいいますと、LLPには法人格がなく、課税の主体ではない (納税義務者
  ではない)ことから、「開業届」や「設立届」 の提出は必要ありません。

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■ 納税義務はないけど、源泉徴収義務はある!
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  ただし、給与や報酬の支払、利益分配等では、源泉徴収の義務が生じます。
  したがってLLPを設立しましたら、まずは 「給与の支払事務所等の開設届出書」 を
  提出するようにしましょう。

  なお「給与の支払事務所等の開設届出書」は、開設後1か月以内に、 給与を支払
  う事務所等の所在地を所轄する税務署に 提出することになっています。
  ただ、この期限後に提出しても特にペナルティはありません。 提出していないこと
  に気がついたら、なるべく早めに提出しましょう。

  【給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出】(国税庁HP)
   ↓
  http://www.nta.go.jp/category/yousiki/gensen/annai/1648_11.htm

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■ 源泉徴収事務をラクにするために……
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  さて、LLPも会社や個人と同じように、人を雇って給与を支払ったり、 税理士などに
  報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度 支払金額に応じた所得税を差
  し引きます(源泉徴収)。
  そして、差し引いた所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の 翌月
  の10日までに国に納めなければなりません。
   これを毎月行うとなると、けっこう大変です。

  というわけで、LLPの税務手続をラクにするために、給与の支給人員が 常時9人以
  下であれば、源泉徴収した所得税を、半年分まとめて 納めることができる納期の
  特例があります。
  この特例の適用を受けるために、 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する
  申請書兼 納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」 も提出する
  ようにしましょう。

  この特例の適用を受けていると、その年の1月から6月までに 源泉徴収した所得
  税は7月10日、7月から12月までに 源泉徴収した所得税は翌年1月20日が、 それ
  ぞれ納付期限になります。

  【源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請】(国税庁HP)
   ↓
   http://www.nta.go.jp/category/yousiki/gensen/annai/1648_12.htm
  【納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出】(国税庁HP)
   ↓
   http://www.nta.go.jp/category/yousiki/gensen/annai/1648_13.html

【結論】
LLP自体に納税義務はないので、設立の届出は不要ですが、 LLPは源泉徴収義務者には該当します。
源泉徴収関係の手続は行うようにしましょう。
 
      ▲(このページの先頭へ)  
  LLPのお金は貯めておける?  
       
  A LLPはパススルー課税のため、「稼いだ損益」は1年ごとにすべてを組合員に分配すると思うのですが、LLPに貯まったお金を実際に組合員に分配しないといけないのでしょうか?  
 
 
  A そんなことはありません。
LLP自体に内部留保させることは可能です。
まずは、「損益の分配」と「財産の分配」を区別して考えましょう。

【解説】
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■1 「損益の分配」とは、損益計算書を分けること
-------------------------------------------------
     「損益の分配」とは、一事業年度において「LLPが稼いだ損益」をそれぞれの持分
     に分けて、「各組合員ごとの損益」として処理する手続きのことです。
    具体的には、「LLPの損益計算書」を出資比率等(※)によって分割し、各組合員
     は、「分割された損益計算書」を各自の損益として取り込みます。

    そして、組合員は「LLPから取り込んだ損益」と、「それ以外の損益(例えば本業の
     損益)」を足して、確定申告を行います。

    ※ 出資比率と異なる柔軟な損益配賦も可能です。

    各組合員は、自分の出資比率等に基づいて「分割された損益計算書」を各自の
     損益として取り込むだけなので、必ずしもLLPから組合員に対して「お金などの支
     払い」が実際に行われるわけではありません。
    『配る』という意味の「損益の分配」より、『割り当てる』という意味の「損益の配賦
     (はいふ)」の方が表現としてはわかりやすいと思います。

   分配……分けて配ること
   配賦……割り当てること

-------------------------------------------
■2 「財産の分配」とは、組合員への分け前
-------------------------------------------
    「財産の分配」とは、組合員全員の持分(合有)となっている組合財産を、それぞ
     れの持分比率で分けて、各組合員ごとの財産にする手続きのことです。
    具体的には、LLPの事業で稼いだお金などを、組合員に対して実際に分配しま
     す。
    「財産の分配」は、LLPから組合員に対する分け前です。
    会社で言うところの「配当」をイメージするとわかりやすいでしょう。

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■3 「損益の配賦」≠「財産の分配」
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     LLP法33条には、 「組合員の損益分配の割合」について、同法34〜36条には、
     「財産分配の制限」  「財産分配に関する責任」  「欠損が生じた場合の責任」
     について規定されています。
    LLP法において、「損益の配賦」と「財産の分配」は、別々の条文として規定されて
     います。
    このことからも、「損益の配賦」と「財産の分配」は、別々の概念だということがわ
     かります。

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■4 まとめ
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   LLPはパス・スルー課税のため、LLPが一事業年度に稼いだ損益は、LLPの事業年
    度終了の日を基準として、各組合員の損益として計上する必要があります。
   しかし、これはあくまで「損益計算書」を出資比率等によって分割し、各組合員の損
    益として取り込めばよいのであって、必ずしも実際にお金などの分配を行う必要は
    ありません。
   したがって、LLPが稼いだお金は、LLP内に貯めておけます。

【結論】
「損益の配賦」と「財産の分配」は、区別して理解しましょう。
 
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